第六話:ステップアップ!
結局俺は身体を次の水溜まりへと移動させた。案外にも少し液状化が進むぐらいで、ドロドロになりはせずにほっとした。
まあ、地道にやっていくしかないか。
決意を新たに、水溜まりの支配を続けていく。支配するというよりは、飲み干す、というような感覚が近いかもしれない。
水溜まりを一つ飲み干したら次へ、さらに次へ。そんなことを続けていくと、いつのまにか身体の容積はそこらの水溜まりよりも大きくなった。
水溜まりを悠々と進めるようになった俺は、今度はより大きな泉へ挑戦する。
泉ほどのサイズになると、最初は苦戦したが要領を掴んだのか、死の危険に晒されるようなことにはならなかった。分泌液を出しまくって、とにかく核のまわりの水を常時スライム片でコーティングしておけばいいだけだ。
やがて、俺の飲み干す対象もどんどん大きくなっていく。泉は池になり、池は川となり、そして年月が経つと川は湖となった。
この世界『ユーフォガルド』に転生してからどれほどの年月が経ったのか分からない。
しかし、間違いなく人間として生まれ育った時と同等ぐらいには時間が経っていると思う。
そうして遂に、俺は地底湖を飲み干し、地底世界の王となった。地底の大空洞を埋める水脈、その全てが俺の支配下にあるのだから当然だろうと、そのように勘違いしていた。
地底湖を我が物にしたその時、地下水の流れが、未だ地底湖の底へと続いていることに、おれはやっと気が付いたのだ。
まさか、まだ先があるというのか?
面白い。そう思った。
迷わずその水の流れゆく穴に核ごと飛び込んだ。
長い時間を滝のように落下する水の流れの中で過ごした。そうして、俺は遂にそこへ辿り着いた。
よっと。
急に広い空間に出たので、近くの柱のようなものに掴まる。掴んだものは、どうやら天井からぶら下がった巨大な鍾乳石の一つであるようだ。周囲をよく観察してみると、驚くべきことが分かった。
地底世界。まさにここは、そうと呼ぶに相応しい。そして、あまりにも広大な海が、そこにはあった。
さらに、特筆すべき点もある。その中心に佇むのは。これまたあまりにも巨大な龍だ。その体長は、富士山ほどはあるだろうか。とにかくデカい。
この地底世界の底から天井までの距離そのものが少なく見積もっても6000mほどはあるだろうか。暗黒大陸は地上のスケールもデカければ地下のスケールもデカかったのだ。
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