第四話:地底世界の王
俺が根城にしている地下水の水溜まりだが、実はここよりもさらに下にも、水脈は続いている。
すなわち、ここは単なる地下水脈の中継地点のようなものなのだ。その証拠に、俺の肉体の上を滑るようにして水が下へと流れていっている。
え?水に触れたら体が溶けるんじゃないのか、って?
そこはそうなんだが、核から分泌されるスライムの素(もと)みたいな物質を大量に生成していたら、体の強度のようなものが増して、水にも抵抗を得られるようになったのだ。
詳しくは分からないが、まあ浸透圧的な何かだろう。
そんなこんなで地下水脈が更に存在していることに気がついた俺は、更なる成長の機会を見出した。
もっと下には、この水溜まりよりも大きな池などもワンチャンあるのではないか?
それを支配し、自身の肉体とすることが出来れば、更なる質量を得ることが出来る。
そこまで考えた俺は、試しにすぐ隣にあった水溜まりの方に、水の流れを通してスライム片を流してみる。
しかしスライム片はぷかぷかと浮かんで行って、見えなくなった。
やはり、この地下水脈全体を支配するには、どうにも、個々の水溜まりに直接核を触れさせて、ちょびちょび分泌液を流し込んでいかないといけないのかも知れない。
だが、それには問題がある。今まではたまたま運が良かったので生きているが、大きな魚などに突っつかれたら一貫の終わりだ。
次の水溜まりに行くのは結構なのだが、せめて核を守る自衛の手段ぐらいは身につけてからにしたほうが良いだろう。
それから俺は、試しに分泌液を出しまくった。どうしてかと言えば、水に対する分泌液の量に応じてスライムの肉体はより固くなっていくからだ。固くなっていくとは言っても所詮はスライム。防御力は無いに等しいが…
とはいえ分泌液を大量に出すことによって、スライムの肉体を強化できれば、少しは核を守る役には立つのではないか、と考えたのだ。
その過程で最後に残った僅かな水分の中に取り残されていた小魚たちは遂に泳ぐことをやめ、俺の肉体の一部として吸収されていった。この分泌液には分解作用もあるらしく、時間をかければ土を食べることもできるぐらいだ。半ば俺が無用な殺生を避けていた節もあるが、むしろ今までよく生き残っていた方だろう。
そして、急にその時は訪れた。
[スライム(Lv.1→2 LvUp!)スキル:体液分泌]
言語ではない、概念のようなものが俺の思考の表層を流れた。『ユーフォガルド』特有の法則、すなわちステータスシステムのようなものだろう。
しかしこれで分かった。他の生き物を倒すと、レベルが上がるのだ。実際、力が体の底からみなぎってくるような感覚がある。
レベルが上がったことで、ステータスの値が上昇した。そのように考えるのが自然だろう。
しかし、レベルシステムがあるのか。これは良いことを知ったな。
テンションが上がった俺は、心の中で叫んだ。
ぐはははは、地底世界の王に、俺はなる!
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