第三話:覚醒
石の裏で暮らし始めて早半日。俺は理解した。
石の裏とて安全ではない。全然死ねる。
それはバカでかいモンスターたちが近くを通ると、衝撃だけで死にかねない俺の弱さが原因ではあるのだが、石の下にいたらいたで、石に敷かれて死んでしまうのでおちおち引きこもってもいられないことが分かった。
しかし、そこで引きこもることを諦めなかったのがこの俺。大学生のころはいかにバイトに行かず親の脛を齧り続けるかを模索していた俺だ。
その俺が編み出した戦法が、土を食べてさらに空間を確保し、地面の中に潜り込む戦法だ。地上がダメなら地下へ、というシンプルな発想である。
これで衝撃をモロに受けても地面の中だから体が散らばる心配は無いし、核へのダメージもプルプルとした体が衝撃を吸収してくれることは今までの経験で学習済みだ。
そうして土を食い続けて幾星霜。土を分解して己が肉体とし、身体の容積もだいぶ増えた頃、地中に空間を見つけた。いま自分が居る空間の底に穴が空いて、身体がシュルシュルと重力によって落下していく。
やばい、抗えない。
焦った俺は下の土を食べるのをやめて身体を上へ上へと持ち上げようとするが、そこに費やせるエネルギーも無限ではない。あえなく底に空いた穴から核と共に落下してしまう。
そして、落ちた先は水の中だった。
まずい。そう思った時には時すでに遅し。
俺の体は水に溶けていった。
どれくらいの年月が経っただろうか。
地下水の溜まり場に落ちた俺は、一時は肉体の大部分を失いつつも、ようやくまともに身体を動かせるようになった。
どのようにしたのかといえば、核から分泌されるスライムの元とも言える物質を、少しずつ少しずつ水中に放出していき、水溜りそのものを自身の肉体へと作り変えたのだ。
こう聞くと簡単に思えるかも知れないが、核を自身の制御化にない液体の中に晒し、いつ来るかもわからない天敵に怯えて毎時ちょっぴりしか出ない分泌液を作り出す毎日は、かなり精神にこたえた。
実際、天敵と呼べる生き物はおらず、唯一の脅威と呼べるものは小魚ぐらいであったのは不幸中の幸いであるが。無論、核は繊細かつ無防備であったので、突かれたら間違いなく死ぬであろうが。
そのため、俺が生き残ったのは間違いなく奇跡であったのだ。
しかし、そんなこんなで地下水の溜まり場を支配した俺は、以前にも増して巨大な肉体をゲットしたのだった。そこで俺は気がついた。
こうして質量を増やしていけば、いつかは地上の化け物どもにも敵う日が来るのでは…?
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