第2話 裏世界の人から見た、殺人鬼の通った道

 かつて……この都市は廃墟と化し、犯罪者たちの巣窟となった。国際規模の治安維持組織が指定する犯罪都市という、治安の悪い都市の名を貰った。名もなき一般人は近づこうとしない。入って来る人は犯罪者に近しい人か、変わり者か。いくつもの貧民街を潜り抜け、大道路に入って来た二人組もそう言った類だ。硝子の注射器の欠片を踏んだり、空薬莢を転がして蹴ったり、汚い道でも彼らは入っていた。


「おやまあ。これはまた派手にやったみたいだね」


 死体が複数あるにも関わらず、スーツ姿の四十代の紳士は微笑みながら発言をした。


「ミスター。微笑みながら言うセリフではないです」


 メイド服姿の銀髪の美少女は呆れながら言った。彼女の後ろにライフルがあり、ただのメイドではないことが分かるだろう。紳士は楽しそうに言う。


「そうかな? 君も分かっているだろ。この世界は殺し殺され、騙し騙され、人間の闇の全てが見られることぐらいは」


 メイドは立ち止まり、目を閉じ、数秒後に開ける。


「見た所はよくある小競り合いと言ったところでしょうか」

「或いは例の化け物が暴れたか」


 メイドは目を細める。


「……聞いたことがあります。この世界だからこそ、生まれてしまったバケモノだと。人を見なさなず、躊躇なく殺す事ができる鬼であると」

「おお。メイド長から聞いたのかね」


 楽しそうな紳士の質問を聞いたメイドは空を見上げる。雲がなく、太陽ひとりだけが輝いている青い空。メイドは綺麗なものを眺めているかのようにうっとりとした表情を見せる。


「ええ。ですが、こういった類はすぐにあの世に行く事でしょう」

「そうだね。バケモノが生まれたとしても、その命は短いだろう。どうする。祈るかね」

「いえ。無意味でしょうから」


 二人は再び歩き出す。一般人にとっての殺人鬼が誕生したとしても、犯罪都市の世界では普通の存在だ。今日も殺人鬼が出没し、犯罪組織の上層部が利用をし、犯罪都市は血で塗られていく。彼らはそのことに気にしたりはしない。彼ら自身も犯罪組織の一味で、慣れてしまっているのだから。

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