第2話
(キュェェェ…)
聞いたことのない鳥の鳴き声で、俺は目を覚ました。
見渡すと、鬱蒼とした樹木が生い茂っており、薄暗くじめっとしている。どうやらここが冥界らしい。
不気味な場所だ。
先ほどのヘンテコな鳥の鳴き声以外にも、聞いたことない動物らしきものの鳴き声が右往左往から色々と聞こえる。
若干恐怖を感じつつも、このままここにいてもしょうがないので、とりあえず俺は森の中を歩きまわることにした。
足元に気をつけ慎重に歩いていく。同じような景色が永遠と続いているかのようで、どこに行ったらいいのかも分からなかった。
どのくらい歩いたのだろうか。少しずつ森が開けてきた。闇雲なルートを歩いていたが、奇跡的に正解だったらしい。思わず駆け足で森が開けている方へと向かう。
その時だった。
「待て」
突然背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこには鬼のような顔をした化け物がいた。
俺はあまりの恐怖に、全速力で森の出口を目指した。
「そんなことしても無駄!」
そんな声が聞こえた刹那、俺の目の前に化け物が立ちはだかっていた。まるで瞬間移動でもしたかのようだ。
「そんな…」
俺は終わったと思い、その場にへたり込んだ。
化け物は俺を一瞥すると、訝しげに問いかけてきた。
「あなた、何者?」
聞きたいのは俺の方だよ、という言葉は飲み込んで正直に答えた。
「転生者です。何かくじを引かされて気づいたらここに…」
「転生者…?霊魂じゃなくて?」
霊魂…?俺は聞き慣れない単語に困惑した。
「その霊魂とやらでは無いと思いますが…」
俺の言葉を聞くと、化け物はズカズカと俺の方へ近づいてきた。今度こそ殺されると思い覚悟を決めたのだが、予想に反して化け物はパッと俺の手を掴んだ。
「掴める…」
化け物は呟いた。
何を当たり前のことを言っているのだろうか。
「あなた、本当に霊魂ではないの?」
「だからそう言ってるでしょ。俺は転生者なんです。」
化け物はぶつぶつと独り言を言っていたが、考えがまとまったのか、溜息をついて俺に言った。
「分かった、あなたは本当に霊魂では無いみたい」
ようやく納得してくれたようだ。
「はい。」
「ごめんなさい…」
案外物分かりのいい化け物のようだ。先ほど感じた敵意はほとんど感じられなくなっていた。
「もういいですよ。ところであなたは誰なんですか?」
すると、化け物は顔に手を被せ、そのまま自らの顔を引き剥がした。
いや、よく見ると引き剥がしたのは顔ではなく仮面であった。あの恐ろしい顔は仮面だったのか。
「私はアルバス、冥王に使える中位神」
化け物…いや、白髪の美少女はそう言った。
「女の子…?」
「神になって400年だから子供では無い」
彼女はそう言ったが、見た目はどう見ても少女だ。背丈は俺より遥かに小さく、中学生と言われギリ納得できるくらいだ。
「あなたの名前は?」
今度は女の子が聞いてきた。
「田中勇気です」
女の子は首を傾げて言った。
「タナカユーキ…聞いたことない名前」
「そりゃ今初めて会いましたからね」
「なるほど…」
この子、本当に分かっているのだろうか。仮面を外しても表情の変化がほとんど無いので分かりづらい。
「ところでタナカユーキは誰に仕えてる神?」
ん…?この子、ひょっとして俺が神だと思ってないか?
「俺は神じゃないし、誰にも仕えてないですよ」
俺の言葉を聞くと、ほとんど表情の変化が無かった女の子が分かりやすく驚いた表情を見せた。
「それはおかしい。この冥界では神以外は実態を持つことができない」
「そんなこと言われましても…」
そこで、俺は転生してここに来ることになった経緯を細かく伝えた。
冥界転生記 93音 @otohimata
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