第4話 部活探し
「じゃー今日は終わり、挨拶して」
「「「はーーい」」」
帰りのホームルーム。
今日もいつも通りの1日。
ただ、今日は掃除時間がないだけ昨日よりストレス値は低い状態で終わるだろう。
昨日の帰りの山上君の話が頭によぎる。
バスケ部のクラスメイトと何やら楽しそうに会話していた。
昨日の山上君が言っていたけど確かに、しょぼくれてたらクラス全体の害になるよな。
それに僕だって今のままは・・・・
・・・・
部活。
やっぱり今の状態でクラス内で友達を作るのは無理だ。
委員会決めももう終わっているし。
となると今の自分の学校生活を変えるには、部活に入るとか新しいコミュニティに属するしかないんじゃないか。
でも、サッカー部に戻るのはきっと難しいだろう。
それに未経験で運動部も2年が入ったら迷惑だ。
そうだ、文化部だったら運動部より厳しくないだろうし、今からでも大きな出遅れになったりしないんじゃないか。甘い考えな気もするけど。
放課後は見学でも行ってみようかな。
「おい!」
気がつくと先生が怒った顔でこちらを向いている。
あれ、僕?
「本田!お前だけ挨拶ないぞ、連帯責任!じゃあみんな挨拶もう一回な」
「「「「「えーーーーーー」」」」」
みんなが面倒くさそうに不満の声をあげる。
やってしまった。
完全に僕のミスだから申し訳ないという気持ちだ。
♢
「ここら辺か・・・」
何やかんやで放課後を迎える。
部活探しで北校舎をうろつく。
スマホを見ると同居している妹からLINEが18件ほど来ていた。
今日の夕食の献立の話とか、学校での出来事の事など送ってきているが、結論「今日は帰りが遅くなるのか」という事を聞きたいんだろう。
これくらいの件数なら、いつもの事なので遅くなるかもしれない旨の連絡をする。
妹の事なので、何故遅くなるのかと聞いてくるはず。
嘘は余りつきたく無いし、部活の事も今は話したく無いので、とりあえずスマホはポケットの奥にしまっておく事にした。
報告をした上でちょっと遅くなる位だったら怒られる事もないだろう。
連絡さえ怠らなければ大丈夫だ。
僕が返信を送らないでいると、3分経つたびに追撃LINEを送ってくるのは、僕は気にしないけど、友達にもしているなら嫌われる原因になるのではないか、と少し心配してしまう。
まぁ良いや。
放課後のこの校舎は文化部が活動しているはずだ。
男子もそこそこいる部活なら良い。
そう思った矢先、通りかかった教室から活気のある声がする。
ここは、漫画部?とか言う所が活動してるんだっけかな?
覗いてみよ。
「はい無駄きゅうしょー」
「いやそっちがH振りなら今のは確定で1発は耐えてるから無駄じゃないよ。てゆーかこんな事も知らないんですね。今すぐ帰宅しポケモンの基礎を学んできなさい」
「うぃぃぃぃぃっす」
「ちょいちょいちょい、お前らネタがふりーよ」
あははははは
う~ん。
あそこには馴染めない気がする。
ゲームしてるけど僕はやってないし。
「何か見てる人いるよ」
漫画部の部員の1人に気付かれて、思わずその場を離れた。
立ち去るように、少し早足で廊下を歩く。
「って何で離れたんだろ」
素直に言えば良いのに、見学したいって。
コソコソしてるみたいで格好悪いな。
いつからこんな風にコソコソするようになったんだっけ。
自分の不甲斐なさを感じながら、とぼとぼ歩いていると違う校舎に移動していた。
ここは特に人気ひとけが無く、サッカー部時代に室内練習で通った時も、特にやってる部活はなかった記憶がある。
・・・・・・・
なんか、もう帰ろうかな。
文化部なら、って考えた僕が甘かったのか。
既に出来上がったコミュニティに、自分のためだけに時期外れで入っても迷惑だと思うに決まっている。
その迷惑を覆い隠す位のコミュニケーション能力は僕には無いと思う。
「あれ?」
ドアが半開きな教室があった。
中から光が漏れているので人がいるんだろうか。
覗いてみると、半紙と筆が見え、誰かが習字らしき物を書いている。
書道部かな?
女学生が一人で作業している。
たまたま1人なのかはわからないが、それにしても1人というのは珍しい。
顔までは見えないが、ずいぶん小柄に見える。
後輩かな?
「おい」
教室の中の小さな女子がギロっとこちらを睨んできた。
「ひ」
余りの迫力に情けない声が出てしまう。
よく見れば可愛らしい瞳の大きな猫っぽい顔立ちだが、眼光は鋭く、声はドスがきいて、猫っぽい瞳も相まって威嚇する肉食動物さながらな表情。いや猫というよりトラだ。
もしかして先輩だったのかもしれない。
顔は幼いが高校1年生にこの表情が出来る訳がない。
「何だお前?ジロジロ見るなや、見世物やってる訳じゃないんだけど」
『何だお前』って。
初対面の相手に、なんて強い口調で喋る人なんだ。
小さくて可愛い系の子なのかなと思ったけど、あの眉間の寄せ方はいつもこの表情しているに違いない。
「ダンマリかい。言葉も喋られない赤ちゃんが制服着てんのか?覗きに黙秘権なんかないんだよ」
覗いたのは僕だが、輩に絡まれてる気分になっているのは何故だろう。
「はん、ホンマに赤子なんか?あー気が散るから失せろ」
それだけ言うと彼女はギロリとした目線を、半紙に移した。
これが彼女と僕の、初めての出会いだった。
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