第2話 夏の終わり

夏が終わる頃になると、空気が変わるのがわかる。

日中の暑さは相変わらずだけど、夜になると急に冷たい風が吹き始める。


ベランダに出てその風を感じながら、昔の夏のことを思い出す。


私の夏休みはいつも田舎の祖母の家で過ごした。

昼間は畑の手伝いをして、夜は縁側に座って蛍を見た。


祖母は「今年の蛍は元気だねえ」と言いながら、うちわでそっと扇いだものだ。

もう祖母もいなくなり、田舎の家も取り壊されてしまったけれど、あの夜の蛍の光だけは、私の心の中でまだふわふわと漂っている。


夏の終わりに吹く風は、そんな記憶をそっと運んできてくれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る