第8話

「普人。寂しい思いをさせて悪かった。だが、あえて言おう。お前は男だ。愛情は、自分で勝ち取るべきだ」


 白兎から諭され、普人は手錠をした械を指差した。


「そうか……ゴフォッ」


 陰陽師達に無言で殴られ蹴られ、白兎は沈黙した。


「いいかい、普人くん。普人君はまだ子供だから、親からいっぱい無償の愛をもらって、お友達を作って、大切な人の作り方を学んでいかないといけないんだよ。みんな君を好きだし、君も皆を好きになれる。誰も愛してくれないなんて悲観する事は全然ないんだよ」

「私、普人くん、好きだよ!」

「そうだよ、俺たち友達だろ!」

「ネットなんかで話すんじゃなくて、俺達と話してくれよ。不安も希望も全部!」


 子供達の言葉に、大人達はうんうんと頷く。

 差し出された手を、普人は恐る恐る取った。


 なお、械はまだギリギリ少年で犯罪被害者だった為に、情状酌量の余地ありと更生プログラムを受けることになった。

















 これでめでたしめでたしって思うじゃろ?


















「黒姫、一番大好きしてくれないとヤダ」

「白姫、ナンバーワンじゃないとやだ」

「と、父様、僕もナデが欲しいです」

「クゥン(腹見せ)」


それは、白椿家の問題を一気に表面化させたのだ。

そう、白兎の愛情という名のケーキは、ポメ魂輝く四人の承認欲求モンスターどもには足りなさすぎたのだ!

ギブが一に、ビッグなテイクが四つ! これでは世界平和は保たれない。

悪いことに、一連の騒動で、姫ちゃん達は外の世界を知ってしまった。

アイドルチヤホヤを知ってしまったのだ。もはや知らなかった頃には戻れない。

黒姫も白姫も世界の人々の溺れるようなビッグチヤホヤを求めるようになってしまっていた。

次第に愛情を取り合うようになり、ついに決裂した。


「黒姫、ジョユーやりたい! スカウト来た!」

「白姫はアイドルになる! 反対されてもなる!」

「養子にしてくれるってほんとですか!?」

「クゥン(撫でまち)」


 一家は爆散した!







「三人も優秀な陰陽師が生まれたのに、なんでこんな事に……」

「だいたい全部白兎のせいだと思うぞ? 愛情欲求モンスターばかり育てるからだ」


 陰陽師の友人はにべもなく切り捨てた。

 それから、10年がすぎた。


 黒姫、大女優。

 白姫は七色の声音の歌手。

 普人は、他家の子のいない陰陽師の養子となり、それぞれ大活躍をしていた。


 そう、陰陽師が大活躍が出来るほど、妖魔が地に満ちようとしていた。

 平安の世のごとき妖魔の時代が、訪れようとしていたのである。



 そして、凶報が齎される。

 白兎、破れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モフモフ事変 @yuzukarin2022

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ