トラック9:またのご来店をお待ちしております【会員カード】

(会計を済ませて出入り口に向かうあなた)

(背後からトコトコと足音が続く)


「あの……!」


(思いの外、近くにいるバーテンダーさんに少し驚くあなた)


「今日は、その……色々とありがとうございます」


(いえいえ、と手を振るあなたにさらに迫るバーテンダーさん)


//告白でもするかのように

「あの、コレ! 受け取ってください」


(面喰いつつ、差し出されたカードを受け取るあなた)

(それは、お店の名刺と会員カードだった)


//親愛の気持ちが照れを上回った様子で

「今日立ち寄ったのは偶然ということでしたが、また来ていただけたら、その……嬉しいです」


(手渡されたカードを丁寧にしまうと、あなたは頷いた)

(その様子に満足げに笑ったバーテンダーさんが背伸びをした)


//耳元で秘密を明かすように

「この会員カードをお持ちいただくと個室にお通しできたり、特別指名できるセラピストがいたりするんですよ。じつは、ハリネズミちゃんの加入を検討中です」


(とんでもない情報を教えてくれた天然な彼女の姿を微笑ましく思うあなた)

(きっとまた来ると返事をして、あなたは退店する)

(ゆったりとしたドアの開閉音、続く微かなベル音)



 § §



(後日常連になったあなたは知ることになる)

(シフトの関係で彼女が1人店に立つ日が月に2、3回発生してしまうらしい)

(そして多くの常連が彼女に気を遣って1対1になるタイミングでの来店を控えていたのだということを)

(ゆったりとしたドアの開閉音、続くベル音)


//あなたを歓迎する声で

「いらっしゃいませ! 『Bar HumHum』へようこそ……!」

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【ASMR】今宵、貸し切りの癒し空間『Bar HumHum』 世楽 八九郎 @selark896

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