トラック4:この子を見てたら飲みたくなった、ですか?【3杯目はモヒート】
(コリコリとハムスターがアーモンドを齧る音)
(釣られるように追加注文していたミックスナッツを口にするあなた)
(バーテンダーさんはアイスピックで氷を砕いている)
(あなたは先程からタブレットで次の注文を吟味している)
(アーモンドを食べ終えたハムスターと視線が合ったあなたは小松菜の葉をハムスターに与える)
(ハムスターは小松菜を頬袋に詰め込み始めた)
(氷が小さくなってきたからか、小刻みになるピック音)
「……ん、どうか、されましたか?」
(あなたの視線にバーテンダーさんが振り向く)
「この氷、ですか? クラッシュドアイス……にしてはやや大きいですが、使い道は色々ありますよ」
(氷を容器に置き、カウンター越しにタブレットを覗き込むバーテンダーさん)
//やや気の抜けた調子で
「例えばブルーハワイ、モヒート、ウイニング・ラン。ウイスキーミストなどにも使えます」
(バーテンダーさんはタブレットを操作していくつかのカクテルを表示させる)
「ん? モヒートですか? 有名ですし、缶でも売ってますね」
(首を横に振り、あなたはハムスターケージを指さす)
(食欲に負けたのかハムスターは頬袋から取り出した小松菜にかぶりついていた)
「この子を見てたら飲みたくなった……もしかして、緑色繋がりですか?」
(首肯するあなた)
//初めは耐えるように、やがて堪え切れない調子で
「ふっ、ふふ……くく、ふっ! ふふ、ふっ、ふぅ」
//なんとか平静を保とうとしながら
「失礼しました。こういうお店ですから、ハムスターの食事の様子を楽しまれる方は多いですが、ハムスターを見てカクテルを選ばれる方は、その……」
(ぺちぺちとメニューのモヒートをタップするあなた)
//息を整えながら
「すみません、すみません! お詫びに普段はしないサービスをしますので!」
(現金なあなたは静まりスッと背筋を伸ばしてバーテンダーさんを見つめる)
//慌てた調子で
「ああ、そそ、そんな期待の眼差しで! 困ります、お客さん、困ります……!」
(しばらく身を捩らせていたバーテンダーさんだったが、どこからかマスクを取り出し着用した)
//外すまでマスク越しで
「では、ここから解説しながらモヒートを作ってまいります」
(キョトンとするあなた)
「えっとですね、私お酒を作ってる最中はあまり話さないようにしているんです」
(マスクを一度外して口パク音を鳴らして見せるバーテンダーさん)
(合点のいったあなた)
「いまはマスク、してますから。作り方をお話しながらやってみようと」
(腰の引けたガッツポーズをしてみせるバーテンダーさん)
(拍手を送るあなた)
「ありがとうございます。では、さっそく……」
(テーブルに並べられる背の高い厚めのグラスとまな板、砂糖入れ)
「まずはグラスに砂糖を入れます」
(円柱型の陶器からコルクの蓋が外され、砂糖大さじ2杯が投入される)
「続けてライム半分をスライスして……入れます」
(まな板でスライスされたライムがトングで摘まれグラスへ放られる)
「こちらのペストルで、これらを潰します」
(透明なすりこぎ棒のようなものでライムを押し潰していくバーテンダーさん)
「んっ、ふっ、ん、ん……!」
(ライムが潰れ水っぽさが増す押し潰し音)
「次にミントです。ミントの葉をこのように……」
(パンッと軽快な拍手音)
「手で潰して香りを広げて、入れます。続けてクラッシュドアイス……」
(細かく砕かれた氷がグラスに入れられ、3分の2程を満たす)
「ここにラム、これを入れます」
(スクリューキャップが外され、メジャーカップに注がれたラム酒が加えられる)
「続けてソーダも、少しだけ……」
(ソーダ水のボトルを少し傾け、グラスへ注ぐバーテンダーさん)
「一度、混ぜます」
(液体と共にクラッシュドアイスがシャクシャクと音を立てる)
「氷を足して、また混ぜます」
(氷で満たされたグラスの中でバースプーンがシャクシャクと踊る)
「飾りつけの氷、ライム」
(混ぜ終わったグラスに山盛りの氷とカットライムが乗せられる)
「お聞きください。飾りのミントはこう、しごくと……」
(ぷちち、と何かが小さく弾ける音)
「香りが一気に広がります。ストローは2つ指して、完成です」
(あなたのワクワクあるいはミントの香りに釣られたのか、ハムスターが忙しなくケージを歩き回る)
//マスクを外して
「どうぞ。モヒートです」
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