聖女認定式と星空の告白 5
式典の流れは、とても簡単なものだった。
神殿に行って、伯父様が教皇から聖女のレガリアを受け取り、「聖女として認める」という口上を述べてわたしにレガリアを渡す。
わたしはそのレガリアを持って「聖女です」というような内容のことを、たくさん修飾語をくっつけてきらびやかに、かつ丁寧に宣誓すればいいということだった。
ここで一つ問題になるのが、聖女であるわたしがシュティリエ国の人間ではなくロヴァルタ国の人間ということだが、その部分は、第一王子で次期国王の補佐をする予定のライナルト殿下との婚約が内定しているということで押し通すらしい。
そしてここで一つ重要なのは、この先生によって聖女と認められるのはシュティリエ国内に留まると言うことである。
この認定式は、「シュティリエ国の聖女だよ」ということを認定する儀式なのだ。
だから、ロヴァルタ国の聖女として認められるわけではない。
ややこしいのだが、どこかの国で認定式をすることで世界共通で聖女と認めるというルールにするには、国同士の関係とか法律とかいろいろ面倒くさいので、聖女はあくまでその国で聖女として認められるという部分に留まるそうだ。
過去には、その関係であちこちの国で聖女認定式を行った聖女もいるらしい。
その場合は所属はAという国だけど、Bという国でもCという国でも聖女であることは認めるよ、という扱いの聖女認定式だそうだ。はっきり言って滅茶苦茶面倒くさいので、わたしはよその国で聖女認定式などしたくない。一度で充分である。
たくさんの国から聖女だと認められることは、聖女の箔付けにもなるらしいけど、そんなものはいらない。
ただ、よその国が、この国の聖女の力を借りたいと思ったときにはもれなく聖女認定式をその国でされるらしいので、今後、よその国からわたしを貸してほしいと要望が上がった時は、その国で聖女認定式をしなければならない。そんなことが起きないように、心の底から祈っている。
聖女認定式当日――
わたしは、真っ白いローブ姿で王都の神殿を訪れていた。
式典にはライナルト殿下が言ったように、王族と高位貴族、それから神殿のお偉いさん方しか招かれていない。
ただ、何十年ぶりかの聖女認定式が開かれるとあって、神殿の周りには大勢の市民が集まっていた。
聖女ですと宣誓するまではベールで顔を隠しておくのがしきたりだそうなので、わたしは邸に迎えに来ていた真っ白い馬車に乗り込む前にベールをかぶっておいた。
おかげで神殿の前で馬車を降りても、市民からはわたしの顔は見えない。
見えていたら「え⁉ このどぎつい顔の女が聖女⁉」と目を剥かれていた気がするので、ベールがあってよかったと心の底から感謝した。
今日も、ギーゼラ渾身の「聖女っぽく見えるメイク」を施してもらったけど、いつもの顔が二割増しになるくらいだからね。さすがにこの世界で詐欺メイクは無理だったよ。
式自体は長いものではないので、三十分くらいで終わる。
まあ、わたしが長ったらしく話せばそれだけ長引くのだが、もちろんわたしは注目を集めるこんな胃がキリキリしそうな式典はさっさと終わらせたい派なので、さくっと宣誓した。
え、それだけ、みたいな顔を教皇様からされたけど、結局「聖女です。これから聖女として頑張るね」という内容が伝わればいいんだろうから、ぐだぐだと話す必要はないと思う。
最後に伯父様が、わたしとライナルト殿下の婚約をほのめかして、式典は無事終了した。
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