世界ランキング42位

航、目を覚ますと森の中にいる。


航:うわ…、本当に転移した…。


突然の悲鳴。女、叫びながら走って近付いてくる。


航:いくらなんでも早過ぎるだろ…!

女:助けて!


航、足が竦んで尻餅をつく。女、走って航の横を過ぎると、女を追ってきていた二足歩行の怪物、航に狙いを変え、拳を振り下ろす。


航:うわぁ!(腕で防ごうとする)


怪物、航の腕に触れ、全身が破裂する。


航:…え?

女:(振り返って)え!?…(航に近づいて)あ、あの、ありがとうございます。凄い魔法ですね。お陰で助かりました。

航:あ、あぁ。…いや、身代わりにして逃げようとしてたでしょ。

女:私、甲斐姫かいのひめ 恋瀬このせと言います。恋瀬って呼んでください。

航:うん、身代わりにしようとしたよね!

恋:…この世は弱肉強食ですからね。そういうこともあります。

航:あるんですか…。

恋:その、お願いしたいことがあるんですけど少しいいですか?

航:え…、もう身代わりは嫌だよ。

恋:そんな酷いことしません!

航:さっきしたよね!?

恋:とにかく、もっと安全なところへ行きましょう。


2人、森を抜けて洞窟に入る。


恋:ここならそうそう見つからないでしょう。

航:それで、お願いっていうのは?

恋:じゃあ、私の話から始めますね。私は甲斐王国の王女なんですが、最近甲斐王国では権力争いが激しくて内乱まで起きかねない状態なんです。魔王軍がいつ来てもおかしくないのに国内でずっと揉めてるんですよ。私も政争に巻き込まれる立場ですし、権力の奪い合いなんてしてる場合じゃないと思って国から逃げてきました。魔法には自信があるので、今は魔王討伐に挑戦しようと考えているところです。

航:さっき泣きながら逃げていたような…。

恋:私の魔法は発動までに時間がかかるので急に襲いかかられるとどうしようもないんです。…で、お願いっていうのは魔王討伐を手伝って欲しいってことです。

航:無理です。

恋:なんで!?

航:なんでって、さっきの魔法?自分でも良く分からなかったし、魔王って多分強いでしよ。死にたくないよ。

恋:魔王を倒さない限り、人間はいつまでも死と隣合せですよ。

航:いや、戦っても勝てる気しないし…。

恋:あなたの魔法は最強クラスですよ!

航:いや、でも…、

恋:…お願い。(上目遣い)

航:ぐっ…。

恋:ダメ?

航:…はぁ。分かった。どうせ行く当てもないし、とりあえず着いていくよ。

恋:(小声で)ちょろ。

航:なんか言った?

恋:あ、ありがとうございます。

航:あぁ、うん。

恋:そうだ!お名前お聞きしてませんでした。

航:伊勢海 航。航って呼んでくれ。

恋:航さんですね。これからよろしくお願いします。

航:あぁ、こちらこそよろしく頼む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る