第4話 ローレベルな男の冒険
メイドカフェに飽きた田中は、ある日、思い切ってキャバクラに足を踏み入れる。いつもの退屈な日常からの逃避を求め、華やかなネオンの光に吸い寄せられるようにして店の中へと入っていった。そこには、煌びやかなドレスをまとったキャバ嬢たちが笑顔で迎え入れてくれる世界が広がっていた。
その中で、田中はすぐに自分の「推し」を見つける。彼女は美しく、明るく、会話が上手だった。田中の中に久しぶりのときめきが湧き起こり、彼は何とかして彼女の気を引こうと必死になる。だが、田中のポケットには限られた現金しかない。にもかかわらず、彼は見栄を張ってシャンパンを入れることに決めた。
「シャンパンコールが始まると、まるで自分が特別な存在になったかのような錯覚を覚えた。店内が華やかな音楽と声で盛り上がり、推しのキャバ嬢が自分のために笑顔を向けてくれる。しかしその背後には、10万円を超える請求が待っていた。冷や汗が背中を流れるが、どうにか支払いを済ませる。田中の心は一時的な高揚感と、次第に迫りくる不安でぐらぐらと揺れていた。
翌日、田中は工場の派遣の仕事に戻る。ランチタイムが来るが、昨日の散財で財布はほとんど空っぽ。結局、工場の食堂で無料の水を飲み、空腹を抱えながら午後の作業に戻ることしかできない。
家に帰ると、田中は何年も前からやり続けているオンラインゲームの画面を開く。そのゲームに費やした時間は無数だが、得られるのは単調な勝利の感覚だけ。無料の漫画やポルノで、安っぽい快楽を得ることも日課となっている。彼の部屋には本や参考書の類はなく、向上心というものは彼の辞書に存在しない。
その一方で、田中はスマートフォンで成功している人々のSNSを漁ることにも時間を費やす。彼は輝かしい写真やポジティブな投稿を見るたびに、苛立ちと嫉妬心を募らせる。そして、見つけた投稿にアンチコメントを書き込むことで、一時的な自己満足を得る。さらに、ヤフーコメント欄で政府や企業を批判するのが、彼のもう一つの趣味だ。
「自分がこんな状況なのは、すべて社会や企業、政治のせいだ。」そう思い込むことで、自分の無力感や不満をかき消そうとする。だが、その行動が彼の人生を変えるわけではないことに、田中自身も薄々気づいている。心のどこかで、誰かが助けてくれるのを待ちながらも、何も変えないまま日々を過ごしているのだ。
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