第8話 嫉妬

8話 嫉妬


「さぁ!カザリを掛けて俺と決闘しろ!」


 まさかマジでそういう事を言うやつおるんやな……


「あぁ、いいぞ!いざ、尋常に……」


「まて!いきなり始めるのか?!」


「お前に負けたらこの女を擦り付けられるんだろ?願ったり叶ったりだから早く掛かってこい!いい感じに切られてやる!」


まったく、待ち伏せして刃物持ち出してから日和ってるんじゃないよ。男がすたるんじゃないのぉ?


「ちょっとどういう事!アタシを擦り付ける?!厄介者みたいに言わないでくれる?!アタシはねぇ!もっとアタシが強くなる為にアンタに協力させてあげるって言ってんのよ!何が不満なの!」


 その態度なんだよなぁ……


「郷土さん。彼の鎧は亡霊武者のモノです。アレは着ているというより何らかの手段で亡霊武者と一体化していると見るべきですね。妖魔の力を自分自身に降ろし力だけを活用する術は存在しますが、一般人がその様な事が出来るツテもあるとは思えません。背後関係が気になるので捕らえては貰えませんか?」


………マジかぁ、結構強くね?あとカザリの壁として使えそう。魔法使いキャラを運用する時にタンクを配置するのはゲームとかでも基本だしな。


「おまえ!田舎で目立ちたくないとか言ってるクセに2人目の女の子を捕まえてるのか!そこのキミ、ボクが助けてあげるからね!」


にちゃり、とした笑顔を向けられた羊子は小さい声でヒッ!というと俺の後ろに隠れる。これじゃやれやれ系主人公やんけ!………いや待てよ?主人公みたいなムーヴはゴメンだが、このままあの女のせいで知名度上がって行くと結果的にそうなるのか?

それはマズイ!非常にマズイ!フラッと映画とか観に行ったら行った先で人に取り囲まれるとかどんな罰ゲームだしどうにか………


うん?あそこで俺を睨み付けてるマスターサムライ、彼を更生させてこっち側に引き込んで、彼の成長系サクセスストーリーを用意出来たら人の目をスライド出来るのでは?


「よし、マスターサムライ慎也と言ったか?わざと負けて押し付けるなんて、つまらない冗談を言って悪かったな。真剣勝負だ……来い!」


慎也は日本刀を大上段に構えると真っ直ぐにこちらに向かって走って来る。かなり早いな。ラノベの最初の敵といえば噛ませ犬みたいな扱いになりそうなモンだが、コイツはそこのカザリとレベルはそう変わらない感じがする。


いやまあ自分自身に取り憑かせた亡霊武者が強くてそれに引っ張られてるだけっぽいが


正面から来た振り下ろしを右に避ける。そのまま左に切払いを繋げて来たからその刀身を上から剣鉈で叩きつける。


ヒュー!手放さなかったのか!やるねぇ!


地面に叩きつけられた刀身を抱え込む様に前転をし、勢いを殺さずに立ち上がると振り向きざまに横薙ぎを繰り出して来る。


今度は下を潜り、慎也の足の膝裏を殴る。

身体を捻った体勢だった為にバランスを崩すが、日本刀を地面に突き刺し、それを軸に回転して距離を取る。


「ッハア………ッハア………ゲホッゲホッ………てめぇ………大人しく切られろよ」


「あの一瞬でそこまで息が上がるのは鍛錬が足りないか、纏ったモンスターに振り回されている証拠だ。」


俺の台詞に慎也が激昂する。ふざけるな!真面目に戦え!とでもな、ワイはキミを気に入ってんよ。良いか悪いかは置いといて、バイタリティ?行動力?みたいなのはあるし、根っ子がカザリを救う!だもんな。思い込みと勘違いはあれど上手く誘導すりゃ勇者になれるんじゃない?いやなれ!そして世間の目からワイを忘れさせてくれ!


はじめよりも幾分勢いが落ちた斬り掛かりをあえて受けて鍔迫り合いに持ち込む。


『おい聞けっ!俺は敵じゃない!お前にその力を与えた奴を吐けばお前を仲間に入れてやる!司法取引だ。悪くない提案だろ?』


「そんな事言ってワナに嵌める気だろ!そういう口先で俺のカザリも誑かしたんだろ!俺は騙されないぞ!」


『まあ聞けよ、俺はカザリにはもっとふさわしい男が居ると思ってんだ。俺みたいに面倒臭そうにしてる奴じゃなくてバイタリティ溢れる行動力の化身みたいな奴をな』


「どういう事だ!」


 一瞬、力が逸れたな?

 刀を巻き取る様にしてハネ上げる。

 悪く思うなよ?俺は慎也の脇腹に右フックをねじ込む。


「ぐげっ!」


 潰れたカエルの様な声を出しそこに崩れ落ちる。いや、だがまだ気を失って無いな!そのまま寝技の体勢に入り首を絞める。ぐぐぐぐ……殺さない様に殺さない様に………ヨシ落ちた!


「気を失いました!羊子さん呪われてないか後から見てもらえます?」


「は、はいっ!」





──────



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