第6話 接触

6話 接触


結局なし崩し的に配信する事になった………

正直言うと勘弁して欲しいんだが、かと言って放置して死なれたら寝覚めが悪いしな……(ヽ´ω`)


「みんな〜!こんちは〜!今日は昨日に引き続き特別ゲスト、昨日アタシを助けてくれた郷土さんに来て貰ってま〜す!Aランクぐらいの実力はありそうだし相性良かったらアタシのパーティーメンバーにならないかなって思ってるんです!」


んなっ?!コイツ………俺を取り込みに掛かってる?何のつもりだよまったく、押せばコイツは折れるってナメて来て無いか?まあそれで今まで上手くやって来たんだろうなぁ


「そんな予定は無い。ウチの近所で死なれたり行方不明になれば迷惑だからだし、正直さっさと元いた所に帰って欲しい」


「あと今日は画面外に陰陽師の人が居るんだけど視聴者のみんなは気にしないでね!」


うぅむ、陰陽師って出るとコメント欄がちょっと荒れ出すなぁ……まあダンジョンなんてモンが出来る前から実は居ました。国民には存在を隠してました。って奴らが現れたらね、気に入らない人間が居るのも分かる。でも、そういう人達が居たから平和に暮らせてた時期があるのに、それを棚に上げて冒険者ギルドなんて組織が出来てるからな……いかんいかん、政治の話とか始めたら面倒くさい奴になっちまうな。切り替えていこう


:[陰陽師って大丈夫なの?]

:[いきなり悪者あつかいされそうで怖い]

:[陰陽師の人って男?女?]

:[お祓いとか言って冒険者の活躍をハイエナするカスは消えろ]

:[何か怖いし呪われそう。カザリちゃん気を付けて]


うわぁ………あんまりイメージ良くないなぁ………中野さんも疲れ果ててたし、羊子さんもボロボロみたいだし、あんな激務なのに知らない人達からネガティブなイメージだけで嫌われて大変そう。どうにかあの人達が楽になれれば良いんだがなぁ……


冒険者が人気なダンジョンに集まり過ぎるからアカンのよね。色んなところ行ったすりゃ良いのに、アクセスの良かったり派手で見栄えのする敵を倒しに行くから良くないんよね。


人気の無い地味なダンジョンの対処を陰陽師の人達が1手に引き受けてるからその風潮をどうにか出来ればな(ヽ´ω`)


「も〜大丈夫だって!昨日はやばかったけどコレでもB級上位の実力はあるんだよ?郷土さんも居るしよゆーよゆー」


俺を当てにしてるのかよこの女ァ………

どっちに転んでもワイの評判が悪くなるやんけ!


「あくまで死なれない様にするだけで、基本的には手を出す気は無いぞ」


「え〜!それってアタシの実力を信じてるってコト?!やべっ期待に応えなきゃね!」


もう勝手にしてくれ……




◇◇◇◇



その日の夜……………



「っかー!労働の後の烏龍茶はウメェな……出たくも無い配信に出さされた精神的疲労が幾分マシになったよ」


「お前も面倒くさいのに絡まれてるな。見たぞ今日の配信。目が死んでるじゃねぇか!あのカザリって女もずいぶん肝が据わってるよな。面倒だと思われてるのをお構い無しにズカズカしててさ。配信するぐらいなら必要な図々しさなのかね?」


俺の隣に居るコイツは土方玄馬(ひじかた げんば)土建屋のせがれだ。コイツとは小学生の時からの腐れ縁で、師匠が居たときに一緒にしごかれた仲だったりする。あっ、コイツも世間的に見たらかなり強い部類では?コイツを身代わりに出来ねぇかな?


「……俺はやんねぇぞ?お前が拾ったんだろうが。それにホントにつえぇ奴は自分がつえぇって事を見せびらかしたりしないんだよ。みっともないじゃねぇか」


「お師匠によく言われたもんな。『お前達は強くなるのでは無い。護れる様になるのだ』ってさ」


「ガキの時はイマイチわからなかったが、今なら分かるぜ。配信者なんてのを見てるとよ」


わかる……もちろん真っ当に冒険してモンスターを狩ってる配信者も居るが、中には注目を弾ければそれでヨシ!みたいなメチャクチャな配信してる奴らも居るからなぁ………


それからしばらく玄馬に愚痴に付き合って貰う。そろそろ良い時間になったと飯屋を出て、この日は解散して帰路に付く。


ん?あの道の真ん中に立ってるアイツ俺を見てる?


「お、お前!カザリの配信に割り込んでカザリの邪魔してるんだよ!さ、さっさと消えろ!」


あー………恐れていた事が、もともとのファンかな?


「あの……どうやってここまで?」


「カザリは陰陽師の縄張りを見張っててお寺に入ってくお前を映してたんだよ!そして町中の映像から地域を特定して来たんだ!俺のカザリを護る為に!」


……………ツーアウトって所か?関わりたくねぇ〜〜

スッと踵を返して反対方向から回り道して帰路に付く。

…………自宅までは割れてないよね?



◇◇◇


逃げた!アイツは逃げだ!

逃げたってコトは後ろめたい事をしてたんだ!


今度はちゃんと謝罪させなきゃ!

アイツの家までの道はまだ分からないが、玄関先の映像は残っているから郊外を虱潰しに当たればいずれは特定できる!


「貴方、いい目をしていますね?決意を秘めた目だ」


誰だ?


「貴方の夢を叶えて差し上げましょう。チカラを与えましょう。」


なんだコレ


「コレがあれば貴方のカザリさんをあの男から救うチカラを手にできますよ。フフフフ…………」


ゴクリ………




──────



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