第4話 失言
4話 失言
「いまからぁ〜!オジサマの強さのヒミツに迫りたいと思いまぁ〜す!」
どうしてこうなった……
今は自宅の客室でカザリと隣あって座った状態で尋問を受けていた。滝のように流れるコメントには「そこ代われ」だの「カザリに近づくな」だのが散見される。……ホント勘弁してくれ。
「言っておくが、俺の強さは普通だぞ。普通。もっと強い人沢山知ってるし。助けたのもあのままアレに殺されたらお巡りさんに痛くもない腹を探られるのが嫌だからだし」
おれは出来るだけ落ち着いて当たり前の事のように言う。オーバーリアクションなのって苦手なんだよな。
ニヤニヤとした笑みを浮かべているカザリの顔には「新しい玩具を見つけた」と書いているようでウンザリするんだが……はよ諦めてくれないかね
「それさっきも聞いた〜。コメントによるとあの鎧武者はAランク相当でかなりのレベルみたいなんだよね。それを一撃で倒せるオジサマより強い人なんて、それこそSランクの人達しか居ないじゃ〜ん」
はぁ、やっぱり基準がTVに出てたりや動画配信してるSランクの人達なんだな。
「ああ、Sランクが最強だと思ってる人かアンタは。………コレ炎上しないかな……まあ別に良いか?例えばダンジョンが出来る前の世界で「オリンピック」ってスポーツの祭典があったよな?そこに出場する選手はその種目でトップレベルの実力をもっている。そこまでは良いな?」
おれは一言間を置き、カザリが話に付いて来れているか確認する。
初対面の時のヤカラの様な様子とは打って変わってコチラの話に耳を傾けている様子に「現金だなぁ」と思いながら話を進める。
「しかし、だ。オリンピックに出場する選手が最強かと言えばそうじゃないんだ。もちろん、オリンピックに参加する選手が弱かった、なんて話じゃあ無いぞ。そういうのに参加するつもりが無いがそのレベルに達している人は居る。そういう事だ。」
俺の話を聞いたカザリは首を傾げる。しかし俺の話を聞いていた視聴者には理解した者も少なくない様で猛烈にコメントが流れていた。
:[つまり冒険者ランクが眼中に無い強者って……コト?!]
:[というか問題なんじゃない?実力を隠してるって事はギルドに嘘付いてる事と変わらないんじゃ?]
:[在野の実力者はたしかに居るが配信でそれを見せないのは何でだろ?]
お、良い質問あんじゃ〜ん
「ちょうど良い質問が流れてたな。何で表に出なかったか?と。ホラ、良く言うやん宝くじが当たったら知らない親戚や友達が増えるって。アレ面倒くさいんだよね。功名心みたいなのも別に無いし」
しばらくポカンとしてたカザリだったが、再起動したのか突然ガタリと立ち上がり、こちらを指差しながら叫ぶ。
「バカにしてない?!本気出せばめちゃくちゃ有名人になれるポテンシャルがあるのに、そんなの別にいらないって!?功名心が無い?!皆に凄いね、つよいねって言われるのが面倒くさい?!そのアンタが面倒くさいって言ったコトに憧れてアタシは命懸けでダンジョン配信やってんのにヒドくない?!」
「ホラね。こういう所。別に俺は張り合うつもり無いんだから成りたいヤツは勝手に俺より強くなりゃ良いやん。八つ当たりされてもな」
ちょっとキツく言い過ぎたかな?と思ってカザリを見るとプルプルと震えていた。小声で“なんでなんでむかつく”って言ってるのが薄っすら聞こえるんだよなぁ(ヽ´ω`)
「アタシは諦めないから!Aランクのモンスターを普通に倒せるオジサマとか掘り出し物っしょ!」
「お前のコトが好きなファンに逆恨みされそうだからごめん被る。」
そこからはカザリと視聴者のやりとりが始まり、惚れただの惚れてないだの、次はいつ挑戦するだの、上着の替えを用意するだのそんな話をし始めたのでもうやる事無いかな。と気を抜いていたらカンの良い嫌いな視聴者が余計な事をカザリに聞いた。
:[そういやこのおじさん、最初に「俺は普通だ。もっと強い人を知ってる」って言ってなかった?今知られてるSランクの人の中に、このおじさんの知り合いとかいなさそうだし、アレより強い人とか居たらモグリのSランクじゃないの?真面目に危険じゃない?]
:[外国だと問題になってるね。やたら強い個人は逮捕収容出来る人間と入れ物がなかなか無いから性善説に頼るしか無いとか]
:[アメコミのヴィランみたいな組織は既にあるらしいよね]
「あっ、たしかに!おじさんより強い人ってSランクの人?不知火様とか鳴神様とかと知り合いだったりするの?そうじゃないなら真面目に国防がどうこうって話になりかねないんじゃない?」
「大丈夫だよ。その人チベットに良く行ってる修行僧だし」
そこからまた質問責めにされたが、ここで暴れたらいけないと我慢を重ねのらりくらりと雑談は続いた…………
◇◇◇
「フフッ、面白いコトになってますな。」
「名前を出したらお仕置きする所でしたが、まあアレだけなら火消しも………いや、そろそろ出るべきですかな?」
「ふぅむ、彼だけというのも面白く無いか?さりとて彼女はこちら側にはなりますまい……あの娘を彼に引き合わせれば彼女に対してのストッパーになるであろうか?」
山深い山中にあるスマートフォンの基地局。その電波塔に腰掛けていた老人が独り言を呟き、姿を消した。
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