第2部 久子は語る (5章前半)親類探し
第5章 親類探し ( 前半 )
Y新聞のたずね人欄に投稿
記事引用
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[ブラジルからの出稼ぎでキャデイーとして働いている日系二世の女性が12月に帰国します。それまでに国内にいる親類に会いたいと話しており、何とか見つけてあげたいのですが ゴルフ場女子寮管理人 (冨やよい)]
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この女性はルジア・シザコ・ダ・シルバー 日本名は鈴木久子(49歳)といった。父晃さんと母コユミさんは約60年前に結婚したが既に亡くなった。長女の久子さんは14年前に夫と死別してサンパウロの銀行で働きながら3人の子供を育てた。
母の実家は住所が分かっている。しかし晃さんの本籍地にはもう実家はなかった。
明治生まれの父晃は無口な人で、ほとんど家族のことは喋らなかったのでどこに親戚がいるのか皆目分かりませんでした。ただ茨城県出身ということは私の渡航手続きの時取り寄せた戸籍謄本で知っていました。母コユミの出身は和歌山です。実家の住所は分かっていました。和歌山の親類からの古い手紙を母が持っていたからです。
それをもとに捜した結果が今回の成功につながりました。
「和歌山に来た時には白浜空港まで迎えに行くから是非一度いらっしゃい」と和歌山の親類の人が言ってくれました。
祖母のコユミは産婆さんでした。日本からブラジルに行く時、仕事の道具を船便で出したがなぜか到着しませんでした。いつも持っていた聴診器と浣腸の道具のみが手元に残りました。〈いつか日本に帰る〉と言い張りポルトガル語を話そうとしなかった両親をふと思い出しました。侍の話や ’春の小川’ ‛どんぐりころころ’ などの童謡を両親から聞かされて育ちました。日本は私の故郷です。けれどもブラジルでも日本でも外国人と呼ばれます。二世に故郷はないのかもしれませんね。( 第5章 続く)
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