Page1 幼馴染み

 俺、こと高浜瑞樹たかはまみずき古町こまちかえではいわゆる所の「幼馴染み」というヤツだ。

とは言っても、同級生ではなく、俺の方が一つ年上なのだが。

 それでも幼稚園の頃から互いのことを知っているし、親同士が親友と言うこともあり、家族ぐるみの付き合いがある。

 ずっと一緒にいる俺たちからしてみれば、たった一歳の年の差なんて、あってないようなものだった。

 俺はかえでのことを「かえで」と呼び捨てにしているし、かえでに至っては「みっくん」なんて恥ずかしいあだ名で呼んでくる。


 そんなかえでとの関係性は、いつまでたっても「幼馴染み」に落ち着いてしまっている。


 色恋沙汰に敏感になる中学時代も、落ち着きを見せるもののその手の話題は尽きることがない高校時代の今も、俺たち二人の距離はつかず離れず。

 誰の目から見てみても、その仲の良さは絵に描いたような「幼馴染み」のそれらしく、時には恋人を通り越して夫婦のようだ、とからかってくる人もいる。


 しかし、先ほどのように進展をほのめかす言葉は口にしても、決定的な言葉はどちらも口にしない。

 俺としてはこの気持ちを伝えたいとは思っているのだが、なかなか勇気が出なくて、ズルズルと引っ張ってしまい、今に至る。


(それに、俺なんかがかえでの隣に立ってて良いわけねえもんな……)

 なんて、卑屈なことを考えてしまうのが、俺のダメな所なんだろうな……。


 それでも、今のかえでを見てるとそう思わざるを得ない。


 身長は平均より少し低めの小柄ではあるものの、出るとこは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいる。

 明るいブラウンのボブカットと、少しの幼さをにじませる整った顔が彼女のかわいさを際立たせている。

 そんなかえでは俺が通う新城しんじょう高校の二年生で、生徒会長を務めている。運動は少々苦手だが成績は優秀で、定期テストでは常に一位をとり続けているすごいヤツなのだ。


 対する俺は、身長が175センチと高身長ではあるものの、特にこれといった特徴もない、どこにでもいる男子だ。運動も成績も人並み程度で、特に誇れるものもない。強いてあげるとすれば、読書好きのラノベオタクであることだろうか。


 幼馴染みという関係性がなければ、一切関わることがないであろう俺とかえでだが、改めて現在置かれている状況を整理してみた。


 整理してみた結果出てきた答えは。


(……どうしてこうなった)


 この一言に尽きるであろう。

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