第24話 “パトロン”:東峰甘美
「私からもいいかしら?」
俺が八崎さんとあかねさんのサンドイッチで色々ヤバくなってると、さっき驚愕させられた、人妻の東峰さんが声を発した。
もうこの際どんな話でもいい。
嬉しいけど、女体に触れ続けるとやっぱりアレなもので、気付かれるのも恥ずかしいし離れた方がいい。俺は今しかないと二人から離れた。
「別にええのに。抜いてあげるよ?」
「はぁ⁉ ふざけんな! お前もう近付くな!」
なんかもう、色んなドキドキで頭がおかしくなりそうだ。
改めて思うけどこれって現実なのか? 全部嘘で実は夢オチなんじゃないか?
八崎さんがあかねさんに突っかかってる一方で、東峰さんが話し出していた。多分聞いてなさそうなんだけどいいのか?
俺もちゃんと聞いておかなきゃならない。
人妻って響きだけで不思議とドキドキして緊張してしまう。
「私がハーレムに参加したいと思ったのはね、縛り付けたくないからなの。綾斗君が自分の意思で生き、自分のしたいことをして生きてくれればいいと思って。彼の幸せをこそ私は願っているの」
その言葉自体は嬉しいんだけど、人妻だ。
彼女はもう幸せになったんじゃないのか? しかも夫公認って、気になることがあまりにも多過ぎる。でも全て聞くのは怖くもあった。
「彼のためにお金をじゃぶじゃぶ使いたいの」
「わあ、太っ腹」
「うーん……喜んでいいもんなんだか」
夫も居るのに俺にじゃぶじゃぶ? 考えようによっては怖い話なんだけど。
何歳かはわからなくて、見た目は若いけどもちろん年上だし、人妻だし、お金ちらつかせてるし。あれもこれもアウトな気がするんですが。
もしかして子供が居なくて、俺を子供として見てるとか?
「ちなみに子供は居て、あなたを私たちの子にしようとは考えていないの。純粋に男女の関係になりたいわ」
「多分アウトだぁ……」
「純愛なんだよ。愛は多様性だからね」
多様性ってなんだろう。便利な言葉だね。
「夫のことなら心配しないで。理解してくれているし、興奮しているから」
「変態だ」
「変態も愛だよ? 綾斗くん」
「そうなの? 俺にはちょっと、レベルが高過ぎて……」
なんかこう、色んな耐性がついてきてる気がする。この調子だとだんだん俺は何事にも動じない男になるんじゃないだろうか。
普通じゃないって、あんまり嬉しくないことのように思えてきた……。
「は? 結婚してんのにアヤトが好きぃ? それキモすぎでしょ。マジであり得ないんだけど」
「本人が納得してんねやったらええやんか」
「よくない。絶対アヤトに悪影響じゃん。あんたみたいなのに近付いてほしくない」
八崎さんがイライラしているみたいだ。
まあ、その気持ちはわからなくはないけど。
「八崎さん、その、あんまり人が傷つくような言葉は……」
「二度と言わない。ごめん」
「え? あ、はい」
「ごめんな~。ほんまはええ子なんよ? ただ野上君がモテてもうてるからさ」
意外にというか、俺がちょっと言っただけで意見を変えられた。
東峰さんも気にしてないみたいだしほっとする。
俺が言えばどうにかなるって、今後もそうなら安心できるんだけど、これが結構確定的じゃないから困る。
「生活には困らせないわ。必要なら仕事だって用意する。私はあなたが幸せになってくれたらそれでいいの」
「わーい……」
「やったね綾斗くん。愛の為す力だね」
この場合もはや結城さんが怖くなってくる。なんでも受け入れてにこにこ笑ってるのは顔面だけは可愛いけど全体として狂気を感じてしまう。
まあ、そこが彼女のいいところだと思えば……うん。
「ハーレムは夢よ。私たちみんなにとっての。何より私たちが争えば綾斗君の心が傷つくことになる。それを避けるのは彼のためになると思わない?」
「思わない」
「あら、失敗したわ。どうしましょ」
諦めるの早い。
そりゃ、争わないのが一番だけど、ハーレムに否定的なのは当たり前な気がする。
「慰めてもらえる?」
「え⁉」
「コラッ! どさくさに紛れてアヤトに近付くな! 触れるな!」
「まーまーええやんか」
「よくない!」
ハーレム……上手くいけば誰も怪我しないで済むかと思ったけど。
そもそも認めさせるのがほぼ無理なんだよなぁ、やっぱり。
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