1日目:俺がモテてどうすんだ
第6話 “ハーレム推進派”:結城由奈
衝撃の告白から一夜明けて。
とんでもない急展開の後、常に気が気じゃなくて落ち着かなかった。
それでもいつも通りに過ごそうとして、食事して風呂入ってベッドで寝て。そこまでは今までと変わらない。
翌日に目が覚めた瞬間、「さあどうなる」と気合を入れた。
まさか目が覚めた途端に誰か居るとかないよな?
「おはよう」
……居た。
俺の自宅に、昨日はいつもより入念に鍵をかけたはずなのに、居る。
まさに昨日俺に告白してくれた
にっこり笑ってベッドの脇に座り、俺の顔を覗き込んでいる。
「お……お、おはよう」
「えへ♡ おはよう」
嬉しそうに笑ってる。可愛い。
ただこの状況は正直言って結構怖い。
普通に不法侵入だ。ホラーにしか思えないんだが。幽霊でもないし見た目はめちゃくちゃ可愛いのに体が震える。
結城さんの手が、俺の頬に触れる。するりと撫でられて緊張した。なんていうか、艶めかしい。
なんかもう色々我慢できないんだが目の前でするわけにもいかないし。
「たっちゃった?」
「えっ⁉ な、なにが……?」
「ん~、手伝ってあげたいけど抜け駆けになっちゃうし。私はね、平和的に解決したいなって思ってるんだよ」
平和的? ハーレムがどうとかのアレ?
一日考えても正直まだ受け止められていなくて、「あぁ、あれがこれから続くのか」と憂鬱にすらなってた話だ。
「あの……俺を好きっていうのは、その」
「本当だよ? 綾斗くんが好き」
情けないことに、まだ現状を信じられないから本人に聞いてみる。
答えはすぐに返ってきた。
本当に嬉しそうに微笑みながら俺を見て、「ほんとに俺のこと好きじゃん」って顔だから信じずにはいられない。
だから、正直信じられないけど、ついに俺のモテ期が来たってことみたいだ。
「逆に考えればさ。ファーストキスじゃないならいいよね?」
「え?」
「ごめんね。もう我慢できないよ……」
恥ずかしくなってちょっと目を離した一瞬で、結城さんの顔つきが変わっていた。
ほっぺたが赤くなって、目を潤ませて、吐息がこぼれる。もしやと思ったけど俺の体は緊張で動かなくなってしまい、ゆっくり近付いてくる彼女の顔を、もう恥ずかしいとも思わずにじっと凝視していた。
冗談かな、とは一瞬思ったんだ。そうは言ってもバカみたいにドキドキしてる俺をからかうだけなんじゃないかって。
でも違った。俺の唇に、結城さんの唇が押し付けられる。
「んっ⁉」
「ん……」
全身が硬直して、何もできない。
ただ柔らかい感触とほのかな甘い香りに気を取られる。
気持ちいいとか嬉しいとか思う前にとんでもない衝撃を受けて、嘘みたいに頭の中が真っ白になった。多分、これが今まで感じたことのない幸せってやつなんだろう。
数秒、そのままだったと思う。
お互い特に動くこともなく、ただ押し付けるだけ。
鼻から出す息が肌を撫でることすら感動した。
ゆっくり結城さんの顔が離れていく。
俺はぼけーっとしたまま、相変わらず何も考えられなくなって固まってた。
「んん……えへへ」
「あ、はは」
「もう一回いい?」
聞かれたけど答える暇もなくもう一回された。
ちゅって一回。ちゅってもう一回。
結局五回くらいしてから離れて、結城さんはじっと俺の顔を眺めた。まだし足りなさそうだけど我慢したらしい。
「んん~、このままシちゃいたいけど……流石にそこまですると怒られるよね」
「し、しちゃう? 何を……」
「ふふ、まだだめだよ? おあずけ」
唇に指を押し当てられて微笑まれる。
あーもう無理だな。好きだ。何がどうなっててももう無理だ。好きだ。
「じゃあ起きよっ。学校行かなきゃ」
「あ、う、うん。そう、そうでしたっ」
全然まだまだドキドキしてるけどじっとしてるのも無理だった。
結城さんの手を借りて起こされて、「着替えを手伝う」って言いだした彼女を部屋から出して、服を着替える。
なんかもう、諦めが早い気もするけど、どうにでもなれだ。
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