第1話 「ダンジョン飯」はなぜあんなにヒットしたのか

こういう人に参考になるかも!

★ニッチな層ではなく、より多くのファン層を獲得したい人



ちょっと読み終えたのが昔なので、簡単な考察になるが思い出せる限りで書いていきたいと思う。

ちなみにアニメは未視聴です。ダンジョン飯もそうだが、本当にアニメ化でファンの数がえぐいぐらい増えるよな。二次創作とかどんだけ増えてんだ?ってくらい観測できてびっくりした。

おそらく完結済み傑作作品でもアニメ化したら同じくらい跳ねる作品もっとあるんやろなあ、と思わずにはいられない(Thisコミュニケーションをアニメ化してくれや。順当にアニメ化したらダンジョン飯と同じレベルで跳ねます(断言))


ではとりあえずざっと思いついたもので五点挙げます。



①キャッチーなタイトル

②設定の作り込みや世界観構築の上手さ


正直、これはもう才能だと思う。

『ダンジョン飯』を初めて目にした瞬間、こんな短い単語でこんなに意味が分かって惹きつけられるタイトル名凄すぎるだろ……ってびっくりした。

その上でこれだけ世界観構築できる創造力。““才能””すぎて一朝一夕では真似できないため、短めにこの辺りで終わらせます。



③主人公の特異さ(ほかキャラクター造形)


ツイッターのポタク共でも最初に話題に上がったのが、主人公ライオスの魔物狂人ぷりだったと思う。オタクはこういうタイプの『狂人』好きなんだよね。(たとえば最近では『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』とかもこの手に分類できる)


とはいえダンジョン飯の場合は意図的に「オタクにはこういう狂人ウケるからな」みたいな『狂人ウケ狙い』を感じないというか、多分実際にそれを意図して創ってないんだと思う。(おそらく『もちづきさん』も当初はそれは想定していなかったような気もする)


ただここまで書いてあれだが、個人的にダンジョン飯のキャラクター造形で一番すごいのはセンシだと思ってる。

あれ凡人は絶対に「博識賢者おじいさん枠」みたいなところに収めてしまうのに、ダンジョン飯では最早「マスコット狙ってる?」みたいなレベルの可愛さを醸し出している(しかも軟派キャラとかではなくあのキャラで!)

あの転換凡人にはできねえよ~~!!すごい!!

やっぱり王道の中にかなり予想外な方向性のキャラがいるとおおっ!ってなるな。



④パーティ周りの恋愛関係ゴタゴタがない


転じて、無理やり恋愛要素を入れない。ライオスが魔物にしか興味がないキャラクターなのに加えて、恋愛でこじれてパーティが険悪に……みたいなのがないところが良い。


ただこれは俺がアロマンティック・アセクシュアル(他者に恋愛感情や性的感情を持たない)だから魅力に感じるだけかもしれん。


が、最近のヒット作は男性主人公にAロマAセク的な気質がある(あるいはあんまり恋愛を重視しない)主人公が多いのは事実のような気はする。特にジャンプ作品。EX:鬼滅の刃、Dr.STONE、呪術廻戦、ゴールデンカムイ(これはまた一家言あるが)、ジャンプではないけど進撃の巨人とか。



⑤差別的な描写や子どもや女性の性的客体化描写がない


正直ここ最近のヒット作は日本でもかなりこれが強い。

一般寄りオタク(アニメも漫画も観るがエンジョイ勢)が増えたことが要因か、あるいはこれまでそれらを許容していた女性オタクが一部価値観を変化させている可能性がある。


ツイッターで色んな界隈の(アニメ系に近い)オタクたちを観測していると(無論これが全てではないのは当然だが)、“女性向け”(便宜上カッコ付でこう表現させてもらう)二次創作をしているアカウントやそれを好んでいるらしきアカウントが、LGBTQ差別や性差別などの反対に言及しているのを時たま見る。


逆に“男性向け”二次創作をしているアカウントやそれを好んでいるらしきアカウントでは、それらの反対に言及しているのを見るのはかなり稀だ。



これは単純な憶測だが、“女性向け”二次創作ジャンルやそれを行う人々は日本の漫画やアニメだけでなく、海外コンテンツ(主に洋画)に対しても同様の創作を行っている場合がいくらか存在することも理由のひとつではないだろうか。

(おそらく洋画や洋ドラコンテンツに触れることで否応なく視野が広がるのだと思われる。逆に“その”価値観に否定的な場合は、そこまで触れられないだろう)


逆に“男性向け”の人々は、「映画(洋画)ファン」と「アニメや漫画ファン」が大きく隔てられているように見える。古い映画を好む層は合致するかもしれないが、新作映画も追っているような層はなかなか観測できない。



また、先に挙げた「Aロマ気質な男性主人公がヒット作に多い」も、もしかすると理由はここにあるのかもしれない。

AロマAセク気質な男性主人公であれば、女性を性的客体化した描写を描かなくていい可能性が生まれる※1(あるいはそれを描きたくないので結果的にAロマAセク気質な男性主人公になった、とも考えられる)

※1 これは作者がそれを求めていなくても、別の人間にせっつかれる可能性や、作者の中にある偏見がAロマAセク気質ではない主人公を描くことによって発露してしまう可能性の話です。別にAロマ気質であろうとなかろうと、女性を性的客体化せずに描写することは完全に可能です。



とまあざっとまとめてみたが、ヒットを目指すには女性層の視点が絶対必要なんだよなあというのは色んな作品を見ていてここ数年は常々思う。(日本社会にいると否応なくさまざまな人に対する差別に疎くなるので、自分の中の差別的な視点や考え方などとも日々向き合っていかなきゃいけんなと思う。ただ、正直これはかなりキツい。それでも向き合わなきゃいけないと思う。創作をして正義を語るのであればなおさら)

あと純粋に差別的な描写は不愉快だしね。それを不愉快に感じる層が増えれば作品評価が下がるのは必然なわけで。(そして日本の人口の半分は女性なわけで)


もちろんニッチな層を目指すのであれば、その限りではないのだが、最近はオタク層もかなり変質化してきたなあという印象がある。

もしくは、オタク層に一般層が多く流入してきたことである程度中和されているのかもしれない。

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