いわゆる男女比が偏り貞操観念が逆転した世界（仮）

第13話 作業と業務と覗き見と？

今日も今日とて作業に励む。前回、前々回は状況が状況だったために僕の心情とリンクした歌詞の曲を選んだけど、今回からはそういった制約もない。つまり自由に出来るわけだ。とはいえ、完全自由と言われたらそれはそれで悩むものだ。矢ヶ崎さんにもそれとなく聞いてみた。すると、やはり女性に向けたメッセージ性のある曲が良いのではないでしょうか？との事だった。なるほど。

となるとラブソング？と思ったけど、

恋愛経験のある女性ってそこまで多くないんですよね。男性が少ないというのもあって。

との事。ぐう正論。えっ？古い？

なら辞めた方がいいのか？と思いもしたけど、そうでも無いみたい。恋愛経験は無いけど、だからこそ理想の恋愛像、というものがあるらしい。となると、アイドルソングくらいのポップさがちょうどいいかもしれない。情熱的なラブソングとかは少しづつって感じかな？

ということがあり、今せっせとアイドルソングを譜面に起こしているわけだ。

いや〜分かってはいたことだが、アイドルソングは結構多い。どの曲がいいか選別するだけでも大変だったよ。

その地獄から解放されたと思ったら次は編曲地獄だ。特に期限がある訳では無いけど月に1本以上は出したいと思っている。理想を言えば２、3週間に1本くらいのペースで動画を投稿したい。矢ヶ崎さんの生活とかもあるしね。

まあそんなわけで、今僕は自分で決めた締切に追われてるってわけ。ほんと地獄。

デスマーチとはよく言ったもんだ。まさにだもん。

⋯はぁ、頑張るぞぉ！僕の引きこもり生活の為に！

矢ヶ崎さん視点

私は矢ヶ崎 薫。動画投稿者シオミズチャンネルのマネージャーをしている。元々は男性保護局の研究機関で所長をしていた。25歳独身。

何故国家公務員である仕事を辞めてまでマネージャー業をしているのか、その理由は割愛します。私の主な業務は、スケジュール調整、チャンネルの運営、レコーディングのためのスタジオの手配などです。あと、シオミズチャンネルのSNSもですね。こちらは主にミズキさんと共同管理で、DMに関しては私が1度確認し内容を精査してミズキさんに話を通すといった流れですが。

まだまだチャンネルは稼働し始めたばかりで、動画投稿数も日本だけではありますが、ミズキさんが男性ということもあり、たくさんの方がチャンネル登録をして下さり再生数も順調に伸びています。ありがたいことです。

しかしながら、全てが順調という訳でもありません。SNSには日々コラボの誘いや、企業案件の依頼がひっきりなしで来ている状態です。

ミズキさんが作曲作業を越している間はこれを処理するのが最近のメインの仕事ですね。

稼働直後にも関わらずコラボや企業案件が来るというのは普通に考えれば喜ばしい事なんですが、ミズキさんとの関わりを持とうとする下心が透けて見えるんですよね。向こうもビジネスですから、影響力のある人間を起用するという考えはもちろん理解できるのですが、あわよくば、という期待が見え見えです。

ミズキさんに害をなすものは許しませんよ？例えそれがどんな大企業でもです！ミズキさんには楽しく、気持ちよくアーティスト活動をして欲しいのです。その為なら、私はどんなことだってやってみせます。

おっと、つい熱くなってしまいました。

ピロン♪

ミズキさんからメールですね。タイミング的にデモ音源が出来上がった頃でしょうか。

うん、予想通りみたいです。

先程言い忘れていましたが、私のお仕事にはもう何種類かありまして、そのひとつがこうしてデモ音源を聞き、善し悪しを判断することです。誰よりも早くミズキさんの新曲を聴けるという大変役得なお仕事ですが、とても責任のある仕事でもあるのでしっかりやります。

善し悪しとは言いましたが、そんなに大袈裟なものではなく、歌詞が問題ないかなどの判断ですね。差別的発言に聞こえる言葉がないかとかの確認です。他にも、例えばどこかで災害が起きたとして、その時できた新曲がその災害を連想してしまいそうな曲ならば時期をずらすか、発表を見送るなどの判断をするわけです。

なので気は抜けません。

「うん、今回もとてもいい曲です。にしてもいい感じにポップでとっつきやすい曲になりましたね。これは色んな世代の方に受け入れて貰えそうです。」

問題がないことを確認したら、その旨をミズキさんにメールで伝え、ミズキさんは楽曲の仕上げに入ります。そして私はレコーディングのためにスタジオを手配する、というのが、大体の流れです。

それが済んだらレコーディングして、ミキサーさんに編集してもらい、後日納品されたデータを受け取り、投稿するわけですね。

以上が私の業務です。

ふふ、今回もいい曲になりそうです。

レコーディングが楽しみですね。

神様視点

うんうん、あの子はちゃんと新しい人生を彼なりに楽しんでいるようだ。

それにしても、面白いことを言い出したものだ。

まさか僕へのささやかなお願いを使って、収益の2割を作者やアーティストに支払われるようにして欲しいなんて。

あの後地球の神様に相談して君の言った通りになるようにしておいた。そしてそのお金の移動も不自然に感じられないようにしておいたから安心して。

今までは私利私欲にまみれた願い事をする奴らばかりだったけど、こんなのは初めてだよ。

でもだからこそ、君に興味を持ち、こうして楽しませてもらえてる。

感謝しているよ。

もうこれ以上、僕が君へ干渉したり、手助けすることは出来ないけど、君なら大丈夫。いつでも見守っているからね。

君の人生に幸多からんことを。