第12話 今更だけど衝撃の事実

なあ、ダニエル聞いてくれよ?配信をしていたらスパチャで1000万円もらう夢を見たんだよ。

ああ、お前の言う通りだ。どうも昨日の酒が残りすぎているみたいだ。

とりあえずひとっ風呂浴びて、酒を抜いてくるよ。

ってうるせえ!ダニエルって誰やねん!

仮に前の世界にダニエルって知り合いいたとしても、絶対この世界にはいないやろがい!


⋯って、こんなツッコミしてるってことはやっぱり夢じゃないよなぁ。

1000万かぁ、どうしよ。とりあえず、スタジオのために取っておくとして、税金関係か⋯。

うん、難しいことは後で考えよう。

それでも分からなければ矢ヶ崎さんにぶん投げよう。よし、そうしよう。

とまぁ、問題を解決(自分の中では)したところで朝ごはんを食べながらニュースを見る。

一応この世界のことについても学んでいくためだ。けっして、前回思わぬラッキースケベ的なのがあったから期待しているとかとかでは無いからほんと!そこんとこ勘違いしないでよね!


『次のニュースです。昨夜未明都内某所の路上で、男性が女性に襲われ、そのまま性的暴行を受けるという事件が起きました。』


怖っ。ってそうか、この世界だと女性の痴漢が多いのか。いや、女性の正犯罪者しか居ないのか?男性は基本家にひきこもってるらしいから、性犯罪を起こすことはほぼ無いだろうし。

でも男性も少ないわけだから、そもそも性犯罪自体起こる頻度は少ないみたいだな。


『捜査関係者によりますと犯人は被害者の男性が外出をしようとした際、男性保護官が車を移動させる為にそばを離れた隙をついて犯行に及んだということです。被害者がたっていた場所から車までは歩いて数分程の距離しかなく、犯行の手口から見ても計画的な犯行だったと思われます。』


『防犯カメラの映像から近くに住む無職の園田 祐希さんに似た人物が映っていた事と、その日から連絡が取れず、家に帰った形跡も無いため、警視庁は園田容疑者を重要参考人として指名手配し、情報提供を呼びかけているということです。なお、襲われた男性は命に別状は無いものの、酷く脅えており、暫くは安静が必要とのことです。』


おおう。思ったよりでかい事件だった。

指名手配はやりすぎなのでは?とも思ったけど、この世界だと普通なのかな?


『なお、この事件を受けて男性保護局は被害者並びに被害者の御家族にはこのような事態になってしまったことを深くお詫び致します。今後はこのようなことがないよう、警備体制を見直し、再発を防ぐことに努めます。とコメントしています。』


するとここでコメンテイターが口を開く


『確かに、警備体制が甘かったことは否めないとは思いますね。ですが、今回のように綿密に計画された場合や、犯人が複数人だった場合どうしても保護官1人だけだと後手に回ってしまうんですよね。ですから保護官だけの責任にしてしまうのはどうかと少なくとも私は思いますね』


『なんですか?それはつまり男性側に責任があったと言いたいんですか?どう考えても保護局の怠慢でしょう!』


コメンテイターがそういった時、辛口コメントが代名詞とも言える政治評論家が口を挟んだ。

よくは知らないのだがこの評論家と先程のコメンテイターは犬猿の仲らしく、評論家がコメンテイターに噛み付いている姿がよく見られる。

でも僕的にはコメンテイターの方は全く相手にしていないようにも感じる。

コメンテイターさんはどうやら保護局の人みたいだ。保護局の仕事もしながら、こういう場ではコメントをしたり、保護局としての意見を述べたりもしているらしい。


『そもそも、男性が外出をしようとした際なぜ保護官を1人しか付けなかったのか!この時点で保護局が男性を軽んじていることが伺えます!先の事件でも保護局が腐敗していたから起きたことでしょう!』


あれ?もしかして僕のこと?


『えー、一応訂正しておきますが。まず、保護官を1人しか付けなかったのかという問いに対しては、それを選択したのは被害者男性本人、そして、御家族の意志を尊重した結果です。』


『何を白々しいことを!そんな訳ないでしょう!』


『ここにその証拠があります。そもそも男性保護局では、男性が外出する際などには保護官を最低2名派遣することを推奨しています。しかし今回のケースですと、被害者男性は保護官が2人もいると威圧感を感じて苦痛だという事で保護官を1人にして欲しいと要請しています。勿論保護局も安全のために2名を警護につけることをお願いしていましたが、聞き入れられることはありませんでした。そのようなやり取りが何度もあり、御家族も保護局と度々問題を起こしていたそうですね』


自業自得で草


『ですが!事前に怪しい場所などをチェックしておくべきだったのでは?何年保護官として被害者のそばにいたんですの?』

『保護官は、四六時中男性のそばにいる訳ではありません。あくまでも男性が外出する時等です。男性が外出する事を保護官に知らせ、それから保護官が男性のお宅までお迎えに上がるのです。その上、男性は滅多に外出することはありません。被害者の方も外出は3年ぶりだそうです。いくら男性を保護するためとはいえ、いつ外出するか分からない男性のお宅に毎日保護官を派遣できるほど保護局も人でがある訳ではありません。』


そらそうだ


『保護官は男性保護の仕事がない時は何をしているのかご存知ですか?』

『訓練でしょう?男性を保護するための。今回は役に立たなかったみたいですが。なんのために毎日毎日訓練しているのかしらね』

『勿論、訓練もします。ですが主な仕事はデスクワークです。保護官とはいえ、普通の会社員とそう仕事の内容は変わりません。まさか、評論家を名乗るあなたが、訓練以外の職務を知らないとは思いませんでしたが』


そうなんだ、知らなかった。


『だからなんだって言うんです?』

『保護官を兵隊や警備員のように扱っていますが、まずはその認識を改めてくださいと言っているんです。我々がいれば、絶対に安全と思わず、男性自身にも自衛をして頂きたいのです。』


うんうん、自衛大事。僕もいつ石やら生卵やらが飛んできても避けられるように自衛してたもん。

⋯⋯⋯。ぐすん。



『くっ、で、では!先の事件はどうなのです?あれは保護局と政府が腐敗していたからこそ起きたことでしょう!』


『確かに、保護局や政府に腐敗していた部分があったのは間違いありません。しかしそれも、今までの話。前保護局長や前農林水産大臣をはじめ、この件に関わっていた人間は全て逮捕され、政府も保護局も風通しが良くなりました。今は信頼回復に向けて、一同業務に励んでいます。』


うんうん、がんばっておくれ


『口ではどうとでも言えますわ!被害者であったシオミズチャンネルのミズキさんは、国外に行くことすら検討しているそうでは無いですか!それに、一応は和解したと言われていますが、怪しいものですね。次はどんな脅しをかけたのやら』


おや、雲行きが怪しく。


『誓って保護局は脅しなどしておりません。ミズキ様には、誠心誠意謝罪し、和解して頂きました。』


そうだそうだ!勝手なことを言うな!


『どうでしょうかね?』


そこでアナウンサーが口を挟む


『えー、今入った情報ですと、先程から話題に上がっております、シオミズチャンネルのミズキさんがたった今ご自身のSNSを更新し、コメントを発表したとの事です』


お、さすが生放送。反応が早い。


『あら、ミズキさんも見ていらっしゃったんですね!これでどちらが正しいかはっきりしますわね!さあミズキさんのコメントを読んでくださる?大丈夫ですわミズキさん!貴方がどんな脅しを受けていたとしても、私が保護局の悪事を白日の元に晒して見せますわ!』


『で、では読み上げます。


僕は脅しなどは受けていません。証拠が必要でしたらその時の会話を録音させてもらっていたので、何時でも提示できます。先程コメンテイターさんが仰っていたように、現保護局長さんには誠心誠意謝罪をして頂きました。なので僕も和解に応じることが出来ました。勿論、すぐに信頼関係を再構築できる訳では無いので、いくつか条件は出させて頂きましたが、それを踏まえた上で、保護局や政府の方たちは信頼を取り戻せるよう新体制での組織運営に尽力するとお約束頂きました。僕自身も、新しい保護局や政府をもう一度信頼できるように頑張るつもりです。

最後に一言だけ、評論家という立場は良くも悪くも影響力があることを理解した上での発言をした方がいいかと思います。また、ちゃんと取材や、調査をしてから発言しましょう


とのことです』


そこで評論家の顔がアップになった。

あら、顔真っ赤!


『わたくしを、バカにしてますの!?ムキー!』


評論家は奇声をあげた後スタジオから出ていってしまいスタジオの空気がお通夜状態になってしまった⋯。

なので、SNSになんかごめんと投稿してテレビを消した。



にしても男性警護官か、そういえば会ったことなくね!?

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