第7話 水樹の出した答え

あ、え、えーと、映ってる?


み、皆さん初めまして。この度動画投稿者として活動をすることになりましたしおみずちゃんねるのミズキです。

見ての通り僕は男です。調べてみたんですが、世界で初の男性動画投稿者らしいです。

い、言ってて緊張してきました。


あ、まずは何故今回僕がデビューすることになったかを説明したいと思います。


何故僕が動画投稿者になったかというと、僕が男だからというのが一番の理由です。

と言っても皆さんには分からないと思うので、順番に説明しますね。


男性、もしくは男性が御家族にいる人は分かると思いますが、男性は成人すると義務が発生します。

具体的に言うと、月に1回以上の搾精及び精子の提供。

僕も成人前ではありますが、この間書類が届きまして、初めての搾精義務を終えたんだけど、検査の結果あらゆるデータが基準値を上回っていたみたいで、保護局に詳しく話を聞きたいとかで呼びたしを受けたんだけど、あ、これがその検査の結果データね。

そこで男性保護局の局長さんにいわれたんだ

出来ればこのリストの中の候補者から婚約者を決めて欲しいって。

まあ、情勢的にそういう事が必要なことも、そうやって婚約者を斡旋されることもあるって知ってたからそこまでは理解出来たんだけどね、そのリストがこれ!

みて!ほとんどが僕よりも一回り以上年上の人達なうえに、ほぼ全員政府の要人や国の資産家ばっかり!もうこれ僕を政治利用する気だって思われても仕方ないよね?僕は絶対嫌だったんだ、そういう政治のゴタゴタに巻き込まれるの!

でもその時に局長さんに言われたんだ。


ここで断ると最悪君には男性の義務を果たす意志がないとみなされ、給付金が無くなるかもしれない。最悪、逮捕される


って。給付金っていうのは成人すると男性は国から給付されるお金だね。それを受ける代わりに搾精や精子の提供の義務を果たしてくださいねってこと。まあ、これは当然だね。

男性はいろんな面で優遇して、権利を保証してもらっているんだから、この位はして当然だって僕も思ってる。

でも、今回に限っては納得できない。



だから僕は今後国からの給付金を一切受け取らないことにした。国からの施しを受けないなら保護局の言うことに従う理由は無いからね。


とまあ、ざっくりと説明したけどこれが僕が動画投稿者になろうと思ったきっかけかな。


・・・ん?なに?ここからは視聴者の質問に答えて?

・・・え?これ生放送なの!?ちょっとまってて聞いてないよ!?編集もできるからって思って気楽に喋ってたのに!

わ、わかったよ。こ、答えればいいんでしょ!

じゃあ質問ちょうだい!


『なんで投稿者?配信者でいいのでは?』


あ、あーこれはですね。み、見ての通り、僕は人と話すのが苦手な陰キャなのでとてもじゃないけど無理です。投稿者なら動画を作ってアップするだけなのでなんとかなると思って投稿者になることにしました。


『何系の投稿者になるんですか?』


ぼ、僕の好きな物をみんなに伝えていくチャンネルにしたいと思っています。音楽かもですし漫画とかかもしれないのでその時によって違うと思います。


『あのリスト本物?』


も、もちろん本物です。証拠もあります。僕はメンタルクソザコナメクジの陰キャなので何があっても身の潔白を証明できるように人と会う時はボイスレコーダーを常備しています。

あの時ももちろん録音していたので、それが証拠です


『何で投稿者にしたの?他の仕事でも良かったのでは??』


さ、今までの質問の答えと重複するかもですが、僕は人と話すのが苦手なので、普通の仕事はまず無理です。それに、男性という事でやれる仕事も限られると思います。(男性が一般企業などで働くには国の認可を受けたところでしか働けない)

その点動画投稿者は個人事業ですし、場所、時間、年齢、それに性別も関係なく働けますから、いちばん僕に適していたという感じです。


『さっきの政府の話が本当かどうか、正直私には分かりません。ですが、あんなにハッキリと国を敵に回すようなことをして大丈夫ですか?』


ご、ご心配ありがとうございます。

僕も不安はありますが、既に引越しをしていますし、大丈夫だと思います。

それにどうしても無理そうならばこの国を出ます。先程も言いましたが、動画投稿者ならばこの国に居なくても活動は出来ますし




その後も水樹は色んなコメントへの返事を何とか返していき



「で、では、近いうちにまた動画を出しますので楽しみにしていてください」



何とか生配信を終えた。


「や、やばい。人と話しすぎて限界だぁ。寝るぅ」


水樹はすり減った精神を回復するためにすぐに眠りにつくのだった。

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