第5話 コミュ症陰キャ、選択を迫られる

やあみんな汐田 水樹だよ!

今日は惰眠を貪ぼっていたらインターホンで叩き起され、男性保護局の人達に拉致られ(ちゃんと任意だったよ)保護局の本部?までやってきたよ。

そして僕の対面に座っているのは保護局の局長さんと研究室?の室長さんらしいよ!

はっきり言って最初に迎えに来た人たちも含めて、知らない人達と接し過ぎて吐きそうだよ!

コミュ症陰キャになんて試練を課すんだ、神よ!


「あー、汐田 水樹君、で間違いないかな?」

「は、はい」


ちゃんと返事できた!声裏返らなかった!えらい!


「私は男性保護局、局長の石動いするぎ 恭子だ」

「私は研究室、所長の矢ヶ崎 薫です。主に男性の皆さんから提供された精子の検査や研究、管理なんかを担当しています。」

「あ、は、はい」

「今日来てもらったのは、先日と今朝、君に提供して貰った精子の検査結果などについて話しておきたかったからだ」

「は、はぁ」


検査結果?それだけでわざわざあんなに仰々しいお迎えが来るのか?てっきり今朝の事務局員さんにセクハラで訴えられて塀の中に行くのかと思っていたのだけれど。辞世の句とかまで詠んじゃったよ?


「ではここからは私が話しましょう」


そこからは研究室の所長さんなる人のお話が続いた。

要約すると、提供した僕の精子を検査した結果、この世界に置ける数値をはるかに超えていたらしい。俺TUEEEE状態だったらしい。

精子の時しかいきがれないなんて、実に僕らしい。おっと話がそれた。

これで多くの女性が妊娠をして、少子化に少しでも歯止めがかかるかもとか何とか。

すげー。頑張れ僕の精子!応援してるぞ!

さっきから精子、精子うるさいな!お食事中の方が居たらどうするんだ!

ほんとすみません。


「あー、話を続けていいかな?」

「す、すいましぇん!」


いかんいかん、自分ワールドに逃避していたらしい。局長さんに怪訝な目で見られている。

ただでさえ今朝のことで、性犯罪者予備軍になっているかもしれないのだ、行動には気をつけなくては!


「君はもうすぐ成人する。成人したら、国からは毎月男性に対する手当のようなものが振り込まれることは知っているかい?」

「あ、え、えっと。ネ、ネットでみました。確か月に150~200万円の支給金があると。」

「その通りだ。ならこの国の男性は結婚する場合は妻を最低2人取らなくていけないことも知っているかな?」

「は、はい。い、一応」


そう、この世界では一夫多妻制は当たり前。

むしろ一夫多妻を義務としている国すらある。

国によって娶らなきゃいけない人数はバラバラだが、この国では2人というわけだ。男性が少ない世界ならではだね。


「そして、その婚約相手は出来れば政府が選んだ相手であるとなお好ましい。」


ぜ、絶対嫌だ。こちとらコミュ症陰キャのクソザコナメクジメンタルオタクなんだよ!普通の人とすらまともに喋れないのに政府が選んだ相手とか絶対やばいじゃん。さっき僕の精子の検査結果がこの世界の基準を大きく上回っているとか言ってたし、最悪政治絡みのあれこれに巻き込まれたりするかもじゃん。

はー、軽く死ねる。


「汐田君?聞いているかい?」

「あ、は、はい。すみません」

「まあ、いきなり言われても混乱するとは思うがね。君達男性は国によって手厚く保護されるべき存在だ。この国のため、協力して欲しい」

「(う、胡散臭えぇぇ)」

「これが君に婚約して欲しいものたちのリストだ。その中から最低5人選んで欲しい」


渡された資料を見て絶句した。

渡された資料に乗っていた人たちは全員がアラフォーかそれ以上。しかも全員が国の重要なポストに就いている。いちばん若くて38歳。

こりゃー、やってんなぁ!!


「あ、あの」

「なにかな?」

「絶対にここから選ばなくてはいけないのでしょうか?」

「そうだね」

「も、もし嫌だと言ったらどうなりますか?」


イエスと言うまで返さないとかはやめてくれよ?舌噛み切って死ぬよ?陰キャ舐めんな?舌だけにってね!


「我々の立場では、無理強いは出来ない。」

「そ、そうですか(よかった)」

「ただ、」

「!?」

「得策では無い、ここで断ると最悪君には男性の義務を果たす意志がないとみなされ、給付金が無くなるかもしれない。最悪、逮捕される」


それは脅迫とか無理強いとかと変わらないのでは?おん?


「す、すこし、考えさせて下さい」

「良いだろう。1週間待とう。それまでに結論を出してくれ。」

「・・・失礼します」



僕は家に帰り不貞寝した。




水樹が退出した後、矢ヶ崎は石動に詰め寄る


「どういう事ですか、石動局長!彼の婚約者をあてがう。そこまでは理解できますが、この人選。彼を政治利用するつもりですか!」

「人聞きの悪いことを言うもんじゃないぞ矢ヶ崎君。そのような意図は無い」

「このリストを見て、はいそうですかなんて言えるわけないでしょう!全員が国で需要なポストにいる人間か政府へ多額の支援をしている人間ばかりではないですか!」

「怖い偶然もあるものだな」

「ふざけないでください!しかも何より、年齢を考えてください!彼はまだ未成年ですよ!自分より一回り以上年上の女性をあてがうなんて、どう考えても不当です!」

「年増には、結婚するけんりはないと、そう言いたいのかね?」

「そ、そういう訳ではありません。それがお互いが合意の上での結婚ならば文句はありません。ですが、今回は話が別です!男性への支援金が無くなる、最悪逮捕される、そう言って彼に婚約をするよう迫った。これは立派な脅迫です」

「なるほど、君の言いたいことはわかった。だが、これは男性保護局、そして国の決定だ。君1人がどれだけゴネても覆ることは無い」

「局長!」

「退出したまえ」


半ば強制的に退出させられた矢ヶ崎は、この後罷免されることになった。不当解雇と訴えたとしても、そもそも国が彼女を罷免したようなものだ。相手にされないか、騒ぎ立てたとしてももみ消されるのが関の山だろう。

矢ヶ崎は泣き寝入りするしか無かった。




約束の期日が迫る。

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