第3話 男の子の義務

男性保護局より少子化対策義務に関するお知らせ。


汐田 水樹様

お世話になっております。

汐田様におかれましては今年成人を迎えられるという事で、お祝い申し上げます。

昨今の男性の出生率が低下している中、このようなお祝いができる事、保護局一同大変嬉しく思っております。

さて、成人を迎える事で今後様々な義務などが発生する事になります。

そこで、本日は少子化対策義務についてお知らせいたします。

男性義務については以下の通りになります。


・搾精、及び精子提供(少子化対策のため毎月最低1回はお願い致します。)

・年に一度、検査を受けていただきデータを取らせていただきます。


詳しくは同封の資料をご覧ください。

不明点などございましたらお気軽に保護局までご連絡ください。



 



おうふ。

まぁ、昨日調べたから義務なんかについては知ってたけどさ、早ない?昨日の今日ぞ?

見計らったかのようなタイミングやな。

まあ、これをやらないと男性だからと免除されている税金やら社会保障やらが受けられないみたいだし、しっかりやるけどさ。

んーと、なになに?同封の搾精キットに精子を採取しご提供下さい。採取した精子をすぐに冷凍保存する必要があるため、ご自宅まで係員が回収に伺います。そのため、搾精の1時間前までにご連絡を頂きますようお願いします。

なるほど、確か精子って体外に出たら数時間くらいしか生きられないんだっけ?そう考えると確かに素早い回収が必要だよね。よく考えられてるもんだ。

あ、QRコード読み取れば直接電話とかしなくてもいいんだ。助かるー。コミュ症陰キャに電話はハードル高いからね。


他は、税金がどう、社会保障がどう、みたいなのが書いてあるなぁ。


やーん、難しい事わかんなーい


・・・うん、なんか、ごめん。誰に謝ってるのかわかんないけど、ごめん。


き、気を取り直して!

他の書類は、ふむふむ、ふむふむふむふむ。

基本的に僕、というか男性の権利を保証します的な書類だな、よく分かんないけど。

とりあえず書類に目を通しながらサインしていきますか。面倒だけど、これはやらなきゃいけない事だから仕方ないよね。




数時間後


「お、終わったぁ〜・・・」


難しい文言とにらめっこしながら、ちゃんと内容を読んでからサインをする。という工程はとても疲れる。サインだけだし、楽勝じゃん?とか思ってる奴、ただでさえ男が少ないこの世界で慎重になって悪いことなんてないんだよ!特に僕みたいな奴はね!契約書に書いてありますよ?サインしましたよね?なんてことを言われて変なことに巻き込まれたらどうするんだ!

軽く死ねる。

というわけでクソザコナメクジメンタルを発動して、書類を隅から隅まで読み込み、ネットで調べ、安全性を確認した。

書類のコピーもとった。

ふぃー、ちかれた。テレビでも見て休憩しよう。


この時間はバラエティ番組の生放送みたいだ。

書類作業で辟易した気持ちを切り替えるのにはちょうどいいかもしれない。

そう思ってぼんやりテレビを見ていたのだが・・・


「ぶぶっ!!」


驚きのあまり、吹き出した。テレビの画面の中では上裸の女性が体を張ってスタジオの笑いをとっていた。

び、びっくりした・・・。

こんなの放送して大丈夫なのかと思ったけど、ここは男女の貞操観念が逆転した世界。元の世界で考えると、男性のお笑い芸人が半裸で体を張ってるってことになるのか。

なら、大丈夫、なのか??

などと、僕が無理やり納得しようとしていると、テレビから悲鳴が聞こえる。

どうやら、身体の柔らかを競うコーナーらしく2人の女性が開脚している。2人とも身体が固いらしくあまり開脚できていない。そこで同じチームのメンバーが無理やり足を開いたり、背中を押したりしている。それにより挑戦者の芸人さんが悲鳴をあげているようだ。

あそこまで体を張ってまで笑いを取りに行くなんて、芸人さんには頭が下がる。本当にすごい、僕だったら絶対無理。

気づけば僕は彼女達が上裸なのがほとんど気にならないくらい純粋に番組を楽しんでいた。

それに、笑ったことで程よくリフレッシュ出来た気がする。

なんて思っていると事件が起きた。

開脚に挑戦していた芸人さんがギブアップして仰向けに勢いよく倒れた瞬間、履いていたスポーツレギンスの股部分が裂けたのだ。まだそこまでなら笑いになっただろう。しかし、スポーツレギンスは下着のラインが出たり、下着が透けるの避けるために下着を履かない人もいるらしいのだ(後日調べた)。

そしてその芸人さんは履かないタイプの人だったのだろう。

そうなるとどうなるか。もう、分かるよね?

カメラに局部がバッチリ映ってしまったのだ。

しかもこれは生放送。急いで画面が切り替わるが、映ったものは仕方ない。

この世界が貞操が逆転した世界だから笑い話で済んでるようだ。


しかし、性欲の枯れたこの世界の男と違ってあくまでも僕は普通の男の子。


そそくさと書類のQRコードを読み取りちょちょいと操作した後、採取キットを持って部屋にこもるのであった。



何してたかって?言わせんなよ!



その後回収に来た管理局の人にブツを渡して、

僕は初めて男の義務を果たしたのだ。




なので、そろそろ宇宙の誕生について考えようと思う。







僕がアホなことやっている一方、僕の提出したブツがまた新たなる厄介事を持ち込もうとしていた。

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