第4話 おきなわワールド


SE:走っていた車が止まる音。


「はい、到着です。ここは『おきなわワールド』っていうところです! ホテルからも近いから到着が早いですね。今日は、一日中遊べますよ!」


「沖縄を、ギュッと詰め込んだような、そんな楽しそうな響きがする場所なのです。実際に楽しいんですよー! 沖縄に関連したいろんな体験ができたりするんです」


「いろいろ楽しみにしててくださいね?」


「それじゃあ、今日も一緒に楽しんでいきましょ! さぁさぁ、車を降りましょ」


SE:車を降りる音。

SE:ミンミンとセミの鳴く声。


「まだ朝早い時間なんですけども、暑いですよね。今年の沖縄は暑いみたいです」


「暑いので、手をつなぐのは、やめ……。あっ……、あれ?」(驚く様子)


「君の方から、自然と手をつないでくれるんですね……。なんだか恥ずかしい……かも……」(恥ずかしがる)


「やっと、求愛をしてくれてるんですね? 手をつないでくれるだけで、私は嬉しがりますよ?


「ふふ、待ってたんですよ? 君が沖縄に滞在できるのも一週間だけですし。セミさんと一緒ですからね」


「繁殖期間が短いので、早めに求愛してくれて嬉しいんです。君の求愛、届きました」


「ふふ。私は、チョロイんです」


「あなたの方から寄ってきてくれれば、いつでも……」(耳元で囁くように)


「……っと、まだ朝なので、やっぱりやめて。爽やかに行きましょ! 入場、入場ー!」(慌てて元の明るい感じ戻る)



SE:セミの声の中、歩く音。


「入場したら、こちらの方へ行きますよ。そうそう、階段を降りて降りてー」



SE:セミの声が段々と静かになる。


「この道であってますよー、これが順路です。そのままずーっと下です。はい、これから探検が始まります。洞窟探検です!」


「おきなわワールドの名所、『玉泉洞ぎょくせんどう』です!」



SE:湿った地面を歩く音。洞窟内に響く。

SE:ここから洞窟内は、少し響く感じの声。


「ここって、涼しいでしょ? 年間通じて、約21度に保たれたところなんです。ちょっと湿度が高いですけども。涼しいんです」


「夏でも涼しくて、冬も暖かいんです。ずーっと、同じく温度でいられるっていいですよね」


「そんな感じで、私にもずーっと温かく接してくれたら嬉しいのにな……」(小声)


「いえ、なんでもないです。ここって声が響きますんで、どこかの観光局の声でも聞こえたんでしょう。ふふ」



SE:湿った地面を歩く音。


「ここは、暗くて滑りやすいから気を付けてくださいね」


SE:ぼふっと、胸元に当たる音。


「……って、うわっと、ごめんなさい」(胸に埋まってしまい、胸のあたりから聞こえる曇った声)


「……ありがとうございます。……がっちり抱いてくれて、助かりました」(照れる声)



「……きょ、今日は、なんだか君の方が積極的で、負けた感じがしちゃいますね。それも悪くないですけども。なんか悔しい……」(恥ずかしそうに、悔しがる)


「今みたいに、転んでしまう危険があるので、ゆっくり歩いていきましょうね。わ、私が、ダメな例を見せてあげただけなんですからね!」(恥ずかしさを紛らわすように)



SE:湿った地面を歩く音。


「えっ……? また手をつないでくれるんですか……? やっぱり君の方が積極的ですね……。ううー……」


「誰も見てないですけども……。そんなに私の方ばかり見ないでくださいよ……」(恥ずかしがる声)


「ライトアップされた鍾乳石を見てください……。私、積極的に来られるのは、弱いかもです……」(恥ずかしがる声)



「……えっ? 暗いから怖い?」(驚く様子)


「そんな理由で手をつないで来てるんですか……? 君らしいと言えば、君らしいですね」(少しあきれる)


「ちょっとドキドキしちゃいますけども。やっぱりお姉さんの私がリードしないとですね!」(元気になった声)


「ほら、手をつなぐよ?」(お姉さんらしく、色っぽく)


「ほらほらー、手を握るときは、しっかり指を絡めてくださいよ? だって怖いんでしょ? がっちり握らないと危ないんですからね?」(色っぽく)



SE:湿った地面を歩く音。


「ふふ、昔みたいだね。小さい頃も、こうやって手をつないで洞窟探検してたよね」(爽やかに戻った声)


「君は、『怖い怖いー登って言ってたんだよ? それでね、怖いときの気持ちのやわらげ方を私は教えてあげたんです。こうやって……」



SE:チュッと、キスする音が洞窟内に響く。


「えっ? 淫乱なんかじゃないですよ? キスって、怖さを和らげる一番の方法なんですよ? どうです、怖くなくなったでしょ?」


「ふふ。もう一回行きますよ……」(耳元で囁く声)



SE:チュッと、キスする音が洞窟内に響く。


「ほら、これでもう怖くないでしょ? 怖くなったら、いつでもキスしてきていいんですからね? お姉さんが受け止めてあげますよ?」


「……い、いや、やっぱりごめん。君の方から来ると、ちょっと構えちゃうので、私からしますから。怖くなったら言ってください。おねだりしたら、キスしてあげます」(恥ずかしがるように)


「え、もうおねだりですか? まだ序盤ですよ? 誰も見てないからって……、もう……」



SE:チュッと、キスする音が洞窟内に響く。


「もう……。これ以上はダメです。私のルールに従ってください……」(恥ずかしがって、うつむいて言う)


「君は、怖いらしいので、ここからは腕を組んでいきましょう。これで、痛み分けです」(恥ずかしそうな声で、近づいてくる)


「ここだと涼しいですから、くっつき放題です。暗いから誰にも見えないですし」(近くでしゃべる声)


「この鍾乳洞は1km近くありますから。その間はずっとこうです。私だって緊張してるんですからね……」(近くでしゃべる声)


SE:鼓動の音が聞こえる。

SE:湿った地面を歩く音。


「鍾乳石、ライトアップされていて、幻想的ですよね。あそことか、二つの鍾乳石がくっついちゃってますね。私たちみたい……。ふふ」(照れながらも、少し楽しそう)


「長い年月をかけて、二つだった鍾乳石が一つになっていく。それって、なんだかロマンチックですよね」


「ずっと二人で一緒にいたから、一つになれる。その後は、二人でずっと添い遂げる……」(切なそうに言う)


「一週間なんて短すぎるんで、もっと一緒にいましょうよ……」(ぼそっとつぶやく)



「いえ、何でもないです。一週間限りの旅行ですもんね。わかってますよ」


「一週間しか一緒にいれないのに、しょぼくれてちゃダメですよね。セミみたく、激しく求愛して、求め合えばいいんですよね!」(吹っ切れた感じで言う)



「……けど、なんでセミって、地下で暮らしている幼虫の時に求愛しないんですかね」


「それができたら、ずっとイチャイチャできて嬉しいって思うのに」


「また、子供に戻って、君とずーっと一緒に遊びたいな……」


「この鍾乳洞、出口なんて無くなっちゃえばいいのにな……」


「地上に出ないで、地下で長い間一緒に暮らす。それも良い人生だと思いますよ! 外になんて出ないで、沖縄で一生を終えるのだっていいんですよ……?」


「私と、ずーっと一緒にいれますよ?」



SE:湿った地面を歩く音。


「あぁ……。もう出口か……。寂しいな……」


「えっ? なんですか? 引っ張らないでくださいって、危ないですよ!」


「地下じゃなくて、地上に出て精一杯遊ぼうってことですか?」



「……もう、たまに強引なんだからなぁ。そこが、君らしいけど」(あきれた感じで言う)


「限りがあるからって、悲しんじゃいけないですよね! 最後の最後まで騒いで楽しんじゃいましょ!」


SE:ミーンミーンと、セミの声。


✧••┈┈┈┈┈┈••✧

【あとがき】

この物語が『面白い』『続きが読みたい』と思って頂けましたら、☆での評価をお願いいたしたます。

作者モチベーションに繋がります。(*_ _)

✧••┈┈┈┈┈┈••✧

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