第2話 美ら海水族館

SE:ざわざわと人混みの中を歩く音。


「今日は、美ら海水族館に来てみましたね。どうですか、綺麗なところでしょ?」


「ホテルからは、ちょっと遠かったですけれども。やっぱり沖縄に来たら、美ら海水族館に来ないとですよね」


「もうっ! なんで、眠そうにしているんですか! さっき起きたばかりみたいな!」


「……って、そうか。君は移動中ずっと寝てましたもんね。昨日も、夜通しで話そうって思ってたのに、すぐ寝ちゃうんですもん。飛行機での移動が疲れたとか言って」


「募る思いと、積もる話がいっぱいあったのに、何も話せなくて、私はつまらなかったんですからね!」


「ここに来る途中も、私の隣でグーグー寝ちゃってさ。もっと、私との沖縄旅行を満喫しようと思ってくれてもいいんですからね?」


「まぁいいけどね。まだまだ沖縄旅行は始まったばっかりですし。いっぱい寝たから回復できたでしょ? 今日はいっぱい楽しんじゃいましょうね!」


「じゃあ、せっかくなので、この美ら海水族館の歴史でも学びましょうか。私がガイドなのでね。楽しめるように、調べてきたんですからね」


「えー、こほん」(咳払いをする声。)


「こちらの場所は、美ら海水族館がピックアップされがちですけど、国営の海浜公園になっているんです。美ら海水族館以外にも色々施設があって、結構広いんです」


「熱帯の植物園もあったり、子供用のアスレチックがあったり。海に面しているビーチエリアでは、アクティビティが体験できるんです」


「なので、ここは一日いても、ずーっと遊べるようなところになっているんです。この敷地の中を散歩するだけでも、楽しいんですよ。お土産屋さんも、あったり」


「そういうところなんですけれども、その中にあって一番人気なのが、美ら海水族館です。他のスポットでも遊べますけれども、どうしますか? さっそく水族館に行っちゃいますか?」


「君は、美味しいものは先に食べちゃう派なんですよね。そうそう昔からそうだったよね」


「いいですよ放では、早進行きましょ!」


SE:ガヤガヤと室内の人混みで、歩く音。



「水族館に入ってですね、まず初めに見えるのは、サンゴ礁です。沖縄の海はサンゴが豊富ですから、そんなサンゴの紹介がされているんです」


「この水族館はですね、段々と海に潜っていくような感覚を味わえる仕掛けになっているんですよ。まずはずみは、水辺の生物の展示になっています」


「ほらほら、浅瀬の生物のヒトデとか、ナマコがいますよ」


「この子たち、可愛いですよね。……そうだ! 唐突に、私からクイズです! なんで、ヒトデって呼ばれているか知っていますか?」


(少し答えを聞く間をあける)


「おおー、正解です。さすがに簡単か……。人の手みたいになっているから、『ヒトデ』って呼ばれているんですよね。もうちょっと大喜利的に遊んでくれても良かったんですよ? もしかして、まだ緊張してます? ふふ」


「けど、人の手みたいに見えますよね。こうやってですね、うねうね動いて獲物を捕るんですよ。動く様子がキモ可愛いですよね」


「ちょっとやってみますね」


(耳元に近づいてきて、吐息が聞こえるように)


「こうやって、うにょうにょって動いて」(耳元で囁くように)


「それで、君の手にスポッっと……」(耳元で囁くように)


「それで、指を絡ませたりなんかしてね」(耳元で囁くように)


「それで、手の真ん中あたりにある口から、相手を食べていくんです。可愛く見えるヒトデですけど、実は肉食なんです」(耳元で囁くように)


「手で触れていたら、食べれちゃうんですよ……? ふふ。君は今私に捕食されてますよ?」(耳元で囁くように)



「どうですか? 私に食べられている感触は、気持ちいですか?」(耳元で囁くように)


「そうそう、ヒトデって脳みそが無いんですって。だから、本能のままに動いているんです」(耳元で囁くように)


「こうやって、美味しい獲物を、本能のままに掴んで。ゆっくりと溶かすように、食べていくんです」(耳元で囁くように)


「ゆっくりと、私の中に入っていっていく感触。感じますか? 気持ちいいですか? 私は気持ちいいです。一つになるって、気持ち良い……」(耳元で囁くように)



「はは。ちょとやり過ぎちゃいましたかね」(少し離れて、爽やかな口調に戻る)


「まだ、入り口ですもんね。もっと奥に行きましょ、一緒に!」


「え、なんで手を放そうとするんですか? いいじゃないですか。昔みたいに、手を繋いでいきましょうよ?」


「……実は、私だって、少し恥ずかしいんですからね」(小さな声で恥ずかしそうに言う。)


「ううん。なんでもないよ! けど、暗いから何も見えなくなっちゃうんです。はぐれないように、手をつないでいきましょう! 私がルールです!」



SE:ガヤガヤと人混みの中を歩く音。



「暗闇には、深海の魚がいっぱいいるんです。可愛いですよね。海の神秘です」


「えぇ? 暗いのが怖いの? しょうがないですね。君は子供っぽいところがありますね。そしたら、ずいずいと進んじゃって、メインの水槽に行きましょ!」


SE:ガヤガヤと人混みの中を歩く音。



「ここです、ここが見せたかったんです! これが有名な日本一で一番大きな水槽です! この大きな水槽には、マンタや、ジンベイザメがいるんですよ」


「すごいですよね。本当に海の中にいるみたい。小さい魚たちが優雅に泳いでいて、大きい魚たちは水槽の中を周遊しているので、たまにこっちに来るんです。すっごいでっかいんですよ!」


「正面から見るのもいいですけど、穴場スポットがあるんです。少し先に行くと、座って見れるスポットがあるんです!」


「こっちです、こっち」



「ねーっ! すごいですよね! 同じ水槽を横から見ている感じなんです。けど、こっちは天井までガラス張りになってるんですよ。綺麗ですよね」


「本当に、海の中にいるみたい。水面もきらきら光っていて。上を大きなジンベイザメちゃんも通っていくんです」


「人も少ないですし、穴場ですよね。カップルも、いっぱい座って見てますし、二人で手をつないだりして」


「ほらほら、あそこ。……えっと、魚じゃないですよ、お客さんの方。水槽を見ないでイチャイチャしてたりしてますよ」


「ねっ? ここの人たちは、誰も私たちのことなんて見ていないんですよ。少しくらいイチャイチャしても大丈夫ですよ?」


「そろそろ君も我慢の限界じゃないですか? 私とつないでいる手が、しっとり濡れてきてますよ?」(近づいてきて、耳元で囁くように。)


「さっきの続きしよ?」(耳元で囁くように)



「んーー! もうっ! ジンベイザメばっかり見て! そりゃあ、ここが一番の見どころスポットかもしれないですけども!」(離れて、少し怒ったように)


「あっ! いいこと考えた」(独り言をつぶやくように。)


「魚がみたいんですよね。ほらほら、こっちの水槽を見てくださいよー! マンタちゃんが、すごい勢いで、こっち近づいてきてますよ! すごいすごい、エサを食べてくみたいに口をパクパクさせてますよ!」(後ろから聞こえてくる声)



SE:振り返り際にキスをする音。チュッ。


「……水槽の中にいるマンタじゃなくて、が急接近してましたね。間違えちゃいました。へへ……」(いたずらっぽく、恥ずかしそうに言う)


「少しくらい、いいじゃない? みんな水槽の中のマンタや、ジンベイザメに夢中なんですから?」


「拒むようなら、またまた強権発動しちゃおうかな? 今だけ、少し動かないでください」


「そうそう止まってて。捕食されるのは、君だからね?」(耳元で囁くように)


「食べられてる時は、動かない下さいね? 動くと、荒っぽくなっちゃうから……」(逆の耳から囁くやうに)


SE:濃厚なキスをする音。チュッ。(キスする音)


✧••┈┈┈┈┈┈••✧

【あとがき】

この物語が『面白い』『続きが読みたい』と思って頂けましたら、☆での評価をお願いいたしたます。

作者モチベーションに繋がります。(*_ _)

✧••┈┈┈┈┈┈••✧

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る