第13話

 デッサン会は回を増すごとに参加者が増えるけど絵なんか描いた事ないし美術も興味ないし僕を間近で堂々と視姦出来るのは魅力的だけどちょっと素人はハードル高いなぁ的意識が働き当初の伸び率は思ったよりも高くない。


 まず先輩達の知人友人の二年生が加わり、さらにその友人が加わり、二年生だけ十人くらい集まると三年の連中も危機感を覚えてお前行ってみろよやだよ二年ばっかで気まずいし、じゃあ一緒に行こうよ的なノリで三年生が二人加わるとそこから一気に三年も増え同じようなノリで一年も加わりその頃には参加者も20を越えて素人がどうみたいなお堅い空気は全くなくなり誰でもOKな空気になる。


 そのほとんどというかほぼほぼ全員が僕の美貌に興味があるだけの素人なので来たはいいけどデッサンなんかやった事ないしまずはどこから描けばいいのかとっかかりすら見つけらず途方に暮れ鞍馬先輩は自分の絵そっちのけで急増する参加者にアレコレ教えるのに忙しくなる。


 それはそれではたから見てる楽しそうで充実してるようには見えるけど僕としては言い出しっぺの鞍馬先輩が絵を描けないのはなんか違うと言うか可哀想な気がして少しモヤモヤする。


「仕方ない。これでも一応部長だからね。切っ掛けはなんであれ美術に興味を持ってくれたわけだし、彼女らをないがしろにしてデッサン会の空気がなぁなぁになったら飴村君にも申し訳ないからさ」


 鞍馬先輩の言いたい事は理解出来る。参加者のほとんどは絵なんか全然興味なくて、間近で僕を拝めればそれでいい。その言い訳にデッサン会を利用しているに過ぎない。だからこそ締める所はちゃんと締め、デッサン会という体裁を維持しないと集まり自体が破綻する。誰も絵なんか描かなくなり、馬鹿みたいにポーズを取る僕を眺めながら好き勝手お喋りしたりズリネタ用の画像を勝手に撮って終わるだけの意味不明な会に成り下がる。


 そうならないように鞍馬先輩はちゃんと新規に絵を教えここは形だけでも絵を描く場でその意思がない者は受け居られらないという無言のメッセージをやんわりだけど確実に伝え実際会は最初こそ騒がしいけどもはや定番となったAVのインタビューパートみたいなアレが終わるとみんな真面目に絵を描きはじめるという暗黙的空気が定着している。


「それに、最近は飴村君が来ない日でもAやBや美術に興味を持った生徒が部活に参加してくれるようになったからね。その子達も手伝ってくれるし、それ程大変じゃないよ」


 会の最後には全員で絵を見せあって鞍馬先輩や僕が一言二言感想を言ったりする。鞍馬先輩は上手い下手で点数を付けたりせず、その人の個性や頑張り、目の付け所や描いている時の姿勢、前回からの成長度合いとかなんでもいいからとにかく褒める。僕もそれに習うと言うか普通にみんなが真剣に僕の事を描いてくれるのが嬉しくてなんでもいいから褒めたい気分になる。


 〇〇さんは脚上手だね。脚フェチなのかな? とか言ってその子の前でこれ見よがしに生足を見せたり、〇〇さんの位置からだと僕のスカートの中が見えると思うんだけど、なんで影になってるのかなぁ? とか言って処女子ちゃんをあぅあぅさせて楽しむ。


 そういう事をしているとみんなももっと上手く描きたいという気持ちが湧いてくるみたいで回を増すごとに参加者の画力が上がり、そうなると自分の上達とか頑張りの成果を誰かに見せたくなるようで自然と古参が新規に、上手い子が下手な子に教えてあげる空気が出来上がる。


 だからと言って鞍馬先輩の仕事が楽になるわけじゃなく、レベルの上がった参加者にあれこれ聞かれて忙しくなる一方だ。


 先輩がそれでいいなら僕が言う事なんかなにもないけど、それはそれとして僕もこの会に来るのが楽しくなってきて、もっと人が増えて欲しい、みんながもっと楽しく絵に取組むにはどうしたらいいだろうとか考えるようになる。


 それが僕の悪い所でもあり性分でもあり、ミステリアスでクールなサバサバ系ダウナー男子みたいな顔をしているけど一度手を出すと結構なんでものめり込んでしまう。


 でも本質的に僕は飽きっぽい人間だし一つの事や所に骨を埋められるタイプの人間じゃないので自分の首を絞める結果になってしまう。それが分かっているから何事も適度な距離感を保つように意識していて実際その通りに行動はしているんだけど今回はちょっと上手く出来ずにのめり込み過ぎてしまう。


 新規の参加者は大体僕が目当てでそれは別にいいんだけど一回来た子が次に来ないと僕のせいみたいな気がしてちょっと悲しい。落ち込む程ではないけどなんか悔しい。この僕がモデルをやってるのになにが不満なわけ! と一丁前に学年一の美少年ぶってしまう。


 だけど僕はただのモデルで絵心も全くないから出来る事なんかあまりないしそもそも美術部ですらないから変に干渉するのも違う気がする。


 それで何回か会が終わってからそろそろポーズを変えようかという話になった時にみんなの会話を上手く誘導して少しずつエロいポーズを解禁する。

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