第6話
てっしーが心配するのも無理はない。
少子化と男性の貞淑傾向、複数の女性による男性の共有的一夫多妻を否定する風潮により、女性による性犯罪は右肩上がりで増えている。
なかにはそれにつけ込み荒稼ぎする悪い売男もいて、男女間の断絶は深まるばかりだ。
巷では男性に恨みを持った女性が強姦殺人を犯すなんて事例も珍しくない。
「そうならないようにちゃんと相手は選んでるから」
「そういう問題じゃないでしょ! エスパーじゃないんだから他人の心の中なんてわかるわけないじゃない! ていうか痴漢とエッチしてる時点で見る目ないし!」
「だからさぁ、言ってるじゃん。これは僕なりの慈善活動なの。更生出来そうな痴漢を助けてるわけ」
「エッチして? そんなの変態を調子に乗らせるだけでしょ!」
「飴と鞭だよ。人は簡単に変わらないから、まずは変わったら良い事あるっていう飴を提示しなくっちゃ」
ホテルでちょっと話したけど、やっぱり花ちゃんは生きる事に疲れていた。
どこにでもある、ありふれた社畜の苦労話だけど。
だからこそ、僕には痛いくらいに理解出来た。
生きる意味が見いだせず、自分にその価値があると思えない。
同じ人間なのになんで自分だけこんな目にと人と社会に恨みが募る。
それが今日、僕という切っ掛けにより小さく弾けた。
その為にミニスカートを履いていると言ったら大袈裟だけど、大嘘ってわけじゃない。
大きな餌をぶら下げておけば、手遅れになる前に生き詰まった人間を炙り出せる。
実際花ちゃんはそうだったわけだし。
生き詰まった人間に説教しても意味がない。
それを受け止めるだけの余裕がどこにもないのだ。
だからまずは飴を与えて、余裕を持てるようにしないといけない。
僕がこんな事を出来るのだって、美少年チートでみんなにチヤホヤされ、将来の心配なんかなにもなく、日々満たされて余裕たっぷりだからだ。
ある意味神様から与えられたとも言えるこの余裕を、僕は神様に与えられなかった人達に分けてあげているだけだ。
まぁ、それは
それだって、僕にほんのり前世分の経験値が上乗せされているからで、同世代の男の子がそんな事を考えたりはしないだろうし、てっしーに理解しろというのも酷な話ではある。
それは僕も分かっているから、出来れば穏便に誤魔化したい。
でもてっしーはとにかく僕の事が心配で、僕の言い訳なんかこれっぽっちも耳に入らない。
どうしてわかってくれないの? あんたの為に言ってるのよ! と、言えば言うだけ感情的になる。
仕方なく、僕は対てっしー用の切り札を切る。
「うるさいなぁ。てっしーだって僕の事無理やり押し倒して処女卒業した癖に」
「ぬあぁ!? そ、それは言わない約束でしょ!?」
別にそんな約束はしてないけど。
一年の頃同じクラスだったてっしーは、その頃から風紀委員で、事あるごとに不良でビッチな僕に口うるさく絡んでいた。
ハッキリ言って正義感は半分もなかったと思う。
確かにてっしーは正義感の強い真面目ちゃんだけど、その時は間違いなく、僕と関りを持ちたくて風紀委員の立場を利用していた。
別に珍しい事じゃないし、そんな奴はいくらでもいたけど、綺麗ごとを利用するてっしーがうざったくて、僕はある時てっしーを誘惑した。
95パーセント、あれは僕が悪いと思う。
てっしーでなくとも、あんな状況であんな事を言われたら、絶対僕を襲うだろう。
とは言え、最後の引き金を引いたのはてっしーなのだ。
あくまでも僕は誘惑に徹し、選択を委ねただけ。
その結果、てっしーは僕の同意を得ずに僕を押し倒し、処女を卒業した。
限りなく白に近い黒であり、ほとんど和姦と言っていいレイプだった。
でも、てっしーの言い分に乗っ取ればレイプはレイプであり、言い訳の余地はない。
僕は全くそうは思わないし、本音を言えばあんなものレイプでもなんでもないと思っているけど。
でも、真面目なてっしーはそうは思えない。
だからあれはてっしーの良心に生涯残り続ける汚点のトゲになった。
そんな事を生涯悩み続ける程度には、てっしーは普通に優しい良い奴だった。
同時にあの程度の誘惑で僕の事を押し倒してしまう程度のお猿さんでもあるわけだけど。
その二つは矛盾せず両立する。
少なくとも僕はそう信じている。
だから痴漢を庇ってエッチもする。
一つの矛盾もない完璧な理論だ。
別に矛盾してても構わないけど。
僕達は数学のドリルの世界で生きてるわけじゃない。
本質的にルール無用で正解のない無責任なこの世界で誰もがありもしない答えを求めて必死になって生きている。
そこに一つの矛盾もない完璧な理論なんかあるはずがない。
あるように見えるだけの嘘っぱちだ。
だから僕はてっしーの言い分も理解出来る。
見方を変えるまでもなく悪いのは僕の方だとすら思う。
なんにせよ、てっしーはそれ以上言い返せなかった。
その資格がないと思ったのだろう。
僕は逆に、友達であるてっしーには誰よりもその資格があると思う。
でも面倒なので口にはしない。
ただ、心の中でごめ~んねと謝っておく。
僕達の友情はそれで問題ない。
てっしーだってめげはしない。
この切り札を切られるのは初めてじゃないのだ。
代わりに精一杯足掻いて見せる。
「だったら! せめてその恰好どうにかしなさいよ! スカート短すぎ! そもそもノーブラとか論外でしょ! そんなの痴漢してって言ってるようなもんだし、普通に犯罪よ!」
「いや、犯罪だったら普通に掴まってるし。ノーブラで上着てなかったらアウトだけど、上着てノーブラはセーフだから」
この世界ではブラは男がつけるものだ。
女の人もつけるけど、そちらは純然たる胸当てで、サポーターと呼ばれている。
見た目も地味で実用一辺倒だ。
お洒落なサポーターをつけるのは女らしくない、男みたいだという風潮がある。
逆に男物のブラはデザイン重視だ。
ぶっちゃけ今では普通に可愛いと思えていてお洒落したい気分の時は普通につけるけど。
最初の頃は男のブラとかバカすぎるだろ! と思っていた時期があったせいでなんとなく今も基本はノーブラで過ごしている。
イメージで言えば前世の女性のノーブラと大差ない。
女子高生の超絶美少女がノーブラで学校に来てると思えば少しはヤバさが伝わるだろう。
僕もちょっとヤバいかなと思いつつ、背の高い女子達が必死になって僕の胸元を覗こうとしてくるのが面白くて止められずにいる。
あれ、マジでバカ。
超面白い。
気付かれてないと思ってる所がマジでアホ。
てっしーですらこうして会話しながらもチラチラ僕の胸元を覗いている。
まぁ、僕だって正面から堂々とてっしーのKカップを眺めてるけど。
表向きは男は女の胸なんか興味ないと思われてる世界なのでなにも言われない。
実際は、この世界の男だって女の胸には興味がある。ただ、それを表に出すのははしたなくて恥ずかしいみたいな空気があるから言わないだけだ。
ていうかてっしーの胸デカすぎでしょ。
このレベルだと流石にこの世界でも巨乳の部類だ。
だってKだよ?
そんなの特殊性癖の世界でしか聞いた事がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。