『お代官さまと、ゆうれいさん』 下のに


 その、あまりにもでっかい大広間の上座には、明らかに見覚えがある人物が、いな、人物とはちょっと思えない証拠に、身体からばんばん湯気が立ち上ぼり、激しい妖気を発散していたのですが、が、いたのであります。


 『あ、あ、あ、あなたは!』


 お代官さまは呻くように言ったのです。


 『ほほほほほほひひひひひひーな。ようよう、分かったかな。我こそは、下総の貴公子、さきの送辞大臣の子孫にして親族、稗田一宝斎正借ヒエダイッポウサイマサカリ。あなたの前任者である。』


 『たしか、正借どのは、次の任地に赴いたが、不正を働き、切腹となったはず。』


 『ははひひひひひひひ。それは、幕府の言い逃れ。実は、大老補佐の中田抜ナカタ ヌキどのによる、策略よ。われは、罪を擦り付けられただけ。うらみ重なる、なかたぬき。あなたは、たしか、なかたぬきの小飼であったな。まずは、きさまを血祭りにし、妖怪となし、われの意思により、なかたぬきにとりつき、滅ぼすべく働け!』


 『桑原桑原。迷惑至極なり。いざ、覚悟せよ、迷える哀れな妖怪よ! 成敗いたす。』



      🙏











      

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『お代官さまと、ゆうれいさん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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