『お代官さまと、ゆうれいさん』 中のいち


 『気を付けろよ。あのばかだいかん、勘はするどいぞな。』


 『あい。あんな棒を持ってくるとは、おもわなんだべ。』


 『しかし、あんさん、なんだか、ずいぶん、鬼火を飛ばしたぞよな。』


 『へ? まだ、一個だけよ。』


 『なに。しかし、見ろよあれ。ほらほら。』


 なんとびっくり、まったく、多数の人魂が、夜空の星のように、次々に屋敷から、踊り出して来たのである。


 『ありゃまあ。あららららららあ。どうなってるだべかあ。』


 『なななななあ? あやあ。くわばらくわばら。なまんだぶつ。なまんだぶつ。』


 その、異様な様子は、お代官さまも見ていたのである。


 『ややややややややあ。こらまた、たくさん、飛ばしたなあ。大方、糸で吊っているかと思ったが、こうなると、なんらか革新的なテクを導入しているな。明らかに、蛍ではないぞ。かなり図太いな。うちの代官所に、そんな逸材がいたのか。これは、迂闊であった。やはり、人は見かけでは判断してはならぬというわけだ。だれだろう。首謀者は。あの、豆まき専門の、時平かな。いやあ、それは、違うな。あいつは、暗がりが嫌いだとか。手代さんかな。しかし、あの人は、なかなか良家の生まれ。上手にやってくれれば、推薦もしようものを。意地悪だが、へんな悪戯はやるまいな。なら、江戸さで、芝居小屋にいたという、ジョージか。ふうん。その線が強そうだ。待て待て。もうちょっと待て。うまく一列に揃った瞬間を狙って一網打尽にしてくれるわ。こちらの提灯は、ただの提灯ではないぞ。ふふふふふ。口を開けると、火炎放射が飛び出す! そら、もうちょい、右だ、あとちょっと、あ、行きすぎだ。ほらほら、ちゃちゃちゃちゃちゃ。ちゃあ。ちゃあ。ちゃあ。軽く左寄りよ。よしよし、いい感じだ。そら、きたぞお。きたぞお。よっしゃ、火炎放射あ〰️〰️〰️〰️』


 提灯の口が、がば、と大口を開くと、『ぶわあ〰️〰️〰️〰️』と、米軍の火炎放射器とはゆかないが、それなりの火柱が、人魂を襲ったのである。

 

    ユッケー🏮≪🔥










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