『お代官さまと、ゆうれいさん』
やましん(テンパー)
『お代官さまと、ゆうれいさん』 上
ある町の、小さな代官所のお代官さまは、気は小さくて、いたって生真面目、ま、出世はおぼつかない人であった。
まあ、そうした家柄ではあったのだが、あまり、高級ではなく、ぎりぎりセーフ、くらいだったのである。
近年は、テレビの影響もあり、お代官さまというと、お菓子に偽装した金貨がだいすきで、『やましんや、おまえもわるよのう。』『いえいえ、お代官さまには及びません。きききききききき〰️〰️〰️〰️。』なんてのが普通みたいであるが、実際にはそういうのは少数派で、また、あまり、高級官僚というわけでもなく、むしろ、中間管理職で、下手すればすぐに左遷されるし、飼い殺しに会うし、まあ、必ずしも楽ではなかったらしい。
こちらの、お代官さまも、かなり、危うい位置にあったのである。
しかし、大人しくて、良心的なため、領民の評判は、あまり悪くはなかったらしい。
まあ、小さな代官所でもあり、職員もわりに少ない。
お代官さまも、じっとしているわけにはゆかない。
なにかと、やっかいなことは、起こるものである。
あるとき、町外れの大きな廃屋敷に、ゆうれいさんがでる。との噂になった。
もともと、ある豪農さんのお屋敷だったが、トラブルが続き、ついに、断絶したのである。
その土地は、一応、遠くの親戚が管理していたらしいが、実態はほったらかしだった。
手代さんが言うに『毎晩、丑三つ時になると、屋敷には怪しい人魂が飛び交い、たまに、肝試しにと、近くの村の若い衆が押し入るが、みな、メンタル的におかしくなってしまう。だれも、近寄らなくなったが、やはり、鬼火は収まらず、ついに、ときには、近くの家にまでも鬼火が出入りするようになり、首をみたとかの話もあり、みな、恐れおののいております。』
『よくある、ゆうれい屋敷話しではありませんか。そういうのは、ありえません。だが、まあ、人心が乱れるのはよくないから、どなたか、それなりの人材に、鎮のお祈りをしてもらいましょうよ。』
『すでに、名高い高僧と、陰陽師により、やりました。』
『はあ。で、効き目は?』
『ありません。まったく。』
『さようか。ま、そうだろなあ。しかし、こまったな。』
『それだけですか?』
『はい?』
『ここは、お代官さま、おん自らのお出ましが必要かと。さすれば、いかなる怨霊といえども、お代官さまのご威光の前には、あえなくも鎮まるかと。ご出世は間違いなく、万々歳となりましょう。』
『あそ?』
『はい。』
実のところ、早めにお代官さまを追い出そうという、策謀があったのである。
仲間内で計画を立てて、お代官さまを悩ませて、左遷か、辞めさせよう、としていたのだ。
どうやら、あまりに真面目すぎて、回りがやりにくかったらしい。
多少の裏金は、ほうきや、ちり取りを買うにも必要だったが、このお代官さまは、そうした細工を認めなかったのである。そうしたものは、自腹で近所の店から買ってきていた。
👻👻👻👻👻👻👻
さて、そこで、嫌だとも言えないので、ある晩のこと、お代官さまは、ひとりでそのかなりぼろぼろになった屋敷に出掛けた。
夕方あたりまでは、近隣の聞き取り調査をした。
そこは、ちゃんと、抜かりなく、手が回っていて、みな、ゆうれいさん話しをする。
『ふうん。ほんまかいな。あやしいなあ。』
ゆうれいさんは、まるきし、信用しないお代官さまである。
しかし、まあ。止めて帰るわけにもゆかない。
屋敷の前に座り込んで、持参した奥方の作った、お弁当をいただきながら、星空を眺めていた。
すると、やがて、丑三つ時になる。
まあ、当時の時間は、相対的なもので、季節によって変わるものだったが、真夜中には違いない。
ぼっ、と。火が灯り、あちこちに動き回る。
『や、出たか。何者かが、やっているに違いない。』
お代官さまは、用意していた、長い竹竿をその方向に回した。
その先っぽには、提灯がふたつ、吊り下げてある。
多少振れても、燃えない構造になっていた。
しかし、なにも、見当たらない。
『けけけ。簡単には見破れまい。』
使用人たちは、暗闇に隠れて、巧みに糸を使ったりして、鬼火をあやつっていた。
その道の、もと、プロもいたのである。
🔥🔥🔥アブナイヨ
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