第4話

━━━


臓物の浮き上がるような感覚に白目ぎみになりつつ、エレベーターを降りる。


隣の彼女も、端末から視線を上げエレベーターを降りてきた。

ニコニコとした顔でこちらの手を取り、


「では行こうか。こっちだよ。ほら早くー」


「そんなに引っ張らなくてもいいですから。」


グイグイと手を引かれて、走るな。と書かれた注意書きの前を通りすぎた。


…元気のいいゴールデンだ。


───


ガチャン。


「ただいまー!…誰もいないけど。」


「お邪魔します。」


鍵を外してドアを開けるや、ポイポイと靴とレインコートを放り投げる。子供か?


かと思えば、靴を脱ぐこちらの方へ来て、しゃがみこむと整え出す。

それからレインコートを鷲掴み、くっきりとした目で見上げながら、


「シャワーはあっちだよ。服は乾燥機に掛けておくよ。」


「あぁ、はい。」


そう言って、喜色のペンキのバケツをひっくり返した顔をすると、


「着替えを用意してくるね~。」


と、走って行ってしまった。


玄関にポツンと残された私は、

戸惑い、困った笑みを滲ませ。


「…元気なことで……ふぅ、コーヒー飲みたい。」


と息を吐いた。

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ココナッツケーキを二人で 瑠璃色の石榴 @Zakuro_8732

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