第3話 帰宅
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ピッ…トトッ、トッ、トッ…トン、トン。
ポン、ピロン、ウィーン…。
「さ、エレベーターはこっちだよ。ちゃんと付いてくるんだ!少年。迷子になるぞ。」
ニカッと擬音が聞こえそうなくらい、喜色満面にキャンバスを彩る会長。
美人は絵になるってホントだな。と思いつつ苦笑いで、
『さすがにそこまで子供ではないですよ。』と返すと、
「あぁ、分かってるよ。ただ、はぐれた入居者ではない人間がいると、下手するとトラブルになりかねないからね。気を付けた方がいい。」
と声音から、おどけた調子を取り除いた答えが来た。
仮に何かあって、真っ先に部外者が疑われるのは、よくあることだろう。面倒ごとに巻き込まれないようにと釘を刺しているのだ。
『あー…それは…気を付けないとですね。』
「うんうん、それとサングラスを用意しておくといい!でないとピカッとして記憶を消されるぞ!」
さっき除いた分も、茶化す風味を添加し、笑顔と言う料理を仕上げる会長。
…会話に映画ネタを入れるのは、よく観ているからなのだろうか?
『じゃあ、コンシェルジュにメダルを渡して、部屋を取った方がイイかもしれませんね。ルームサービス付きで』
瞬きする間に、驚きと、得たりと表情を変化させた会長は、
「いや、変声機で予約をして、ルームサービスを頼もう!お菓子も食べ放題だ!」
そうやって中央ロビーを歩く、
大きな鏡とソファにテーブル、観葉植物に見送られながらエレベーターの前まで来る。
ボタンが押され、扉上部のパネルに数字が表示される。少し時間が掛かりそうである。
『支払いは?』
「パパの魔法のカードで。フフッ」
なんだか楽しくなって投げたボールは、
ニッと悪い笑顔で返された。
「あぁ、そうだ。」
端末を手にした会長が、
「出前でも取ろうかと思うんだが、何かリクエストはあるかい?」
心底楽しいと分かるような顔で問いかけてきた。
『なら…ピザ…ベーコンとホウレン草とチーズのピザと、魚とキノコと玉ねぎのピザで。』
「では、豚肉とトマトとピーマンのピザに…照り焼きチキンと、ポテトに、シーザーサラダとシーフードサラダも頼もう!」
どちらともなく、笑みが溢れた。
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