グーパー

 グーを出し、パーを出し、またグーを出す。


 目の前の赤子は、自分の手が自分の意のままに開くのが面白いと見えて、先ほどからずっとその動作を繰り返している。


 自分はその様子を、頬杖をつきながら眺めている。


「あんなものが、面白いだろうか」


 眺めているうちに赤子の動きにつられて、自分は自分の手に目をやった。


 グーを出す。パーを出す。またグーを出す。


 あるのは確かに自分の手だ。そのまましばらく、意味もなく手の開閉を自分はやった。


 グーを出す。パーを出す。


 自分はその開いた手を、何の気なしに赤子の頭にあてた。赤子は嬉しそうに、無邪気に笑った。


 自分は赤子の頭をなぜてやる。赤子はいよいよ笑う。


「お前もいつかは、人になるのだな」


 自分は頭から手をはなし、グーを作ってから、その手で赤子にまた触れた。

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短編練習 太川るい @asotakeyoshi

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