第3話 俊英会②

「この左翼どもが」


「維新、言い方」


 俺は、やってきたもう一人を見る。やってきたのは、俊英会のトップ4の一人、藤原維新だった。


「うるさい、左翼は左翼だろうが」


「俺達は、あくまで中道左派だよ。まあ、リベラルではあるがな」


「ふん、まあ良い」


 維新は、どうやら俺達に話があるようだ。俺は嫌味をこめて。


「どうした、ネトウヨ?」


「あんなのと一緒にするな。ネットの情報だけを鵜呑みにして、踊らされている馬鹿とは違う」


 ネトウヨ。ネット右翼というやつだった。リベラルと共産主義を同一視する、良く分からない連中だった。共産主義は、コルホーズとか、ソフホーズとか聞いた事があるだろうか? 資本を共同運営所有するという考えだった。まあ、最近の共産国は、ほぼ独裁国家だが。


 そして、共産主義はリベラルかというと、どちらかというと保守主義だった。まあ、意味わからんよね。だけど、ネトウヨは、そういう事も理解しない、ネットで言ってた事が全ての無知なやからだった。


「さすがに言い過ぎだと思うぞ」


「そうですよ〜」


「えっ、口に出してたか?」


「はい」


「そうか」


「そうかじゃねえよ。相変わらず過激だな。我々の軍師様はよ」


「そうですよ〜、過激軍師様ですよ〜」


「はいはい、すみませんね〜」


「でだ、どうするつもりなんだ?」


「何をだ?」


「何をだ? じゃなくて、俺達の考えだよ」


「あん? 考えか〜」


「ああ」


「例えばだ。現在の政治体制を維持しますって言って、受けると思うか?」


「いやっ」


「だったら、国粋主義的に再軍備しますって言えば?」


「嫌ですよ~、せっかくの日本の売りがなくなっちゃいますよ〜」


 そう、意外と世界に対する日本の売りは、平和憲法による、専守防衛だったりするのだ。それでいて、世界7位の軍事力。スイスの永世中立国と同じで、意外と評価が高いのだ。国民には意外と知られていない事実だった。



「だったら、消費税減税はどうだ?」


「みんな喜びますよ〜」


「おいおい、その代わりの財源はどうするんだ?」


「そう、それ。馬鹿な奴らは甘い言葉だけ囁き、その代案を言わない」


「まあな」


「そうですね〜。私だったら、法人税のアップでしょうか?」


「確かにな。だが、それだと、せっかく、法人税下げて、それでも法人税の税収はアップしている。要するに、まあ大手企業の活力はアップしているが、それも法人税をアップすればわからん」


 それでも、日本の法人税は高い方なのだ。国際的な競争力としては、心許ない。


「そうなんですね」


「ああ。だから消費税を下げるなら国債を発行量を増やすとかになる。ただし、世界的に見ても、日本国民の国家予算に対する、財力はでかい」


「それは知ってますよ。大雑把に言えば、中国は国家予算の7割くらいだけど、日本は3倍ってやつですよね?」


「ああ、だから、それらを市場にまわす為に考えられたのがニーサとかイデコだ」


「本当に悪辣……」


「シャラップ。黙れ、これも政策だよ」


「確かにな」


「そうすると、俺達が掲げるのは、将久の言う、小さな政府となるか……」


「ああ。それが一番だよな」


「ほお〜、リベラルをやめるのか?」


「おお、将久」


「源先輩も来られたんですね」


「俺だけ仲間外れは嫌だからな」


 相変わらずの凄いカリスマ性だ。周囲には大勢の俊英会メンバーを率いて、俊英会のリーダー、源将久があらわれた。


 俺は、将久の方を向くと。


「選挙戦に打って出るなら、現在の政党との大きな違いが必要だろ?」


「そうだな。だけど、リベラルを捨てるのか?」


「捨てないよ。ただ、政府でやるんじゃなくて、各都道府県に移行するんだ」


「ふ〜ん」


「分かってないのか?」


「いや、分かっているさ」


「都道府県に大きく権限を移行するんだろ?」


「ああ、保険制度は悩むところだが、福祉や、公共工事は移行する。そして、国会議員の定数や官僚の数を減らして、消費税を都道府県に移管、法人税を減税して世界から誘致する。出来た工業製品や、農業作物は世界に売り込み、さらなる活性化させる」


「おいおいおい」


「橘先輩〜」


「凄え飛躍するな〜」


「都道府県単位なら小回りも効く。税金が高いが福祉制度が充実した都道府県や、税金安いが福祉の充実してない都道府県。買い物は隣の都道府県にとか、移住の活性化も起きて……」


「まあ、それは置いといてだ。わかったよ」


「はい、橘先輩の考え」


「それに俺達の方向性だな」


「ああ」


「主義主張は、痛みを伴う改革」


「消費税、法人税を減らす変わりに個人の責任が増す社会ですか〜」


「そして、小さな政府を目指し、国会議員の定数削減」


「都道府県への権利移管ですね。そこは大きく主張したいです」


「憲法は維持しつつ、自衛隊による専守防衛力は強化する」


「国会議員は、奉仕者であり、国民の為に働くセールスマンでもある」


「まあ、こんな感じか? あまり、一気に決めるのもあれだな」


「ああ」


「だが、良い感じだな。いよいよ選挙戦に……」


「そうなると、政党名だが」


「単純で良いなら、共和党だな」


「え〜、ブランカとかかっこいいのが良いですよ〜」


「純白党とか縁起でもない」


「自由党、民主党、立憲党、全部二番煎じだしな」


「う〜ん、進歩改革党とか?」


「長い」


「そうか?」


「しかし、共和党も古臭い感じがするが……」


「悪かったな」


「まあまあ、政党名はゆっくり考えよう」


「だな」

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