6話 猟犬と仮面バトラー 1/2
晴れた昼下がり。秋晴れという奴だな。
『
「いらっしゃい。今日は一人?私用?」
「私用っすよ」
ウイヒメが急にレイイチ(レイジの兄で破嵐家の現当主)に呼び出しくらったので休みになった。
休みは大好きだが、ウイヒメを一人にするのは不安だ。過保護過ぎるか。レイイチが俺を毛嫌いしてなきゃ付いていくんだが。
「マサトくん、私のカレー好きだよね。私はカレー屋じゃないんだけど……」
このカフェでは常連になるほど注文できなくなるという不条理がまかり通っている。よって俺はカレーを食べることになった。カレー食べに来たことを情報屋に見抜かれたから。
「情報屋じゃないっすか」
「そうだけどさあ」
情報屋のカレーは美味い。実は裏メニューでカツをトッピングしてもらうこともできる(近所の惣菜屋から情報屋が買ったカツをそのまま乗せるだけ)
勝手に出てくるので裏メニューもクソもないんだが。
「チャオ」
薄羽刑事がやってくる。
「チャオ。じゃないっすよ。前のアレなんですか」
薄羽刑事の前に情報屋がカフェオレとカレーを置く。薄羽刑事ってカフェオレ派なのか。
「草加班長か?あの人はキャリアだしストリングスの適合値が高いから多少のめちゃくちゃは許されているんだよ」
適合値。タイムレンズを利用した人体強化システムはタイムレンズとの適合でその出力を変える。適合値が低ければまず装着ができない。適合値が高いほどタイムレンズとそれに合成・融合した概念を有効に利用できる。装着者の時間操作もスムーズになる。
「レイジが生きていた頃、ムイチロウに調べてもらったんすけど、俺の適合値はかなり高いらしいっすよ」
「たぶんお前は特別なんじゃないか?元は組織の関係者だろうし」
タイムレンズと共に砂浜に転がっていたので、レイジに拾われた当初からそう考えられていた。
レイジが監督するということで、警察からも黙認されている。たぶん今も監視されていると思うが。
「カゲロウくん、カレーのおかわりはいる?」
「いいよ」
情報屋は薄羽刑事にカレーのおかわりを勧める。この店にそんなシステムがあったとは知らなかった。
「ストリングスは警視庁が保有していてまともに動く唯一のタイムレンズだ。お前がこの国の治安を脅かしたときのことを考えるのは重要なことだ。だから前の模擬戦も……たぶん必要だった」
俺が砂浜に打ち上がる前後で、先代ストリングスは活動を停止したらしい。そこから最近まで俺が時間怪盗と戦うことのできるただ一人だった。いやレイジも居たか。
「引き分けだったじゃないっすか」
警察が保有する時間怪盗への備えが俺と同等くらいだと不安が残る。どうやら仮面バトラーは組織にも複数居るようだし。
「草加班長はこれからもっと強くなる。だけど今はまだ仮面バトラーレンズが必要だ」
薄羽刑事がカフェオレを飲み切る。
「……だから間違った道を歩くなよ。お前は強いんだから」
そうだな。時間怪盗や組織の仮面バトラーに対抗可能な者は俺と草加しかいない。俺が外道に落ちるとストリングスしか対処できない。
責任が重く、気が滅入る。
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