5話 狼と犬 2/2
俺たちは車で移動した。
草加は一回変身したが、場所移動するのですぐに変身を解除した。何だったんださっきの?
仮面バトラーが殴り合うならばそれなりの広さがいる。
移動先の公園は比較的大きく、野球の試合ができるほどの広さがある。
「都内ってこんな大きな公園あるんですね」
ウイヒメが草加タクミに話しかける。話の通じなさそうな国家権力の仮面バトラーを前にして態度が少し萎縮しているように見える。
「ああ。探した」
草加が答える。
公園の周りには警官隊が配置され、一般人が巻き込まれないようにしている。
公園の周囲を固める警官の中には薄羽刑事もいた。
「草加警部はああいう方なので本気で殴り合った方が賢明だぞ」
薄羽刑事がアドバイスしてくる。他人の苦労なので知らんという気持ちが声色からも隠せていない。
「病み上がりで殴り合うんすか?俺怪我人なんすけど?」
「これからの信頼を勝ち取るためにぶつかり合うと思ってくれ」
薄羽刑事は取り付く島もない態度だ。
俺が怪しげな記憶喪失者だとはいえここまでされるか?普通に会話しろよ草加。
「乾、お互いに装着してから開始しよう」
「怪我しても許してくれよ刑事さん」
「「装着」」
同時に眼鏡が光った。
『適合値:87。結晶装甲、強化スーツ、装着のリクエストを実行します』
『適合値:100。結晶装甲、強化スーツ、装着のリクエストを実行します』
黒くて胸に穴の空いた戦士ストリングスが前に現れる。ストリングスは空の掌を俺に向けた。弦が空中を走る。それを
ストリングスの間合いは俺よりも広い。間合いが相手の方が広いとき、どうするか。とにかく前に進み己の間合いに捉える。
一歩進む度に痛みを感じる。まだ肉が痛む。痛みを感じるのは生の証だ。
剣は手放し、前に進む。腕を伸ばせば届く距離まで進んだ。
拳を相手の胸に叩き込む。二撃。一撃一撃は軽いが人体の急所である
ストリングスは派手に吹っ飛ぶ。仮面バトラー同士で殴り合うとこれだ。狭いと周りが壊れる。
「まだだ!」
ストリングスの弦が俺の腕に巻き付かれている。
弦に引っ張られて俺も体勢を崩し、顔面から地面に叩きつけられる。
「だいたい分かった」
ストリングスの変身が解除され、ただのよく分からない刑事である草加に戻る。
「身体しんどいからもういいっすかね刑事さん」
俺も変身を解除する。 弦を引っ張って根性比べすることもできるが、無駄に疲れるだけだ。
「ストリングスの継承者たる私と貴様は互角。私もまだまだ精進が必要だ。悪事を企むなよ探偵」
草加は自分をストリングスの継承者と評しているが、俺は前のストリングスを知らない。
レイジは知っていたらしいが、もしものときのため、俺に教えなかった。俺が記憶を取り戻したとき、俺が悪であることに備えて。
「俺は探偵じゃなくて探偵助手だ。探偵はウイヒメだ。覚えておけ刑事」
俺は探偵じゃない。探偵助手だ。レイジの後継者であるウイヒメを支え、ウイヒメを守る。
「それが貴様の支え。その支えが正しければ貴様は正道を進めるのか」
ウイヒメに目線を向け、草加は勝手に納得した。
「僕はマサトくんを信じるし、マサトくんの信頼を裏切らないよ」
ウイヒメも誰も彼も俺の周りの人間は記憶を失ったあとの俺しか知らない。記憶を失う前の俺が、周りの人間を失望させるほど悪い人間ではないことを俺も信じたい。
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