4話 蟹と時間怪盗 2/2
情報屋から話を聞いて、『蟹宇宙大将軍』とかいう名前の凄いデカい蟹が屋根の上に乗った店に来た。驚くべきことに駐車場はわりとデカい。
二階に登り、小上がりの席に座っている。出された料理を一通り食べた。
「名前の割に普通に美味しい……」
ウイヒメは普通に喜んでいた。普通といえど、レイジの奴が甘やかしまくっていたので舌が肥えている。普通に美味しいとまで評価が出るということは結構旨い。
「普通に旨いな……」
俺も普通に旨いと言っているが、別に特筆すべきところがないというだけだ。蟹ってこんな味だろうなというものがちゃんと美味しく出てくる。蟹寿司とか蟹の天ぷらとかで。
俺が窓から外の風景を見ていると、車が飛んでくるのが見えた。
「伏せろ!!」
仮面バトラーレンズに変身してウイヒメの上に覆いかぶさる。車の直撃は避けられたが窓ガラスが降り注ぐ。
車が自重で窓から落下し、代わりに前にも見た顔が飛び上がってきた。
「レッド、お前はここで倒す」
テンペストが槍を向けてくる。ここで避けるとウイヒメに当たるので甘んじて受ける。
装甲で受けたのでまだ戦える。支障無し。
「燕返し」
即座に反撃。面と胴に二撃を同時に叩き込む。
面は弾かれたが胴は当てた。
テンペストがたじろいでいる間にウイヒメを逃がす。靴履かせている暇はない。
「逃げろ!」
「うん!」
ウイヒメが走るが、何者かに捕まる。
「チャオ」
黒いスーツの上に半透明で灰色の装甲が装着された者がいる。組織のエージェントだ。
「レッドがたまたま見えたからねぇ。ここで始末しようかなってさ。これも御縁という奴だろうよ」
ヘイズがウイヒメの首に腕を回して拘束する。
「お前はヘイズだな?なんで俺は今名前が分かったんだ?」
何故だか知らないが、俺はこの男のコードネームが分かる。変身した状態で性別が分かるということは俺とコイツに面識があるのか?記憶の扉が少し開きかけている。
「テンペストからは記憶喪失と聞いたが、俺の
ヘイズに注意を向けていたので、テンペストの槍をもろに食らう。
人体が切れたりはしないが、打撃は蓄積されていく。
二対一。相手は仮面バトラー。ウイヒメは人質にされている。万事休すか。
だが、俺はやる。この二人と差し違えてもウイヒメは逃がす。
俺の命よりウイヒメの命の方が重い。俺が俺の命を優先するわけにはいかない。死んだレイジに合わす顔が無い。
「俺はどうなってもいい。ウイヒメを逃がしてくれ」
相手の狙いは俺。そしてウイヒメは関係ないという論を訴える。
「マサトくん!」
床にあぐらをかいて座る。
俺自身が抵抗をやめれば相手は俺を始末するのに集中する。相手はウイヒメを解放してくれるかは賭けになる。賭けに負ければ死に物狂いで逃がすだけだ。何も変わらない。
「ハハハハハッ!大したもんだよお前は!!俺は許す!このガキは見逃す。お前はここで死んどけ」
ヘイズが腹を抱えて爆笑し、ウイヒメを開放する。そのまま
「マサトくん!」
「いいんだ」
仮面越しじゃあ俺の表情は分からないだろうけど、ウイヒメは馬鹿じゃない。逃げてくれるはずだ。逃げてくれるなら俺の生存確率も上がる。
「ヘイズ!」
「いいもの見せてくれたんだ。俺たちも誠意を見せないといけんよ」
テンペストは人質を抱えた状態の方が俺を確実に仕留められると思っていたらしくヘイズにキレている。ヘイズは面白がって油断している。
ウイヒメは逃げて階段を降りている。
油断していない方から始末するか。ヘイズが俺の首をめがけて
俺は飛び上がり、勘でテンペストの槍の上に乗る。
「ハハハッ!嘘だろお前!」
ヘイズはずっと俺の行動で笑っている。
テンペストの槍の上という窮屈な足場で攻撃を叩き込む。俺ならできる。
顔面に回し蹴りを叩き込んだ。
壁を突き破る勢いでテンペストは吹き飛ぶ。これでちょっとはやりやすくなったな。
「これで
「ハハッ!!!お前こんな面白い奴だったんだな、ここで殺さなきゃならんのは残念だ」
ヘイズの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます