4話 蟹と時間怪盗 幕間
天気の良い昼頃。海岸沿いの道には様々な飲食店が見える。そこにテンペストは居た。テンペストの目的は昼食ではなかった。テンペストはある店の敷地に入る。店の屋根には巨大な蟹の看板が乗っていた。その店先にある屋外喫煙室(という名前の灰皿と椅子が置かれただけのスペース)に奇妙な人影があった。
「テンペスト、ちょっと隣座れよ」
呼びかけてきた者は灰色の装甲を身に纏っていた。半透明の灰色の装甲が白いスーツの上に装着されている。白い仮面には赤いレンズが嵌められている。組織のエージェントだ。
「目立たないか?ヘイズ」
テンペストはこの灰色のエージェントをヘイズと呼んだ。テンペストとヘイズでは、ヘイズの方が先任ではある。だが、お互いに対等という意識があった。あるいはライバル意識か。
「俺のタイムレンズは光を曲げる力を持つ。お前以外からは見えない調整をしているわけよ。お前も知っているだろ?」
ヘイズはその名の通り、陽炎のようにそこに在りそこに居ない。
「それで何の用だ?ワタシはここの店長を時間怪盗にするつもりなんだが」
「見れば分かるだろ?バッティングだ」
ヘイズは指先を店内に向けた。窓ガラスからは店内の様子が見える。
中折れハットを被った髪の長い男とセミロングに赤いカチューシャを付けた少女。乾マサトと破嵐ウイヒメだ。マサトはワイシャツにジャケットを羽織るというスタイルを基本的に崩すつもりがなく、休日でもそのような格好をしている。ここ最近は気温も低くなってきたのでジャケットの下にベストを着ている。
ウイヒメは仕事時はオーダーメイドのスーツ(パンツルック)だが、休日ではフォーマルな格好をしていない。今日は薄いグレーのセーターにチェック柄のハイウエストスカートだ。
「せっかくだし二人掛かりでレッドを倒すぞ」
「ああ……確かに時間怪盗を作るよりもその方が優先だな」
『適合値:72。結晶装甲、強化スーツ、装着のリクエストを実行します』
テンペストは椅子から立ち上がり、変身した。
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