3話 都市伝説と時間怪盗 1/2
天気が良く、一切依頼人の気配が無いのでそろそろ車庫の整理でもしようと思った。掃除は好きだ。仕事時間の暇を潰せる。
「ウイヒメ、
我らが破嵐探偵事務所の裏手には車庫があり、車とバイクと表道具が仕舞われている。表道具というのは俺の仮面バトラーレンズとしての活動を支える武器のことだ。だいたい俺と一緒に浜辺に流れついたものだがその後の活動で増えたものもある。最近使ってないが。
剣が前に置いた場所から無くなっている。何処だ。
「僕が持っているよ」
ウイヒメがツナギに着替えていて極彩色の刃を厚手の革手袋越しに持っていた。つまりは
「ムイチロウの爺しか直せないものかと思ったができるんだな」
破嵐ムイチロウはウイヒメの祖父、レイジの父である。破嵐家の当主として経営者をしていたが、最近引退して研究活動に戻った。天が二つ以上の才能を与えた例である。おそらく奴の一番の発明は時間硝子だろう。時間を観測するという一見何の役にも立たないものだが。
ムイチロウは時間硝子の開発者であるため、公安から監視されている。時間怪盗は時間硝子を明らかに応用した技術に身を包んでいるからな。だが、破嵐家の活動をどう調べても時間怪盗に繋がるあらゆる形跡が無かった。なので公安も監視しかできない。
その関係で俺のタイムレンズや
「お祖父様から整備マニュアルもらっていてね。やれる気がしたんだ。ちょっと振り回してみて」
ウイヒメから
「動作確認はするわけにはいかんが、とりあえず振り回せるくらいに直っている」
「やった!これからは僕が武器を整備するよ」
「雇用主にそこまでやらせるのは気が引けるが、頼む」
ムイチロウの書いた整備マニュアルは俺では全然読めないので、気が引けるがウイヒメに整備任せるしかないか。
電話が鳴った。
「俺の電話だ」
俺とウイヒメの携帯電話の着信音は同じなので、紛らわしい。
情報屋からか。
「はい、乾です」
「マサトくん、なんか『くねくね』出てきたんだけど見に行ってくれない?」
『くねくね』。俺でも知っている都市伝説の怪異だな。精神汚染をしてくると有名だが、千里眼で見たはずの情報屋は正気そうだ。
「それって依頼ですか?」
情報屋と我ら破嵐探偵事務所は持ちつ持たれつの関係で、情報屋から頼みごとをされることもある。
「うん。仕事。こっちも直視しないように見ているんだけど、『くねくね』が常時見えるから辛い。早く倒して」
千里眼持ちには千里眼持ちの辛さがあるんだなと思った。
というか『くねくね』を直視して大丈夫なのか?
『くねくね』の場所を聞き、情報屋からの電話を切る。
「『くねくね』を倒してくる」
「これも持っていって。素手で戦うよりやりやすくなるよ」
ウイヒメから
「ありがとう。行ってくる」
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