第11話 サグルと『撮れ高』とワイトキング②
ミリアとワイトナイトの戦いはミリアが制し、それにより数の利はSAGURU TVに移った。
「サグル君!!」
ミリアが踵を返してサグルの方を向く、するとサグルは未だにワイトキングの苛烈な攻撃に防戦一方となっていた。
【ミリアちゃん助けてやって】
【サグルに助太刀だ】
【二人がかりならいけるはず】
「言われなくとも助けます!!」
言ってミリアはサグルの助太刀に出るべく大戦斧を構え直してワイトキングへ接近し、上段からの大振りの一撃を放つ。
「どおぉっせいやあああ!!」
しかし、その一撃はワイトキングに察知され、バックステップにより避けられてしまう。が、それこそがミリアが狙っていた状況、ひとまずワイトキングとサグルを分断し、サグルに一息入れさせるのが狙いであった。
「サンキューミリアさん」
「何のこれしき。サグル君、それでご感想は?」
「強い、正直言って俺一人だったら詰んでたわ」
「でも私と二人なら」
勝てる。サグルはそう言いたいところは山々であったがその正直な性格から冗談でも楽観的な言葉を言えなかった。
「…………」
「黙らないで下さい。隊長なら隊長らしくここは隊員を励まして鼓舞するところでしょう」
「したいのは山々なんだけ――ど!?」
言いながらサグルは再び攻撃を仕掛けてきたワイトキングからの攻撃をネクローシスで受け止め、そこへ間髪入れずミリアがワイトキングへ連続攻撃をするもその全てを避け、さばき、受けきられる。
「ああもう!当たらない!!」
悪態をつくミリアを横目にサグルは考える。このままではマズイ、何か手を考えなければいずれ二人ともスタミナが尽きてやられてしまう。それだけは絶対に避けなければ。正直パーティーの人数もJobも装備も少ないサグルたちに取れる行動は多くない。
強力なスキルである『数は力也』も現状の強化量ではまだまだワイトキングのステータスには及ばないし、ミリアの非常識な攻撃力も当たらなければどうと言うこともない。で、あれば残された手札は何がある?
サグルはミリアと共にワイトキングと戦いながら必死に考えを巡らせる。そしてふとした瞬間、サグルの目にそのアイテムが視界に入った。
「ミリアさん」
「なんですサグル君」
「この勝負勝てるかもしれない」
「勝てるかもってサグル君負けるつもりだったんですか?」
ミリアがムッとした表情でサグルを見る。
「ごめんゴメン言い方が悪かった。この勝負の勝ち筋が見えたんだよ」
「それで、その勝ち筋とやらはどのような物なんです?」
「それはコイツを使うのさ」
そう言ってサグルは左腕に装備していた『赤き奔流の腕輪』をミリアに見せる。
「それは……確かサグル君がスケルトンナイトを倒した時に手に入れたとか言ってた」
「そう、『赤き奔流の腕輪』コイツに魔力を注ぐと装備者のステータスが強化されるっていう装備なんだ」
「つまり、サグル君はその装備を使ってサグル君自身を強化してワイトキングを倒そうって言うんですね」
「まあ、そんなとこ、だけどそれだけじゃ多分攻撃力がまだ足りない。だから――」
サグルはそう言ってミリアに何やら耳打ちする。
【オイオイ近づきすぎ】
【離れろサグル!!】
【ミリアちゃんに近づくな!】
【絞めるぞコラ】
何やらリスナーが騒いでいるがサグルたちは気にしない。それはそうだ自分たちの命が懸かっているのだから。
「わかりましたサグル君、その手でいきましょう」
「ああ、それじゃあ作戦開始だ」
サグルがそう言うと同時、ミリアはサグルの後方へ後退、サグルは左腕に装備した『赤き奔流の腕輪』を前にかざして腕輪に魔力を流す。
サグルは今回初めて魔力を使用したのだが魔力の使用方法についてはゴライアスにてリリィからレクチャーを受けていた。このダンジョンのある世界に来た者は皆魔力に目覚めること、目覚めた魔力には個人差があること、そして、サグルはその時に気づいたのだ『配信者』のスキル『数は力也』の効果範囲に自身の魔力――MPまでもが含まれていることに。
サグルの周囲にスケルトンナイトの時と同じく赤い魔力の奔流が現れサグルの体を包み込む。
『赤き奔流の腕輪』の効果は30秒間魔力の使用量に応じてステータスを強化するというもの、そして今回サグルが使用した魔力の量は自身の保有魔力全て、つまりサグルに次は存在しない。一か八かの大勝負に出たのだ。そして、
「うおおおお!!」
運のかかった行動には全て『撮れ高』の効果が反映される。つまり、赤き奔流の腕輪の強化量にも『撮れ高』の効果が反映されるということ。それにより『赤き奔流の腕輪』はオーバーフロー状態を引き起こし――
通常使用時以上の効果量を発揮、更にサグルは傍らに置かれていたミリアの大戦斧をその余りある攻撃力を用いて片手で拾うと、右手にネクローシス、左手に大戦斧という異色の二刀流でワイトキングに突進する。
「―――」
サグルを危険と判断したワイトキングはここで初めて魔力の塊のような波濤をサグルに向けて発射。が、しかしその波濤はサグルの持つ大戦斧が両断し、サグルはネクローシスによる一閃をワイトキングに喰らわせる。
「―――!?」
ここにきて初めてのワイトキングの声にならない苦悶の叫び。サグルはここぞとばかりに攻め立てる。何せ時間が30秒しかないのだここでワイトキングを倒しきらなければ、自分たちのが負けてしまう。
それだけはしない、させない、させてはならない。
後はどうなっても良い。その覚悟でもってサグルは鬼神の如き形相でワイトキングを攻め立てる。が、効果時間残り5秒、ワイトキングの残り体力残りわずか5%をもってオーバーフロー状態の『赤き奔流の腕輪』が砕け散った。
「な!?」
【サグル!?】
【サグル!?】
【!?】
【!?】
腕輪が砕け散ると同時、『赤き奔流の腕輪』はその効果を失い、サグルにかかっていたバフが消滅、それによりサグルは急な脱力感に見舞われ崩れるようにその場に倒れ込む。
もうダメなのか?俺はここで終わりなのか?皆ごめん。様々な感情、思いが去来し、サグルが完全に倒れてしまう寸前、女神フェイスレスのサグルのことを嘲るような笑みがサグルの脳裏を過った。
「――かよ」
【サグル】
【サグル】
【サグル】
【サグル!!】
「誰が諦めてたまるかってんだゴラァ!!」
【行け!】
【行け!】
【行け!!】
【いっけーーーー!!】
サグルは残った全ての力を振り絞り無理矢理大戦斧を振り上げる。ブチブチという腕の筋繊維が千切れる音が聞こえる。しかし、今はそんなことはどうでもよい。ただコイツを、目の前のワイトキングさえ倒せればそれで良い。
その一心のみでサグルは最後の一撃を放った。
「―――――――――――!?」
サグルの最後の一撃によりワイトキングは真っ二つ切り裂かれ、絶命。ここにサグルの勝利がきまった。
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