第9話 サグルとボスと『撮れ高』
「すまなかったな皆、それでこれからのことなんだけど俺とミリアさんはレベル的には十分に育っていると言える。だからこれから第10階層のボスに挑みたいと思う」
サグルはミリアのとの直前の話し合いの結果、先ほどまでの変調については公言しないことに決め、そのまま配信をすることに決め、視聴者もその事については追求はしないようだ。
【お、ついにか】
【二人ならやれるよ】
【勝てる】
【死ぬなよ】
「それで皆さんに相談なんですけど、皆さんが知ってるスケルトンキングの情報について教えてもらえますか?私だけの知識だとなんか心配なんですよね」
ペコリとサグルの配信ウィンドウに向けて頭も下げるミリア。
【俺が知ってるのはミリアちゃんと対して変わらないな】
【俺も】
【中層あたりまでは皆上級者パワーで押し切るからなあ】
【俺が知ってるのはスケルトンキングは遠距離タイプだから接近戦にメチャクチャ弱いってことくらいかな】
「それです!!」
ミリアは配信ウィンドウのコメントを力強く指差す。
「それって?」
「スケルトンキングの特性ですよ。スケルトンキングは遠距離タイプだから接近戦に持ち込めば有利に戦えます」
ドヤ顔で自慢げに説明するミリア。が、
「でも俺らってどっちも接近戦タイプだから最初から遠距離攻撃の選択肢ってなくない?」
「う……」
【正論パンチ】
【正論パンチやめろよ】
【ミリアちゃんが可愛そうにだろ!!】
【正論パンチww】
「そ、そ、そ、そ、それでも!!スケルトンキングに対して有利が取れることがわかったんですから心の余裕に繋がります」
「それは……まあ?」
「でしょう?」
よく分からない理由でサグルを納得させたミリアの顔は真っ赤に染まっていた。
そして、二人がダンジョンアビスホール第10層のボス部屋の前まで来ると、
「ミリアさん、作戦は初っ端からミリアさんの『挑発』スキルを使ってスケルトンキングの召喚した手下のヘイトをミリアさんに集中させて、その間に俺がスケルトンキング本体を倒すっていう作戦でいいね」
「はい!!」
【ドキドキ】
【ドキドキ】
【ドキドキ】
【トゥンク】
二人の緊張が高まる中、サグルは第10層ボス部屋の扉をゆっくりと開く。するとボス部屋の最奥に王冠をか冠した人骨――スケルトンキングが待ち構えていた。
「ミリアさんまだだよ『挑発』を使うのはアイツが手下を召喚してからだ」
「はい、わかってます」
スケルトンキングは動かない。そこで二人はスケルトンキングとの距離を詰めつつ警戒は怠らない。そして二人とスケルトンキングの距離が30メートル程になったその時であった。スケルトンキングの眼窩が怪しく光りその手をサグルの方に伸ばしたのだ。
「!?ミリアさん、『挑発』だ!!」
「え…でも……」
「いいから早く!!」
「わ…わかりました『挑発』!!」
瞬間。スケルトンキングの手の向きがサグルからミリアの方に変更され、ミリアの足元に魔方陣が展開。その魔方陣からスケルトン型のモンスターが召喚され、ミリアの足にしがみついた。
「ちょ、え!?召喚って、こんな方法で!?」
予想外の召喚方法ミリアは戸惑うが、一足早くそれに気づいていたサグルは冷静だ。
「ミリアさん予定どおりスケルトンキングの相手は俺がするからソイツらのことは任せた」
「え!?ちょ、待って、どこ触ってんのよこのクソ骨ども!!」
言ってミリアは自身のストレージにしまっていた大戦斧を抜くと、斧の石突き部分を石畳に叩きつけて地面を破壊それと同時にその場を脱する。
「っと、ひーふーみー、げ、まだ4体もいる。まあ、私の敵じゃないけど、ね!!」
場面変わってこちらはスケルトンキング対サグルの戦い。そしてこちらはミリアとは違い至って想定通りの展開が繰り広げられていた。
「危ね!!」
スケルトンキングに接近するためにスケルトンキングの放つ火球の魔法を避け続けるサグルは、徐々に徐々にではあるがスケルトンキングを自身の間合いに納めかけていた。
「クソ、コイツにMP 切れはないのか?」
そういえばRPGのボスにもMP切れを起こす奴はいなかったよなあ、なんてことを思いながらスケルトンキングに接近するサグル、案外余裕がありそうだ。かが、下手に戦闘を長引かせては4対1で戦っているミリアにもしものことがあってはいけない。ここは可能な限り最速でスケルトンキングを倒す必要がある。ならば……
サグルは自身のスピードを一段階上げてスケルトンキングに向けて疾走、スケルトンキングを自身の間合いに入れるとネクローシスによる一撃をスケルトンキングに与えることに成功する。
「よし!!」
するとスケルトンキングはその場から逃げるようにサグルとの距離を取ろうとする。が、当然そんなことはサグルも予想済み、自身の間合いから逃すまいとスケルトンキング逃げる先に回り込み再びネクローシスによる一撃を放つ。
「――――!?」
「よし!この調子なら勝てる」
スケルトンキングにはスケルトンナイトの時のような2段階目は存在しない。このままの調子で攻撃を続けることが出来たのなら確実に勝利を納めることが出来るだろう。
勝利を確信したサグルは手抜かりなく着々と攻撃を重ねてスケルトンキングにダメージを与えて行く。そして、
「これで最後だ!!」
サグルの渾身の一撃がスケルトンキングを捉えスケルトンキングのHPを0にする。それと同時にミリアが相対していた配下のモンスターが消え去ってゆく
「やりましたねサグル君!」
【うおっしゃあああああ】
【楽勝】
【楽勝】
【完全勝利】
ミリアがサグルのもとに駆けつけ、コメント欄も大盛り上がり。サグルも勝利の余韻に、浸っている。と、
「何だ?」
サグルの視線の先、スケルトンキングの死骸がスケルトンナイトの時のように消えずに残っている。
「サグル君どうしたのですか?」
「いや、スケルトンキングの死骸が消えないのが気になって……」
「ああ!それはスケルトンキングには特殊な死亡演出があるからですね」
【そうだぞサグル】
【演出待ちだ】
【演出だ、演出】
「ゲームでもないのに演出?」
サグルがそう言うと、スケルトンキングの死骸がおびただしいほどの赤い魔力の奔流に包まれる。
「なんだ!?」
「サグル君、あれがスケルトンキングの死亡演出なんです」
「あれが?」
サグルの目にはどこからどう見ても死亡演出には見えなかった。これはどちらかと言えばその逆、スケルトンナイトの時と同じような現象だ。
この場合確かにサグルの反応が普通の反応である。だというのにサグル以外の者にはそれがわからなかった。理由は簡単、それは事前知識があったから、スケルトンキングは死亡の際に派手な演出を行うという知識がそれを邪魔したのだ。何を?疑うことをだ。
スケルトンキングは確かに死亡の際に派手な演出らしきものを行う。しかし、それは決してただの演出などではない。それはとあるアイテムを使用した際の現象であった。そのアイテムの名は進化の宝珠。使用したモンスターの命と引き換えに極低確率で使用したモンスターを進化させるというアイテムであった。
そしてその極低確率という確率はサグルの持つスキル『撮れ高』の対象となる。では、この場合の『撮れ高』とは何か?それは当然
「―――――!!」
スケルトンキングが進化することである。
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