第二章 サグルとミリアと脳筋『戦士』
第6話 サグルと美少女と新たな出会い
そんなこんなでサグルはlevel11、Job『配信者』ランク2、保有スキル『数は力也』『撮れ高』となり、ゴライアスの街での滞在資金を稼ぐために再びダンジョンに訪れていた。
「まあ、やることっつっても前と同じでひたすらにモンスターを刈るだけなんだけどな」
【浅い層とはいえ素材も旨いしな】
【え?そんだけ?】
【なんか面白いことしようぜ】
【まあ、そんなもんか】
「それじゃあダンジョン探索と参りますか!!」
言ってサグルはダンジョン探索に移行し、第1層から隅々まで探索、見つけたモンスターはスケルトンナイト戦で手に入れた『赤き骸剣ネクローシス』でもって次々と撃破。死骸の山を築いてはストレージに収納を繰り返し、第8層に差し掛かったその時、
「きゃー!?」
若い女性の悲鳴が聞こえてくる。
「なんだ!?」
【どうした!?】
【悲鳴】
【手本のような悲鳴だ】
【急げサグル、撮れ高だ】
言われる前にサグルは反射的に動きだし、悲鳴の聞こえた方へ向かうと、一人の女子学生らしき女性が4体ものスケルトンに襲われていた。
【危ない】
【助けろサグル】
【撮れ高キター】
「言われなくても!!」
サグルはそう言うとネクローシスを抜剣し、スケル4体をあっという間に倒してみせる。
【はい、ここでキメゼリフ】
「言わねぇよ、何だよキメゼリフってのはよ!!」
【か~わかってねぇなお前は】
【わかってない】
【わかってない】
そんなやり取りをサグルとリスナーたちが繰り広げていると、
「あ、あの……」
「ん?」
助けた少女がおずおずとサグルに向けて声をかけてくる。少女は美しい金髪と碧眼を持ち、その金髪をサイドテールにした、サグルと同年代くらいの美少女と言っても差し支えのない少女であった。
【美少女降臨】
【キター】
【キターーーーーー】
【カワイーーー】
サグルはなにやら沸き立つコメント欄は無視して少女に向かって、
「大丈夫か?」
そう言って少女にその手を差し出す。すると少女も差し出された手を取り、サグルに体を引っ張り上げられる形で立ち上がる。
「すみせん。危ないところを助けてもらってありがとうございます」
少女はそう言いながらペコリと頭を下げる。
「君、どう見ても新人探索者だよね。それなのにどうしてこんなところにいるんだい?」
「それは……あのクソ……が……」
少女の口からは出てきそうにない言葉が出てきて、怪訝な表情を向けるサグル。
「クソ?」
「ああいえ、あの
どうやら彼女もサグルと同じ女神様の被害者らしい。
「なるほど、君もアイツの被害者か……」
サグルは慎重に女神の呪いに引っ掛からないように言葉を選んで発言したのだが
【女神って何?】
【女神って何ぞ?】
となぜかコメント欄には女神のことが伝わっているではないか
「何でめ――」
そのコメントを見て思わずサグルが女神と言うワードを使おうとすると例の如く強制的に黙らされてしまう。
「あ、それたぶん私です。私が女神様って口にしたからそれが貴方の配信にのっちゃったんだと思います」
「え?君はアイツから呪いを受けていないのか?」
「呪い?呪いってなんのことです?」
「どうやら君は他の探索者とは違うみたいだな――俺の名前はサグルって言うんだけど、君の名前を聞いてもいいかな?」
「あ、えっと……私の名前は神裂ミリアって言います。どうぞよろしく」
【ナルホドミリアたんか】
【可愛い】
【かわいい】
【ミリアたんかわいい】
「あ……コイツらの存在を忘れてたわ。すまないミリアさん。俺、実は配信してて君の名前が全世界に流れちゃったみたいだ」
サグルは拝むように両手を合わせて謝る。と、ミリアは何でもない風の顔で
「あ、私その辺はあまり気にしないので全然大丈夫です」
と自身が全世界に配信にされていることを特に気にしていない様子である。
【よかったなサグル心の広い娘で】
【心広すぎん?】
【女神か?】
【女神に見えてきた】
【女神にと言えばミリアちゃんがなんか言ってたな】
なぜミリアだけ女神の呪いがかけられていないのか、その理由はわからないが、もしかしたら打倒女神派にとって切り札になるのかもしれない。そう考えたサグルはミリアに提案する。
「えっと……神裂さん」
「そういえばサグル君のサグルって名前ですよね」
「?そうだけど」
「だったら私のこともミリアって名前で読んでください。その方が公平です」
「だったら……ミリアさん?」
「何でしょうサグル君」
「ちょっと俺から俺からお願いがあるんだけど聞いてくれるかな?」
「サグル君は命の恩人ですし、私の出来る範囲であれば」
「突然言うのもなんだけど、俺のパーティメンバーになってくれないか?」
「はい、別に構いませんよ」
「軽!?意味わかってて言ってる?」
「これでもダンジョン配信には詳しいんです。だからサグルの言葉の意味も重さもわかってますよ」
「そうか、それならいいんだけど……」
【サグルに仲間が加わった】
【しかもかわいい】
【許すまじサグル】
【畜生俺もそのパーティーに入れろ!!】
【オメ】
【おめでとう】
ミリアがサグルのパーティーに加わったことによりコメント欄は大盛り上がり。そんなコメント欄をミリアの目から隠しつつ、サグルはミリアに右手を差し出した。
「と、兎に角これからよろしくミリアさん」
「はい、サグル君」
2人は握手を交わし、めでたくパーティーが結成されるのであった。
「ところでミリアさん」
「何でしょうサグル君」
「ミリアさんはダンジョンにそのまま転移させられたんだよね」
「はい、あのクソババア私の何が気に入らなかったのか突然私を訳のわからない場所に召喚して「お前からすべてを奪ってやる」なんて言って、私をここに送り込んだんです」
「そうなんだ……ん?今クソババアって言った?」
「言いましたが何か?」
「それってアイツのことだよね」
「アイツって女神のことですよ」
「クソババア」
「はい、女神のクソババアです」
そう言って屈託のない笑顔をサグルに向けるミリアにサグルは何か言い知れない恐怖を感じた。
【だーかーらーその女神って何なん?】
【教えろ】
【教えろ】
リスナーが女神のことについて気にし始め、サグルはどうしたものかと考え込む。女神はどういうわけか自身に関する情報がサグルの元いた世界に漏れることを極端に嫌っている。と、なれば女神への意趣返しとしてここで女神のことをバラすのも良いかもしれない。
しかし、それは女神の存在を知った者たちを危険にさらす恐れが大いにある。ましてやサグルのチャンネルの現在の視聴者数は100名に満たない。これぐらいの人数ならば全員が女神の手にかけられてもおかしくないのだ。故にサグルは関係のない人間が自身の状況に巻き込まれることを嫌い、これ以上女神への言及を避けることに決めた。
「ごめん皆、そいつのことについては気になるだろうけど、俺やミリアさんの口からこれ以上の説明は出来ない。ここはなんとかわかってくれないか」
そう言ってサグルは配信ウインドウに向かって深く頭を下げる。そんなサグルの姿を見てリスナーからは
【まあ、そこまで言うのなら】
【言うてそこまで気になってる訳じゃないしな】
【良いから教えろ】
【もっとミリアたんを写せ】
【サグルの好きにすると良いよ】
とおおむね好意的な意見が大半を占めていた。
「ありがとな皆、ミリアさんもそれで良いかな」
「私も問題はありませんです。むしろあのババアのことを思い出さずにすんでせいせいします」
あまりにはっきりとした物言いにサグルは苦笑しつつミリアに質問を続ける。
「ミリアさんが初期状態でここに居るってことは俺の時と同じように数日分の食料と調理用ナイフしか持ってないってことだよね」
「?いいえ、私は何も持ってないですよ」
「は?」
「だから何も持っていないと言っているんです。なんなら確認して見ますか?」
言ってミリアは自身のウインドウを操作してストレージ画面を表示させ、その画面をサグルに見せる。サグルが表示された画面を確認するとミリアの言う通り武器はおろか食料の類いすら存在していなかった。
「本当はこれ見よがしに石ころだけがあったんですけどね。流石にムカついてさっきのモンスターに投げつけてやりましたよ」
「あ、そう……」
だとしたら女神のヤツは明確な殺意を持ってミリアをダンジョンに送り込んだことになる。ならばなぜこんな遠回しな方法で?ミリアの苦しむ顔が見たかったから?サグルの頭に様々な思考が去来するがどれも決め手に欠けこれが正解とはっきり決められない。
「それと私だけなのか配信が出来ないんですよ。なんでですかねぇ」
「配信が?」
「はい、ホラ、配信画面に移行するボタンが存在しないんですよ」
「うわ、本当だ。マジでボタンがない」
となれば、女神の奴がミリアをダンジョンのモンスターを使って人知れずに殺そうとしたことは間違いようのない事実ということになる。
それはすなわち、
「もしかしたらアイツは直接的に俺たちに手を下せないのか?」
「そうかもしれませんね。だからなぜか知らないけどアノクソババアに嫌われている私が今も生きている」
「因にだけどミリアさんがアイツに嫌われている理由ってわかるかな?」
「それはもちろん私があまりにも可愛すぎるからでしょう」
そう言ったミリアの顔は真剣そのものだ。
「は?」
「だって見てくださいよこの顔面にこのプロポーション。そこいらのアイドルよりも可愛くないですか?」
「いや、同意を求められても……」
【可愛い】
【かわいい】
【カワイイ】
【可愛すぎ】
「ホラ、リスナーの皆さんもそう言ってます。イヤーヤッパリ絶世の美少女ともなると女神の不興を買っちゃうものなんですよ」
「あ、他人の配信は見れるのね。というか良く俺の配信見つけられたね」
「割りと簡単でしたよ。それにしてもサグル君、チャンネル開始2週間で登録者数1000人越えとか無所属なのに凄いんですね」
「あ、そう?」
ミリアの言葉にサグルは満更でもなさそうな顔をする。
「それじゃあチームSAGURU TV登録者数1億人目指して頑張りましょう!!」
【オー】
【オー】
【おー】
【おー】
【オー】
こうしてサグルに新たな仲間が加わったのであった。
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