第4話 ダンジョン街ゴライアス①

「そんじゃあまあダンジョン脱出と行きますか!!」


 サグルはスケルトンナイト戦で勝利を治めるとボス部屋を後にして一路ダンジョン脱出に向けて動き出す。

 1層から5層までのダンジョンはサグルがこれまでマラソンし続けてきた6層から10層に比べるとモンスターの強さやマップの複雑さが比較的簡素なものになる。故に6層から10層を隅々まで知り尽くしたサグルにとって5層から1層までの道のりは肩透かしを喰らったと錯覚するほどに容易なものとなっていた。

 そしてサグルはついに1層の出入口、つまりダンジョンの出入口に到着したのだった。


「ようやく、ようやく街に戻れる」

【良かったな】

【長かったな】

【ここまで大変だった】

【ダンジョンの出口ってこんなに遠いものだったんだな】


 サグルもリスナーもこれまでの道のりを思い出し感慨に耽っている。


「それじゃあ、出るぜ」


 サグルはそう言ってダンジョンの扉の前に立つと扉が自動的に動き出し解放される。そして、スグルは一歩また一歩ダンジョンの外に向かって歩み、体全体が完全にダンジョンの外に出た瞬間、両手を天高く挙げて、


「出ーたーぞー!!!!」


とダンジョンからの脱出を心から喜ぶのであった。


【うおおおおおおおお!!】

【うおおおおおおお!】

【出たー!!】

【脱出完了】

【よっしゃーーー!】


 リスナーたちもサグルはの脱出を心から喜んでいる。


「いやー一時はどうなるかと思ったけど皆のお陰でなんとかなったよ。本当にありがとう」


 素直にリスナーに対して感謝を述べるサグルに、リスナーたちは、


【お、おう】

【お、おう】

【おっふ】


と照れたような満更でもないような反応をしている。そんなリスナーたちにサグルは


「なんだそれ」


と笑って返す。


「それじゃあ後はゴライアスに向かおうと思うんだが……例によって道が分からんから誰か教えてくれ」

【街道沿いを真っ直ぐだよ】

【すぐ近くにあるぞ】

【すぐつく距離のはず】

「わかったそれじゃあ街道に沿って向かうことにするよ」


 サグルはリスナーの指示通りに街道沿いを歩いて行くと10分も歩かないうちに巨大な門が見えてきた。


「デッケー!?あれがゴライアスの門か?」


 サグルがそう言ってリスナーの反応を見ようと配信ウインドウを見るといつの間にやら配信が切られていることに気付く。


「あれ?おかしいな、いつの間に配信が切られたんだろう」


 サグルがそう言いながら四苦八苦していると、その姿を見かねた門番がサグルの元に近づいてくる。


「オイ兄ちゃん。このゴライアスとその周辺は配信禁止区域になってるんだよ。だからいくらウィンドウを操作しても意味ないぞ」

「え?そうなんですか」

「そうそう、だからもう一度配信したいんだったらもう少し街から離れたところでするんだな」

「わかりました。ありがとうございます」


 サグルは門番に礼を言うと、門番は片手を挙げてそれに応じて自身の仕事に就く。


「なるほどゴライアスでは配信が出来ないと……」


 サグルはそのことを記憶に刻み付けると再び配信をすべきか迷い、


「一応筋は通さないとな」


 そう言って再び配信を開始するべくゴライアス街から少し離れた場所に移動する。そして配信ウインドウを操作して自身の配信を着ける。

 すると前に配信を切られてからそう間が空いていないからか再びリスナーが集まりだす。


「え~よしよし、皆集まったな。さっきは悪かったな。ゴライアスじゃ配信できないって知らなかったんだ」

【え、そんなことも知らなかったのか?】

【道理でどんどん先に進むわけだ】

【でも知らなかったのならしょうがないわな】

【草】

【それでどしたん?】

「あ~いや、俺はこれからゴライアスに入って何日間か過ごす予定だからな。一応その前に挨拶しとこうと思ってな」

【どのくらい休むの?】

【しっかり休めよ】

【次の配信日決めるべ】

【早い方がいいな】

「ここじゃ動画配信以外のSNS が使えないからな、他の人たちはどうしてるんだ?」

【配信予告機能を使ってるよ】

【予告機能】

【そうだな】

「はえ~そんな機能まであるんだな、それじゃあ俺もその機能を使うから待ってくれ」

【わかった】

【それじゃあな】

【りょーかい】

【しっかり休めよ】

「それじゃあまたな」


 言ってサグルは配信画面を切る。そして再びゴライアスの門に向かって歩き始めた。


「あ、いた、おーい」


 サグルはゴライアスの門に着くと門兵に向かって手を振る。


「何だ兄ちゃん、どうした?」

「いや、さっきは本当に助かりました。ありがとうございます」

「何だお前さんそんなことをわざわざ言いに来たのか?」

「一応筋は通しとかないとと思いまして」


 サグルがそう言うと門番は破顔してサグルの背中をバンバンと何度も叩く。


「なんだお前さん。今時珍しい奴だな。よし、なんか困ったことがあんなら俺になんでも聞きな」

「――何でも聞いていいんですよね」

「おう!何でもいいぞ」

「それなら……」


 サグルは意を決して口を開く


「女神の居場所なんて知らないですかね」

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