第2話 一ノ瀬莉子 告られる(中編)
翌日の朝。教室で自分の席についた私はカバンから教科書を取り出して机の中に入れ、机の上に筆箱を出して一限目の授業の準備をしていた。なんか視線を感じてそっと周囲に視線をめぐらせる。男子の集団の中にいる中山君と目が合った。彼はじっと私を見つめて何か言いたそうにしているように見える。私は目を逸らせて、小首をかしげた。何か用でもあるのかな。
休み時間にやって来た加江ちゃんもそれに気づいたらしい。
「ねえ、莉子。あの男の子、ずっと莉子を見てるみたいなんだけど、莉子に気があるのかな」
「まさか」
「でも、ずっと見てるよ」
「あ、そう言えば……」
私は制服の上着のポケットを外から押さえてみた。ある。昨日中山君から渡された封筒。
「何?どうしたん?」
私はポケットから未開封の封筒を取り出した。
「何?それ」
「昨日もらったんだけど、忘れてた」
「男の子から?もしかしてラブレターとちゃうの?」
「え?まさか……」
その時いきなり名前を呼ばれてびくっとした。
「一ノ瀬」
顔を上げると目の前に中山君が立っていた。
「返事を聞かせて欲しいんやけど……」
「え?」
「ぎやー、莉子!やっぱりラブレターじゃん!」
そう言いながら加江ちゃんが私の背中をばしばしと叩く。中山君はそんな私たちを見て困った顔をして、
「昼休み、体育館の前で待ってる」
そう言って自分の席へ戻って行った。
「あ、私も次の授業が始まるから戻るね。莉子、がんば!」
そう言い残して加江ちゃんも自分の教室へ戻って行った。
それからお昼休みまでの午前中の授業を私はほとんど聞いていなかった。机に隠れてこっそり封筒を開くと中には1枚だけ便箋が入っていた。書かれていた内容は短くて、すぐに全部読んだ。
『一ノ瀬莉子様
俺、一ノ瀬さんのことがすごく気になります。
たぶんこれは「好き」っていう気持ちなんだと思います。
まだ君のこと何も知らないのになんでだろうって思います。
だから俺と付き合ってくれませんか?君のことがもっと知りたいのです。
そして俺のことも知って欲しい。
もし君も俺のことを好きになってくれたら最高です!
返事は直接聞きに伺いますので、その節はよろしくお願いします。
中山翔太 』
終わりの方はラブレターと言うよりもビジネスレターの決まり文句みたいで、くすっと笑ってしまった。
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