第7話 ササっち(後編)
私(土屋)は、ササっちといっしょに教室でお弁当を広げていた。おお、アスパラベーコン!これ大好き!
「妙とエノっちってつきあってるの?」
「げほっ!」
ベーコンから飛び出たアスパラを齧って飲み込もうとしたところで、むせた。あわててペットボトルのお茶を飲む。
「エノっちって?」
「江ノ本。江ノ本瑞希」
「江ノ本とササっちって知り合いだっけ?」
「剣道部でいっしょ」
ああ、そうだったか。
「つきあってるって言うか、中学のときからの友達だよ」
「ふーん」
2人ともしばらく黙って箸を動かす。うずら卵のから揚げ。これ好きなんだよね。お母さん、感謝!
「エノっち、いつも剣道部の稽古終わってからテニス部の部室覗いてはため息ついてるんだよね」
「げほっ!」
喉を通過しようとしていたうずら卵にむせた。あわててペットボトルのお茶で流し込む。
「『妙、待っててくれてもいいのに』って呟いてた」
「それ、ほんと?」
「クラスも別々だし、お弁当もいっしょに食べられないから寂しいみたいだよ。『これじゃ同じ高校に通ってる意味ねえー』って言ってたし」
そう言いながらササっちは「ぷっ!」って吹き出し、さらに続ける。
「この前なんか『もっといちゃいちゃしてー!!!』って叫んでたよ」
うわ、やばい。だんだん顔が火照ってくるのが分かる。
「今日はいっしょに帰ってあげたら?」
「……うん」
もう今更誤魔化しても意味なさそうなので、素直に認めることにした。
「剣道部の終わる時間分からんし、道場行ったら目立って瑞希に迷惑かけたら悪いなって思ってたんやけど」
「一年は稽古の後の清掃があるから遅くなるけど、完全下校の時間までには絶対帰るって。校門前の校舎の出入り口あたりで待ってたら?あそこなら外灯あって明るいし、みんな絶対前通るし」
「うん、分かった」
ササっちは満足げに頷いて、
「じゃ、エノっちに伝えとくね」
「うん……」
2人のことバレちゃったけど、まあ、ササっちならいいか。言いふらすような子じゃないし。ササっちって女同士のこういうの、どう思っているのかな。聞いてみたいけどやっぱり怖い。まあ、私たちって付き合ってるって言っても友達と大差ないもんね。
放課後の剣道場。
「エノっち。妙が今日いっしょに帰ろうって言ってたよ。校門前の校舎の出入口で待ってるって」
「ええ?ササっちって妙の知り合いだっけ?」
「うん。同じクラスだよ。お昼ご飯もいっしょに食べてるし」
ああ、そうだった。ササっちって妙と同じクラスなんだ。いっしょに帰れるのはうれしいけど…… 昨日の私の言ったこと、もしかして全部、妙に筒抜けだったりして。
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