第6話 おじさんデート大作戦


「おまたせ~、まったかな?」


1人の女の子が現れる。

透明感のある幼い声が晴れ渡る空の下に響く。

ここはゴロゴロクエストの公園エリア。目に眩しい澄み切った青い空。太陽の光が木々から木漏れ日が燦々と照っている。


「えへへ、今日はデートなんだね。」

と少し顔を紅潮させる女の子。


「おぉ・・・」

髭面のおじうさぎは息をのむ。


空から注ぐ日の光はまるで、1人の女性を照らすために存在していた。


「健康的な肌が日の光を照り返して、眩しい。」

「純白のワンピースだとぉ・・・!」

「白く垂れた長いケモ耳、白く丸っこいケモ尻尾。」

「ケモだ!ケモが来たぞ!!」

「お目々はすみれの花の様に青みある濃い紫。」

「髪は肩まで伸びたくせっ毛で、明るい青紫。」


「あぁ。だが、しかし。ミロおじだ・・・!!」

「何故だ、ミロちゃん。あなたなんでおじなのか・・?」

「ミロちゃんはおじな訳ない。こんなに美少女なんだぞ。」

「そうだぞ、美少女なんだぞ!」


目を大きく開き、充血させながらマジマジと眺めるおじさんラビット。

手汗を腹巻きで拭う。


「え?どうしたの、みんな?おーい?大丈夫?」

あまりの衝撃に自分の世界に閉じ籠もる髭面ラビットたちに声をかける新増。


「ハッ!?」

「あまりのことに時間が止まっていたかのようだ・・!!」

自我を取り戻すピョンピョコおじさんズ。


「えっ。」

意識を取り戻すとさっきよりも近くに居る新増。


「おーい、どーしたのー?みんなー。」

どアップで下から上目でのぞき込んでくる。


「ちかっ!!」

「グハァ!!」

バタリと倒れ込むミロップ。


「おい、アイツ倒れたぞ!」

倒れたミロップに駆け寄り。

「衛生兵、衛生兵はいないか!!」

「敵の戦力は強大です!」


顔に傷がある倒れたミロップが手を空に伸ばし、

「お、俺の屍をこえて・・・・ゆけ・・・」

「バカ、死ぬなぁ!!ラビ太郎!!」

目に涙を溜めながら、名前を叫ぶ眼鏡ミロップ。

眼鏡が涙で曇っているようだ。


「おー・・い?みんな、大丈夫?」

恐る恐る声をかける新増。


重い空気が立ちこめている。が、1人が顔をあげると

「いや、みんなお疲れ。」

「みんな息があったな。」

「練習の成果があったな!練習なんて知らんけど。」

「しらんのかい!」

「ハッハッハッ、楽しかったな。」

「はいはい、撤収撤収。」

自己満足な酔っ払いの様な面倒くさいよっぱっぱラビットはそそくさと帰ろうとし始める。


帰り始めようとするミロップを慌てて呼び止める新増。

「みんな、まって!まってって!!これからだよ!!」


はて?と振り返るミロップ達。

「えっ?あぁ、そうだっけ。」

「えぇ?これから二次会の予定だったのに」


目を大きく開き、慌てた様子で手を開き、髭面なウサギに訴える。

「終わらせないでぇ!お願い、お願いだから!!それと二次会呼ばれてないんだけどぉ!」


すると、

「おい、言うなって。」

「しゃーない、早めに二次会終わらせて。こっそりとな。」


今にも泣き出しそうになる新増。

「ねぇ!?なんか、ハブられてない?大丈夫、新増?ちゃんとみんなの推しになれてる?」


皆で顔を見合わせると素っ気なく。

「なってる。なってる。」

「うんうん。そうだね。」

「おぉ、それ。面倒くさい女の特徴つかめてるよ。ミロおじ!」

「はいはい。」


さすがに限度を超えた新増はついに大声をあげて、涙する事になった。

「ああああああああああああああああああああああああああ」


「草」

「あぁ、この声を聞きに来たまである。」

「ごめんね、ミロおじ。でも、ついね。」

「いや、ほら。好きな子にはちょっかいって奴。あれだよ。あれ。」

「うん。推しが居ない方が話しやすい話もあるさね。」

「そう、それな。」


涙していた新増は俯き。みんなの声を聞き入る。

「ふん。そうなんだ!みんな、二次会があるんでしょ!どうぞ。そっち行けば良いじゃない。」

ふと、顔を上げた新増の顔は目の光りが無くなり、虚ろになっていた。

白いワンピースに血糊でもつけば、B級ゾンビ映画のワーンシーンを飾れそうだ。動きまでぎこちない。


「え、いや。あの。ミロおじ?」

「あっ」


空気がヒンヤリとした事を敏感に感じ取る髭面うさぎ。

目を急にクリリンとさせて可愛い子ぶる準備を済ませる。


「さぁ、ミロおじ。今日は何をするのかな!楽しみだな!」

「ミロおじは今日も可愛いな!よっ、日本一!」

「バカ、世界一だろ。いや、宇宙一だな!」

「いやそこは、銀河一だろ!」

「そうだな、がはははは。」


チラッと新増をみるクリクリお目々なおじうさぎ。


「・・・・」

まだ、焦点の合わぬ、どこか虚空を眺めるようなその目は未だ心を取り戻せてない証左である。


「今日のデート楽しみにしてたんだよなぁ」

「そうそう!みんなでどうするってプランを考えてさ!」


すると、眼鏡インテリうさぎが呟く。

「えっ、そうなの?」


「おい、黙れ。」

「いや、まだ残暑が厳しいから。夏らしいことしたいねってさ!!」

「そうなんだよな!ほら、あれだよ。あれ!お化け屋敷とかさ」


すると、眼鏡インテリウサギがボソッと呟く。

「今が十分、ホラーだけどな・・」


すかさず、

「おい!」

と、サングラス兎が一声かけると、黒服ラビットが眼鏡インテリウサギを取り囲み、口を塞いで退場する。


サングラス兎が、サングラスを外すと、クリリンお目々をキュルキュルさせて、

「ミロちゃん!どうかな!お化け屋敷なんて。みんなで一生懸命考えたんだ!!」


クスと笑う声が聞こえた。

「ぷはははは、もう。何それ。無茶苦茶なんだけど。」


ひとしおに笑った後、

「うん、そうだね!お化け屋敷に行こっか!」

と、新増の顔にどうやら生気が戻った様だ。


◆◆◆


「きゃはは、何あれ。ウケるんだけどぉ。」

「一時はどうなる事かと思いました。」

「ね、まぁでも。一応、あらすじの中には戻ってきたし、打ち合わせ通りにね。」

「はい、頑張りますよ!」

利き手を胸当たりでギュッと握るポチ君。片手ではミロのミーちゃんをあやしている。

ミーちゃんは仰向けになっており、撫でようとするポチ君の手を両手両足で拒もうとしている。


「まぁ、ミロップさんのお願いだし?面白そうだし?」

「えぇ。服の感想会の時に。ミロップさんから相談があって、ミロさんをドッキリを仕掛けたいって。」


唇に指で撫でる萌生。

「うん、その話を聞いた時、来たよね。ビビビって。」


「本当に大丈夫でしょうか・・・?」

「大丈夫、大丈夫、メイを信じてぇ?ね?」



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