第4話 謎の銀髪美少女とウサギとおじさん
か細い人差し指が不敵に笑う唇をなぞる。
新増に覆い被さる銀髪の碧眼美少女、萌生。
「えっとぉ、ミロップちゃん?ここ、特等席。良い子にしてるんだよぉ?」
寝そべる新増に抱かれる形で置かれるミロップ(AI)。
ミロップ(AI)は後ろに感じる大きく柔らかな感触を感じながら、前方に迫り来る銀髪の美少女をマジマジと観察する。
「ピンク色のジャージ、白色のスカート。スカートからはピッチリとした黒色の短パンがのぞかせる。」
と、早口で詠唱する髭面ラビット。
「おっ、おふ。俺死ぬの?」
と幸せ過多なこの状況に死期を予感する始末。
「クスクス。可愛い。じゃっ、始めよっかぁ。」
銀髪碧眼美少女、萌生は新増の顔に手を添える。
「ん・・?この声、しゃべり方は・・・?」
「なぁに、おじさん?何か気になるの?」
すーっと顔を近づけて
「ねぇ?もっとぉ、よく見せてよぉ?」
新増は目の見る先を左上から右上動かしつつ
「へっ?へっ!?なにこれ・・?なにこれぇえ!!?」
と顔を赤面させる。
「そんな顔するんだぁ。ふ~ん?いいじゃん・・?」
口元へ指を当て、滾る感情からか、顔を赤らめる萌生。
「あ、あれ?ミロップちゃん?もぉ、イッちゃうの?やぁーだぁ。」
萌生がより近くなる事により、もうサンドイッチ状態になるミロップ(AI)は
意識が遠くなり、魂が抜けた様に目に力が無い。もったいない。
「もぉ、これからなのにぃ。ちゃんとみて欲しかったなぁ。」
頬膨らませる銀髪少女。ガシガシと前後に揺らされるミロップ(AI)はなんだか誇らしげだ。彼らの人生に悔いは残らなかったのだろう。合掌。
すると、新増が疑問を口にする。
「萌生って、あの萌生さん・・?」
ハッとした顔で
「おぉ、覚えてたぁ。おじさん。うん。そっかぁ。ふ~ん。」
急に照れだした萌生は何度も状況を噛みしめるように言葉を繰り返した。
「サービスだよぉ。お、じ、さ、ん。」
萌生の両手が新増の顔に添えられる。
「ふぁ!?」
萌生の両目が閉じて、新増の元に刻々と近づく。
唇と唇が触れあう瞬間に
「こんばんわ、、へっ!?し、失礼しました~!!」
意図しない状況に赤面したケモ耳メイドの男の娘は部屋から飛び出る。
「ふぇ!?ポチ君!!?あ、時間か。違うのぉ!これは違うのぉ!!!」
と、部屋の扉に手を伸ばしながら弁明をする新増。
そう、バーチャルだから問題ないよね。ね?
「おじさぁーん、やぁだぁ。ねぇ、こっち見て。ねぇ?」
と、続きを迫る萌生。
「う、ごめんなさい。お邪魔してしまいました。」
うぐうぐと鳴くワンワンこと、ポチ・アンダンソン君。そこはワンワン泣いとけば良いのではと。
「大丈夫だよ。何の邪魔なんてしてないから。何も起きてないからぁ!!」
と、必死の弁明を続ける新増。
「ひどぉい。さっきまでの熱いお誘いは全部嘘だったのぉ?」
目を指で拭う様な振りをしながら物悲しげな声の萌生。
「誤解を招くような言い方しないで!ね!?お願い!!」
あともう少しで土下座への予備動作へ移る前に。
「うーそぉ。だってぇ、面白いんだもん。おじさん。」
とキャハハと笑い出す萌生。
「へ???へ????」
頭にはてなを浮かべたポチ君。
萌生の笑い声に気を失っていたミロップ(AI)が起き始め、
「くそぉ。一生に一度のチャンスを棒に振ってしまった・・」
と、もう二度と戻らないあの幸福を惜しむのであった。
そんな中、新増は今日のASMR配信の目的を思い返す。
「ふう、でもまぁよかった。これで「おじさん」は払拭できたかな。あんなに楽しんでたしね、みんな。」
少なくともおじさんにあんな赤面はしないだろうと。
これで、皆の中にあるおじさんを払拭できたのだろうと、新増は確かな手応えを感じてた。
「えっ?メイにとって、おじさんはおじさんだよぉ?」
「えっ?」
新増は素っ頓狂な声をあげる。
「えっ?じゃないよ。おじさん?」
「お願い、おじさんはやめて。」
「そ、そうですよ。おじさ・・・じゃなかった。ミロさんは美少女です。おじさんじゃありませんよ!」
ポチ君の言葉に食い込むような形で萌生は否定する。
「やだぁ。メイにとって、おじさんはおじさんだもぉーん。」
銀色のツインテールを揺らし、顔を背ける。
間髪入れずに追随するミロップ(AI)
「やだもん」
「だもぉーん。ね?ミロおじ」
「だってよ、ミロおじ」
「やっぱ、ミロおじはミロおじだろうよ。」
「あれはあれ、これはこれ。どんだけ楽しんでようとも。」
「違う。おじじゃない。新増ミロはおじじゃないんだよぉおおお」
おいおいと泣きながら、膝を付け、地面を拳でダンダンとたたく。
「ミロおじ、涙拭けよ。」
髭面の耳たれウサギはハンカチを手渡そうとする。
地面を叩いた手をイテテッと振りながら、ハンカチを受け取る新増。
「うっ、ありがとぉ。」
ミロップ(AI)の何気ない優しさ涙が出そうになる新増。
「笑ってるミロおじも良いが、泣いてるミロおじも捨てがたい」
「はぁー、たまらん。」
「何だよ、推しが泣いてるんだよ?慰めてよぉ!」
さっきまでの涙が引っ込んで、ハンカチをグギギギギと噛みしめる新増。
「草www」
「うんうん。大丈夫だよ。」
「諦めろ、ミロおじ。」
「おまえらの推しだろ。早く何とかしろよ。」
「大丈夫。ミロちゃん。ミロちゃんはおじじゃないよ!」
「あぁ、無情」
「南無」
「カオスwww」
「大丈夫ですよ。ミロちゃんは可愛いです。本当ですよ!!」
新増を身振り手振りを大きく焦りながら庇うポチ・アンダンソン。
「はぁーやっぱ、おじさんさいこぉーだわ。今後もよろちゃんだぁ。おじさん。」
大きく笑った後、指で涙を拭いながら満足げに笑う萌生。
「ああああああああああああああああああ」
新増の声にならない声はガヤの中へかき消されていくのであった。
◆◆◆
ここは暗闇の一室。
空中に浮かぶモニターを円卓から眺める一同。
バンッと円卓を叩き、立ち上がる音。
「何としてもおじさんを払拭しなきゃいけない。その為にはどうかみんなの力をお借りしたい。」
「そこまでしないで良いのにな。もぉ。」
はぁ~ため息をつく銀髪少女。
ここは暗闇の一室。ただ、円卓(ちゃぶ台)を置いて電気を消しただけとか言えないけど。
暗闇の中に集まるのはいわゆるポチくんと萌生、そしてリスナーの中のリスナー。いわゆる推しが生き甲斐というメンバーの皆様である。
そんな中、新増がASMR配信の後に、ポチ君を交えて今後の作戦会議をする流れだった。が、そこに色々起きて萌生も加わっている。
ふと、物音を感じる新増、ガサゴソという音がなる。
「あっ、これダメな奴。」
そう。新増は奴らが苦手なのだ。そう奴らだ。
虫みたいな形状をした彼奴等。何処にでも湧く「バグ」という存在が。
バグが急に目の前を横切る。何故、彼奴等は危険を犯してまで急接近してくるのか、理解しがたい。煽ってるのかと問い詰めたくなる。
「ぎゃあああ」
と走り回る時に円卓(ちゃぶ台)をひっくり返す始末。
すると、ヒソヒソと噂話を始めるミロップ。
「やっぱ、おじやん」
「おじだね」
「そうはならんやろ」
「なっとるやろがい」
「そういう所だよ、ミロおじ」
そんな所を横目に
「しょーがない、気が済むまで付き合うよ、おじさん。私達に任せなさい。」
胸に手を当てて「ふふーん」と、得意げである。
もう一方の手でポチ君も強制参加させられて、「えぇ、何の話ですかぁ?」と呟いている。
「名付けてぇ、「おめかしデート大作戦」だぁ!!」
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